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王子の嫁入り

王子の嫁入り

著: 桜井哉々子
発行: キリック
レーベル: シフォンノベルズ
価格:893円(税込)
10ポイント還元
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★☆☆☆10
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解説

「クラエスよ。そなた、国のために嫁にゆけ」
 四方を囲む大国に代々王女を嫁がせることで平和を守ってきたビンボー弱小国ブローディア。その第二王子クラエスは、母譲りの美しい容姿を王に見込まれ、強国ギリアの王子カインとの結婚を目前にかけおちした姉のふりをして、そのとき限りの花嫁となった。初夜の閨で真実を打ち明け、何がなんでも許してもらおうとしていたクラエスだが、あろうことかカインに気に入られ本当に妃となってしまう。しかし、民から慕われ、男も見惚れる美男子で聡明なカインの妻も悪くないかも? そんなふうに思いはじめた頃、事情を知らないカインの親兄弟に会いにいくことになり……。

抄録

「クラエスよ。そなた、国のために嫁にゆけ」
「は?」
思わず聞き返したぼくに、父上はもったいぶった咳払いを聞かせて、もう一度、まったく同じセリフを繰り返した。
「クラエスよ。そなた、国のために嫁にゆけ」
どうもぼくの聞き違いや父上の言い間違いではないらしい。けれど、意味が分からない。父上はなにを血迷われたんだ?
「父上。残念ながらわたしは男です。生まれたときから男で、ここまでの人生の途中で気難し屋の魔法使いをからかった報復として女に変えられたという事実もありません。今も男です。ですので、嫁にはいけません」
「そのようなことは分かっておる。だが、背に腹は代えられん」
「……?どういうことですか?」
「エヴェリーナが逃げた」
「は?」
ぼくは目をまたたいた。
父上は椅子から立ち上がらんばかりの勢いで言った。
「逃げたのだ!わたしと妃が若い時分よりあんなに苦労して作った四人の娘のうちの一人が、ギリアへの輿入れを目前にして近衛の騎士の一人と駆け落ちをしたのだ!!」
「――」
「事情が分かったか」
「はあ……。つまり、四方を大国に囲まれた我がブローディアは、王女を四カ国の王族にそれぞれ嫁がせることで長年四カ国と友好関係を保ってなんとか生き延びている状況だというのに、父上の四人の娘のうちの一人であるエヴェリーナ姉上が政略結婚を嫌って好いた男と駆け落ちをしたと、そうおっしゃるのですか?」
「そのとおりだ」
ぼくと父上は改めて顔を見合わせた。
「ともかく、今言ったことは事実なのだ。すなわち、ことは深刻だ。アンスリウム、バーゼリア、ブルビネラの三カ国には、わたしの代でも無事に娘を嫁にやることができた。残りはギリアだ、と思って、こたびの輿入れの約束を取り付けたというのに、三日後のギリアからの迎えを前にして、エヴェリーナは逃げた」
「これは確かに困りましたね……」
「しかし、我が国としてはここで『花嫁はそちらの王子との結婚を嫌って逃げました』と言える立場ではない。ゆえに、なにがなんでも、婚礼までは行わねばならん。先方とてそのつもりで婚礼の準備をしてしまっておるのだからな。ということで、そなた、エヴェリーナの代わりにギリアへゆけ」
「ですからわたしは男だと言っています。逆立ちしても姉上の代わりにはなれません」
「いや、なにも本当に先方の王子の妃になる必要はないのだ。ともかく輿入れまでを乗り切ればよい」
「どういうことです?」
「まあ聞け。わたしの息子三人のうち、すでに長男のヴェルネリは結婚しているし歳もゆきすぎているから候補にはならん。となると次男のそなたか、末っ子のサウル……、二人のうちで小柄で華奢で、妃によく似た中性的で美しい容姿の持ち主は、どう見てもそなただ。そもそもサウルは残念なくらいわたしにそっくりだからな」
「はあ」
「というわけで、そなたならば、婚礼衣装に身を包んでヴェールの下でうつむいておれば、ひとまず婚儀は乗り切れる。初夜の閨に入るまではこちらからの侍女や供がそなたの世話をするし、男と知られることはあるまい。形ばかりの見合いのときも、適当に描いた肖像画を交換しただけだから、エヴェリーナの顔を知る者も先方にはおらぬしな。よって、ともかくそれで婚儀までをやり過ごし、初夜の閨で、そなたは花婿たるカイン王子にこのたびの事情を説明するのだ」

*この続きは製品版でお楽しみください。

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