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誰かの記憶

誰かの記憶


発行: キリック
価格:700pt
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対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆10
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著者プロフィール

 梅津 裕一(うめつ ゆういち)
 『妄想代理人』(原作/今敏)『闇魔術師ネフィリス』『アザゼルの鎖』(すべて角川書店・刊)など、著書多数。ダークファンタジーな世界観で読者を魅了する。

解説

 その街は連続猟奇殺人の脅威にさらされていた。激しく損壊した遺体からはいずれも内臓の一部が持ち去られており、三人目の犠牲者が先頃出たばかりだった。そんななか、高校生の島本一輝は、おそろしい夢を見る。女性の下腹部を切り裂き、子宮をえぐり出す──それは、夢というにはあまりにも生々しい、まるで殺人鬼の目を通して実際に見たかのような光景だった。連続猟奇殺人の犯人は自分ではないか。無自覚に殺人を犯しているのではないか。そうした不安を一輝が抱きはじめた頃、街では奇怪な噂が流行りだす。他人の記憶が病気のように伝染し、それを夢で見るというのだ。例の悪夢は殺人鬼の記憶なのかもしれない。そう思ったときには、記憶の伝染現象は街じゅうに広がっていた。この常軌を逸した怪現象はなんなのか? そして、連続殺人犯の正体はいったい……?
 記憶の感染がもたらす絶望と破滅……自我喪失の恐怖をかつてないアプローチで書いた、作者渾身の極限サスペンスホラー!

目次

第一部
第二部
第三部
第四部
第五部
第六部
第七部
第八部

抄録

 ……血なまぐさい匂いがあたりに濃厚に漂っている。
 普通の神経の人間なら吐いてしまいそうな臭気だが、すでに自分はこの匂いにも慣れていた。
 なにしろこれで、三度目なのだ。
 人間は、常に学習する生き物である。一度した行為を二度、三度と続ければおのずと効率も上がっていく。
 むろん、殺人もその例にもれない。
 最初は、我ながら不始末だらけだったように思う。
 獲物の選定から、捕獲、殺害、そして「肝心なもの」を抜き取るまで、苦労の連続だった。
 見ると聞くとは大違い、というが、まったくそのとおりだ。
 人生初の殺人では、いまにしてみれば滑稽に思えるほど怯えていた。致命的な証拠を残さなかったのが我ながら不思議なくらいだ。
 しかし、いまはそんなことを考えている場合ではない。
 眼前の死体に、意識を集中しなければならなかった。
 年の頃は、二十歳《はたち》を過ぎたくらいだろう。生前はそれなりに美しかっただろう顔も、いまは苦痛と恐怖のために引き歪んでいた。
 懐中電灯の光に照らされた顔は、まるでホラー映画の犠牲者のようだ。
 財布の中身を確認したところ、そこそこ有名な大学に通う女子大生だった。だが、その派手な格好はキャバ嬢にしか見えなかった。実際、キャバクラでバイトしていたのかもしれない。最近は金に困り、夜はキャバ嬢をやる学生も珍しくないという。だとしたら苦学生か。多少は同情の念も湧こうというものである。しかし、こういう香水の趣味も悪い女は、ただの売女《ばいた》としか思えなかった。
 自分の最も嫌いなタイプの女だ。
 アウトレットモールでブランド物のバッグを買いあさり、そこそこ遊びながらも将来性のありそうな男をマークし、結婚を望んでいる。
 いつか王子様が迎えにきてくれると、本気で思っているアラフォー世代とやらにも吐き気はするが、こういう現実的な女も大嫌いだ。
 さらにいえば、女という生物自体に、嫌悪感を抱いている自分がいる。
 女は卑怯だ。よく、男女差別には反対だなどと訳知り顔で語る男がいるが、そういう奴らはその裏で女がぺろりと舌を出していることに気づいていないのだ。
 女は常に、女同士で戦っている。お互いに美を競い、あるいは若さを競い、見栄を張っては、裏で足を引っ張り合っている。
 なんと汚らわしい生き物なのだろう。
 自分が女を殺す動機は、やはり女という生き物に対する憎悪なのだろうか。
 だとしたら、「アレ」を取り出そうとするのはなぜなのか。
 理屈などどうでもいい。とにかく手早く作業をすませてしまうことにしよう、と思った。
 女の身につけているブラウスを、まず大型のナイフで切り裂いていく。ボタンをいちいち外すのは、面倒くさい。
 ブラウスは綺麗に裂けたが、同時に獲物の白い腹の皮膚も少し傷つけてしまった。
 腹の上には赤い線がついている。すでに血流は停止しているが、血管のなかにまだ血は残っているのだ。少しずつ、白い皮膚の上に血があふれていく。
 ほとんど正中線に近いこの線に沿って、もっと切り裂いてしまおうと決めた。
 さらに深く、腹にナイフを突き立てていく。もし相手が生きていれば大変な騒ぎになりそうだが、ありがたいことに死体は静かなものだ。ついでにいえば、心臓が止まっているので流血もさほど派手ではない。
 白い皮膚と、脂肪層、そして腹膜を切り裂いていく。
 腹膜を満たす液体のなかから、桃色をした小腸の姿が見えた。
 まるで迷路のようになった、複雑な器官である。こんなけばけばしい女でも、死んだ直後の小腸は、意外と美しい色合いを保っているものだと、妙なところで感心した。
 手袋をはめたまま、慎重に小腸の奥に手を突っ込んでいく。
 すでに内部では、各種のバクテリアが死者の細胞を分解しはじめているはずだ。まだ死にたてほやほやとはいえ、臓器の腐敗はすぐに始まる。
 小腸は水分や栄養を摂取する器官である。胃でどろどろになった食物が、内部にみっしりと詰まっているのだ。
 うかつに傷をつけてしまうと、内容物があふれ出してしまう。はじめてのときは、それでひどい目にあった。
 小腸をさらに掻《か》き分けると、やがて目指すものにたどり着いた。
 女性を女性たらしめている深奥の器官。
 優しく子供を育《はぐく》む、人体で最も謎めいた機能を持つ命のゆりかご。
 子宮を見て、自分の顔がほころぶのがわかった。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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