マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクション文芸日本文学現代小説

インストール

インストール


発行: 河出書房新社
レーベル: 河出文庫
価格:350pt
形式:XMDF形式⇒詳細 
対応端末:パソコン ソニー“Reader”
みんなの評価 ★★☆☆☆1
◆レビューを書く

購入する


著者プロフィール

 綿矢 りさ(わたや りさ)
 1984〜
 京都府生まれ。2001年「インストール」で第38回文藝賞を受賞し、17歳でデビュー。04年『蹴りたい背中』で芥川賞を史上最年少で受賞。著書に『インストール』『蹴りたい背中』がある。

解説

 女子高生と小学生が風俗チャットでひともうけ。押入れのコンピューターから覗いたオトナの世界とは?! 田中康夫、山田詠美ら話題の作家を生んできた文藝賞から、ついに最年少17歳・女子高生作家が誕生。全選考委員絶賛・新聞、TV等各マスコミ話題沸騰の文藝賞受賞作。書き下ろし短篇「You can keep it.」併録。

目次

「インストール」
「You can keep it.」

抄録

「あの、僕気になってたんですけど、あなたどうしてあの日あんなに一気に沢山のゴミを捨ててたんですか? 引っ越しだと思ってたけど、今ここにいるってことは、そうじゃないですよね。」
 コンピューターの華麗なる変身を見てなんだか意気消沈した私は、その問いに押入れの壁にもたれながら答えた。
「心機一転のためよ、部屋にある物気晴しのために全部捨てて学校やめて部屋空っぽにして、それだけの事を発作的に済ませて、それで何が残るのかなあと思ってたけど、何も残らなかった。私を追い越してコンピューターの方が先に生まれ変わってるんだもん、うらやましいぞコノヤロウ。」
 私はそう言って機械の角を指ではじいた。機械はつんと澄まして冷たい微風を内部から出し続けていた。子供が驚いて聞く。
「学校やめたんですか? でもその服、制服ですよね。」
「あー違う、違うの、私まだやめてはいないの、登校拒否児なだけです。そんでこの制服は、あんたの押入れと同じよ、学校行ってないの親に秘密にしてるから登校してるって見せかけるために着てるのよ。カモフラージュ。あーあ、私もコンピューター買おうかなあ。電脳の世界に飛び込めば人生の目標やら生きがいやらを見つけられるかもしれないし。」
 情けない気持ちで画面を覗いていると、黙っていた子供が急にぽそりと言った。
「働くっていうのはどうですか? 僕と組んで、働く。」
 私は子供をけげんな顔をして見た。何を言ってるんだこの子は。すると子供は、はっとして、「嘘です。」と言った。私は意味が分からなくて眉を寄せた。
「嘘って、なにがよ。あんたと組んで働くって、それどういう意味?」
 「……僕、一つ仕事を知ってるんです。」子供は遠慮がちに言った。
「あなたみたいに平日の昼間が自由な人と、学校が早く終わる僕みたいな小学生とでできる仕事。その仕事で働くことを生きがいにしてみたら、どうかなって思って。」
 私はあっけにとられて、私に仕事を紹介してくれようとしている小学生の職安員をまじまじと見つめた。どう見ても小学生の青木くんは、緊張しているのか伏し目になっている。その生真面目な様子を見ていたら私は不意におかしさがこみ上げ、
 「あんた、私のこともインストールしてくれるつもりなの?」とふざけて言って自分で笑った。子供は、そんな大げさなものじゃないけどと言ってため息をついた。
「おもしろいね、話聞かせてよ。それってどんな仕事なの?」
 子供はうなずき、押入れから離れた。


「今から紹介する職は、仕事っていうより、コンピューターを使ったアルバイトと言う方が正しいのかもしれません。一時間働いて一五〇〇円の収入がある、バイトです。」
 子供はテーブルの向かいに座ってから言った。既にリビングの席についていた私は驚いて子供を問いただした。
「一五〇〇円!? それ絶対間違ってるよ、今アルバイトの給料なんてマクドナルドで立ちっぱなしで働いても七〇〇円しかもらえないんだよ? なのにコンピューターをいじるだけでそんな額をもらえるなんてそんなイイ話ってあるもんか。」
 子供は私の言葉を聞いて、かなり迷った後、こちらをうかがうようにして言った。
「……でも、テレホンレディの人とかは電話で喋ってるだけなのに時給三〇〇〇円くらいもらえてますよね。」

*この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

この本を読んだ人は、こんな本も読んでいます

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアは【ここ】から無料でダウンロードできます。
詳しくはXMDF形式の詳細説明をご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。