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和書>小説・ノンフィクション>SF・ファンタジー小説>日本SF小説
眉村 卓(まゆむら たく) 1934年、大阪生まれ。大阪大学経済学部卒。サラリーマン生活のかたわら同人誌「宇宙塵」に参加し、61年「下級アイデアマン」でデビュー。63年には「燃える傾斜」を発表し、日本で二番めの長編SF作家となった。以後、「幻影の構成」「EXPO'87」といった長編と共に、ショートショート、「ねらわれた学園」などの学園SFも多数執筆している。「消滅の光輪」で第七回泉鏡花文学賞を受賞。
常に頭をおさえつけられ、欲求不満だらけのサラリーマン生活。一度ならず“脱サラ”を夢みるのはサラリーマン共通の心理だ。 だが、ここに生まれた奇妙な企画。 それは、脱サラに成功した元の会社の仲間同士が寄り集まって、サラリーマン時代そのままの慰安旅行をしようというのだ……。お決まりのドンチャン騒ぎに野球ケン。だが、その果てに彼らの見た“地獄”とは……? SFの鬼才、眉村卓が、現代人の心理を鋭くえぐる“特選奇妙小説集”。表題作他7編収録。
ワルのり旅行 主任地獄 長い三日間 屋上の夫婦 われら恍惚組合 トドワラの女 トロキン 青い道化
ほとんど毎日のように、彼は大内一枝のまぼろしと出会った。電車の中や残業のときや……外出先ででも、ところ構わず出現するのだった。それでいて、会社にいるときの本物の大内一枝は、ますます快活で、異様なほどはしゃぎまわるのである。 その大内一枝が、旅行のために年休をとったとき、彼女の席に、彼女のまぼろしがあらわれた。彼女が休んでいる四日間、彼女のまぼろしは押し黙って、無気味な目つきで彼をにらみつづけていた。 事ここに到って、朝田は方針を変更するほかなかった。大内一枝をおだてあげ、機嫌をとって仕事をして貰(もら)うのである。今迄(まで)一生懸命に励んで来た岸久美子には悪いが、そうしないと、彼自身がノイローゼになってしまいそうだったのだ。 あたらしい行きかたに対して、岸久美子は、しかし、不満をおもてに出さず、与えられた仕事に精を出した。大内一枝も前よりは少しは熱心になり、それとともにあの一時的な躁状態はすっかり影をひそめた。 まぼろしは出なくなった。 これでよし。 安心した朝田は、会社の帰途、久しぶりになじみのおでん屋に寄った。大内一枝のまぼろしを退治したおのれに祝杯をあげるつもりだったのである。 しばらく飲まなかった酒は、よくまわった。彼はいい機嫌になって、ちびちびと盃を重ねて行った。 「どうしてですの?」 気がつくと、横に女がいて、彼に話しかけていた。「ね、どうしてわたしを、今までのように扱ってくれないんです? わたし、まじめに仕事をして来ましたのに……」 彼はそちらを見、悲鳴をあげた。悲しそうな表情をした岸久美子の姿は、ちらちらとまたたいて、消えて行った。 (「主任地獄」より)
【XMDF形式】
※注意 同一の書籍でもファイル形式が異なるものは別商品として取り扱っております。
紙書籍初版:1985年8月10日 デジタル初版:1996年8月19日
ジャンル:和書>小説・ノンフィクション>SF・ファンタジー小説>日本SF小説 著: 眉村卓 発行: 角川書店
和書>小説・ノンフィクション>SF・ファンタジー小説>日本SF小説 |
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