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日本終了 上

日本終了 上


発行: キリック
シリーズ: 日本終了
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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解説

 その地獄は、突然の大停電から始まった──。
 東京郊外のM町で、父、兄、姉の三人と暮らす中学二年の東堂夏生は、その夜、起きた停電がすぐに普通のそれではないことに気づく。電源の入らない携帯電話、電池を替えてもつかない懐中電灯、作動しない災害用の手回し充電ラジオ。電力供給がストップしたというよりも、電化製品がすべて〈使用不能〉になったかのようだった。やがて〈電子制御〉で水を汲み上げている水道も使えなくなるが、人並みはずれた知性を持つ大学生の兄・冬則は、この異常事態は太陽フレアの電磁嵐によるもので、電気も水も二、三日で復旧するだろうと説明する。のちに、それは先の展開を読んだ兄の嘘だとわかるのだが。明くる朝、水道、都市ガス、電話、自動車、公共交通機関……あらゆるライフラインが突然停止した状況に戸惑う町の人々。父をはじめ、昨日仕事で都心に出ていた者も帰ってこない。事態の深刻さを正確に把握している兄だけが、先手を打っていろいろと行動していた。そんななか、夏生は兄の指示で自身が通う中学校へ情報収集に出かける。さまざまな憶測や流言が飛び交っていたが、ほとんどの者がやはりライフラインは二、三日で復旧すると考えていた。ところがただ一人、兄と同じくこの事態を正確に見抜いた生徒がみんなの前で告げる。この状況は少なくとも数ヶ月は続き、自衛隊などの救援も期待できないだろうと。そして、その予想が現実だと気づく頃にはもう、夏生は〈人殺し〉として地獄の入口に立っていた……。

 現代日本で起こりうる最大級のクライシス! 生き残るために人を殺す──リアル・サバイバル・ホラー、上巻!

目次

 第一部
 第二部
 第三部
 第四部
 第五部

抄録

 慎重に覗き穴から外を見ると、若い、真面目そうな男が緊張した顔で立っていた。
 見覚えのある顔だ。そういえば、近くのアパートに住んでいた大学生が、こんな顔をしていたはずだ。
 「俺は、M町自警団三班の内藤です。夜分すみません、実は、お兄さんが大怪我をされて……」
 それを聞いた瞬間、意識が凍りついた。姉が、悲鳴じみた声を放った。
 「かなりひどい怪我で……ひょっとすると、まずいかもしれません。それで、公民館まできてくれって伝令を頼まれました。二人とも、急いでください」
 どういうことなのか。まさか兄が大怪我を負うとは、これまで考えたこともなかった。
 足もとが急に沼地にでもなったような気がする。腰が抜けるとはこういうことをいうらしい。しっかりしろ、と頭のなかでもう一人の自分が叫んだが、それでも足に力が入らない。
 「夏生……! 兄貴が! 兄貴が!」
 ふだんはしっかり者の姉さえもが、狼狽《ろうばい》していた。
 姉もやはり、兄の存在を頼りにしていたのだ。とにかく急がなければ。
 あわてて鍵を開け、チェーンロックを外した。
 その瞬間、内藤の顔がおかしな具合に歪むと、後ろからなにかを取り出した。
 金属バットだ。
 頭のなかが真っ白になった。
 内藤が扉を開けて、家のなかにバットを持ったまま入り込んでくる。なにが起きているのか。脳がいまの事態にまったく追いついてくれない。
 すさまじい勢いで振り下ろされる金属バット。無意識だった。夏生のなかの生存本能が勝手に反応し、体を横に動かす。
 床にバットが打ちつけられる鈍い打撃音が鳴った。
 「な……なんで……」
 「騙されたんだよ!」
 姉が悲鳴じみた声をあげた。
 「こいつ……こいつ、嘘を言って、扉を開けさせたんだ!」
 「だったらどうした」
 内藤の顔が、醜く歪められた。
 「いいか。大声出したら、マジでお前ら、殺すぞ」
 どう聞いても、ただの脅しとは思えなかった。内藤の殺意は、本物だ。
 「なに……水? それとも食料が……」
 姉の言葉を聞いて、内藤が笑った。
 「そんなもん、いらねえよ。もう、どうせ終わりだ。三日も経ったのに、自衛隊の救援も、なんにもねえ。火事が起きているのに消防車も動いてないし、車も使えない。理由は知らないけど……とにかく、もう俺たちは終わりなんだよ」
 完全に、内藤は悪い意味で開き直ったようだった。
 「そのホイッスルも捨てろ。自警団、呼ばれたらかなわないからな……ったく、あんなモン、こんなときにやってられるか!」
 考えてみれば、高校生以上の男はみな、基本的に自警団に入っているはずなのだ。
 「前から……やってみたかったんだよ。東堂家のお高くとまった天才少女とな」
 なにを「やってみたかった」のかは、中学生の夏生でも容易に想像できる。
 たぶん内藤は、緊張と恐怖、そして絶望で、脳の理性が弾け飛んでしまったのだろう。
 「下手に抵抗したら……こっちのガキ、殺すぞ? 情けねえな。腰、抜かしやがって」
 自分でも信じられないほどの勢いで、夏生の体全体が揺れはじめていた。恐怖で体が震えるのを知識としては知っていたが、まさかこんなふうに、ちょっとした地震のように体が勝手に揺れ動くとは思わなかった。
 しばし姉は逡巡していたが、やがて覚悟を決めたように言った。
 「わかった……わかったから! わかったから! だから、絶対に夏生には手を出さないで。約束して」
 「ものわかりのいい女って、俺は好きだぜ」
 内藤の顔が、だらしなくにやけた。
 「なあ、あんた、処女だろ? なんとなく雰囲気でわかるんだよ。大丈夫、これでも処女の扱いには慣れてるから……」
 そう言うと、内藤の手が秋穂のほうに近づいていった。
 「ね、姉ちゃ……」
 「黙って」
 秋穂は、いつになく厳しい声で言った。
 「大丈夫。こんなの……犬に、噛まれるみたいなもんだから。私は平気だから」
 平気なわけがない。
 女性にとって、強姦されるのがどれほどおそろしいことか。男の夏生には想像するしかないが、相当の嫌悪と恐怖を覚えるものに違いない。
 自分のせいだ、と思った。
 もし「自身だけの危険」だったら、姉は内藤にむかって反撃していただろう。だが、夏生がいるせいで、それができないのだ。
 そもそも、自分はあんな嘘を嘘とも見破れず、あっさり鍵を開けてしまった。しかも今度は目の前で姉が犯されようとしているのに、なにもできない。
 目の前が真っ赤になったような気がした。同時に全身の血流が速まり、ふいに体の震えが止まった。
 「うわ……ああああああああああああっ」
 突然、自分のなかでなにかの「スイッチが入った」。
 「やめろ! 姉ちゃんから離れろ!」
 そう叫ぶのと同時に、夏生はゴルフクラブを振り上げると、渾身の力を込めて相手の肩のあたりに振り下ろした。”

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