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和書>ビジネス・教育>ビジネス・政治・経済>ビジネス読み物
江波戸 哲夫(えばと てつお) 1946年東京生まれ。69年東京大学卒業。三井銀行、学陽書房を経て、83年フリーに転ずる。主な著作に、『小説大蔵省』『団左遷』『辞めてよかった』などがある。
倒産やリストラ、単身赴任、そして忍び寄る「老い」……。重い荷物を、人それぞれに背負い、人みな、日々これ奮闘す。その普通の人々の「けなげなドラマ」を、心に沁みる軽妙なタッチで描き、プレジデント誌に二年間にわたり好評連載された『「心の肩こり」が治る話』。これを単行本として一冊にまとめたのが本書。書籍にまとめるに当たり大幅に加筆され、また話の内容によって章分けするなど、元編集者であった著者の全面的協力もあり、入念な編集作業を行い、結果的には連載時より、「読み応え」「しみじみ度」も、また一段とパワーアップした。ここに盛られた「ちょっと良い話」に触れて、あらためて己が人生を省みる人、また心慰められ、癒される人も多いのではないだろうか。
第1章 我に友あり、家族あり 一話――同期の親友がくれた「最後の贈り物」 二話――家を支えるのは、大黒柱だけではなかった 三話――妻が自分より成功した、さあ、どうします? (以下、略) 第2章 仕事師たちの誇り 一話――元異色官僚が、背水の陣で臨んだ年金基金改革 二話――技術者魂が生んだ世界一の偽札鑑別機 三話――部下を上手に「叱れる」上司になりたい (以下、略) 第3章 会社の中でも自分流 一話――ビートルズやプレスリーが取り持つ“縁”とは 二話――野草のなかに見つけた、演技・演出のない生き方 三話――引き受けた肖像画から、様々な人生が立ち上がる (以下、略) 第4章 幸せのモノサシ 一話――少年野球監督二〇年、「つぶらな瞳」に教えられたこと数知れず 二話――兜町で学んだ「等身大の人生」 三話――四四歳の恋を実らせた怒涛のような往復書簡 (以下、略) 第5章 自分再発見の日 一話――自分を売り込めないのは、気が弱いから、それともプライドのせい? 二話――自分の良心に恥じない初めての仕事 三話――あの“岡ちゃん”が協力してくれた創刊号 (以下、略)
はじめに 誰にとっても、人生はそう楽じゃない。仕事も、人間関係も、なかなか思うようにいきはしない。 やっとこさ切り抜けて、思わず溜息《ためいき》をつき、誰もわかっちゃくれないとか、ずいぶん疲れが溜まっているな、と愚痴《ぐち》をこぼすことも少なくない。 そんなときは…… 街を歩いていてショーウィンドウに映る顔が、自分のものじゃないように怖いのにびっくりしたり、テレビを見ていて評論家のコメントに(いい加減なことをいってんじゃないよ)と、ついつい悪態をついてしまう。 それでもたまには、そんな疲れを吹っ飛ばしてくれる素敵な話にも出合う。 そうすると、「人間って、まだまだ捨てたもんじゃないな」と嬉しくなったり、「ああ、おれにも、これに似たことがあった」などと心がなごみ、温かくなってくる。 愚痴も連鎖するが、心の熱も連鎖する。自分のうちに篭《こも》っていた気持ちが、外に向かって解き放たれていき、いっちょ、おれも熱を振りまいてやるかと、顔を上げ、胸を張っていたりもする。 二年間をかけて、四六人の方々に、そのような人生の断面を見せてもらった。 「私に、そんないい話があるかな?」 取材を申し入れると、たいていの人はこう謙遜《けんそん》したものだが、ゆっくりと人生を辿《たど》ってみると、誰もが一個や二個は、心に響く、いい話を持っていた。 本書は『プレジデント』誌の連載コラム(平成一〇年四月〜平成一二年三月)に、大幅に加筆し、再構成をしてまとめたものである。肩書きと年齢は連載当時のままで、ごく一部はプライバシーを考慮して仮名になっている。 連載時は『プレジデント』編集部の今井道子さんに取材などでバックアップしてもらい、出版に当たっては、私が編集者だった頃からの友人で書籍編集部の天野恵二郎氏にお世話になった。記してお礼の言葉に替えたい。 平成一二年 五月 江波戸哲夫 第1章 我に友あり、家族あり 一話――同期の親友がくれた「最後の贈り物」 大手都銀の江川弘志さん(四五歳)は、同期の石田和夫さんを長いこと親友だと思っていました。 今から二三年前、二人は都内の同じ支店に新入行員として配属され、二人とも東京郊外の独身寮に入りました。 江川さんは205号室、石田さんは305号室だったから、休みの日など二人とも窓から顔を出せば、上と下とで顔を見合わせながら会話ができました。 「今日、どないするねん?」 大阪出身の江川さんが聞くと、 「予定はない。東京見物でも行こうか」 長野出身の石田さんが答えます。 こうして二人はしばしば一緒に都内を歩き回りました。もちろん主だった所には行っていましたが、普通の東京見物のコースにない場所を丹念に探し歩いたのです。 酒もよく飲みました。二人とも日本酒で一升までなら翌日の仕事に影響が出ない酒豪でしたから、ずいぶんはしごをしました。新宿のゴールデン街、池袋の三国小路、たまには銀座の外れのバーなどにも行きました。 「本当のこというとな」ある日、したたか飲んだ江川さんがいいました。「銀行で、お前みたいに腹を割って飲める友達ができるとは、思っていなかった」 「そうか」石田さんが答えました。「おれもそう思ってた」 二人は両手を握りあい、しっかりと力を篭《こ》めました。江川さんは、石田さんのまだ学生っぽさの残っている顔を見ながら、思ったのです。 (こいつとは一生の親友やな) 二年後、二人に転勤の辞令が下り、それぞれ新しい職場に移っていきました。江川さんは関西の支店、石田さんは東京の別の支店でした。 都市銀行は世界中に支店を持ち、ほぼ二年ごとに転勤があります。だからそれ以後二人は転勤によって、あちこちを渡り歩きニアミスもしましたが、同じ職場になることは二度とありませんでした。 それでも連絡を取り合ってはよく会い、よく飲みました。もちろんお互いの結婚式にも出席して祝辞をいいましたし、夫婦連れの食事も年に一度はしていました。周囲も彼らは特別に気の合う間柄だと認めていました。 ところが、やがて二人の関係に暗雲が垂れ込めるようになったのです。 *この続きは製品版でお楽しみください。
【XMDF形式】
※注意 同一の書籍でもファイル形式が異なるものは別商品として取り扱っております。
紙書籍初版:2000年6月8日 デジタル初版:2004年2月12日
ジャンル:和書>ビジネス・教育>ビジネス・政治・経済>ビジネス読み物 著: 江波戸哲夫 発行: プレジデント社
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