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ケータイ文学部 私の愛しの先生

ケータイ文学部 私の愛しの先生


発行: マリクロ
レーベル: ケータイ文学部
価格:200pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 中島 ゆうあ(なかしま ゆうあ)
 大阪在住の広島県人。人生の半分を関西で過ごしてきたので、関西ナイズされてきた(と自分では思う)けれど、絶対に、お好み焼きと細かなイントネーションの違いは関西には染まってやんないぞ、と思っている。趣味は、本を読むこと。こだわりなく、その時々で惹かれた作品を読み漁っている。色んな世界に触れて、あまたの妄想を楽しみたいから。書く作品も雑食系で、色んなものに手を出しちゃう。一つの色には染まりたくないし、何にも縛られない自由人でありたい。著書に優 空名義で『君に言えない(ことば)』『ひらひら きえる』『高飛車、カノジョ。』

解説

 希愛《のあ》が好きになったのは、7つ年上の数学教師、祐嗣《ゆうき》。数学得意だし分からないとこなんてないけど、放課後は、先生がいる数学研究室に入り浸る。だって、学校でしか会えないから。「青春ごっこ」だって親友のうららには言われたけれど、もう気持ちは止められない。だけど、持ち上がりだと聞いていた授業の担当から祐嗣が外された。それって、やっぱり、わたしのせい? 先生に迷惑かけたくないのに……

抄録

 「誰かに言う?」
 希愛《のあ》は、ううん、と首を横に振った。
 ありがとう、と祐嗣《ゆうき》は呟いた。
 「で、高木は何してんの?」
 希愛の顔に小さな笑みが浮かんだ。
 「何かおもしろそうな事が起こる予感がしたのかも。目が覚めて、何となく外に出て来たんです。これ、誰かに告げ口する?」
 今度は、祐嗣が、ううん、と首を横に振った。
 希愛はにっこり微笑んで、感謝します、と言った。
 「どういたしまして。これで、共犯だな」
 クスリと二人で笑い合った。
 「さて、戻るか?」
 祐嗣が歩き出したので、希愛もその後に続いたけれど、しばらくして、希愛は祐嗣のTシャツの裾をグイと引っ張った。
 「ん、どうした?」
 振り向いた祐嗣の顔を見た途端、希愛はパッと掴んでいた手を離した。
 「なんでもないです」
 小さく呟いて、希愛は俯いてしまった。
 早く戻ったほうがいい、それは分かっている。
 「行こう。ひとりで残す訳にはいかないんだ」
 「はい……」
 教師としての言葉が、希愛の心に刺さる。
 それでも、希愛の足は動かなかった。
 「なぁ、高木――」
 「先生、わたしね」
 祐嗣の言葉を遮って、希愛はそう言うと、祐嗣をひたと見上げた。
 希愛の言葉を聞きながら、祐嗣は黙って希愛を見下ろす。
 「わたし……」
 夏休みが明ければ、受験と卒業に向かって突き進むだけの日々になる。
 クラスが違うから、数学の授業も受けられない。
 まさか、Cクラスまで成績を下げる訳にもいかない。
 もう、話す機会もないかもしれない。
 今、言わなきゃ!
 「ごめんなさい。クラス替わったの私のせいですよね? 先生に迷惑掛かるのも分からずに……ほっんと、ガキでやんなっちゃう」
 「違うんだ」
 祐嗣はとっさにそう言ってしまって、しまった、と思った。
 自分から交代を申し出た事をどううまく言い訳できるだろう?
 「あれは、高木のせいじゃない」
 そう言って――それだけしか言えなくて、希愛の肩をポンッと叩いた。
 当然のように、それでは納得できない顔をして、希愛は祐嗣を見上げていた。
 「本当に違うから、気にするな」
 祐嗣は何とか言葉を継いで、くるりと向きを変えると、また、歩き始めた。
 三歩進んで後ろを振り返ると、まだ立ち尽くしている希愛に、「戻ろう」と声を掛けた。
 釈然としないながらも、祐嗣がもうこの話題は終わりにしたいのだと悟り、希愛は頷いて、足を一歩前に出した。
 それを見て、祐嗣は安心したように前に向き直った。
 だけど、希愛はその一歩で歩みを止めて、祐嗣の背中を睨みつけるように見つめた。
 祐嗣は気付かずに、ひとり、前を進んでいく。
 少しずつ離れていく祐嗣を見て、希愛は涙が出そうになった。
 今、その手を引き寄せなければ、もう二度と近づけない気がした。
 一時の病気みたいなもんだって笑われてもいい。
 それでも、好きだって気持ちは本物だから。
 ザッと右足で地面を蹴って、希愛は祐嗣の背中に向かって、駆け出した。
 何でもいいから、勢いをつけなければ、何も言えない気がした。
 「好き」
 小さく叫ぶようにそう言って、希愛は祐嗣の背中に抱き付いた。
 自分の想いを注入するかのように、祐嗣の胸に回した腕に力を入れた。
 「好きです」
 「高木――」
 「なんにも言わないで!」
 希愛は素早く祐嗣の言葉を奪った。
 傷つけないように、と優しいことを言われたら、惨めになる気がした。
 「聞いてくれるだけで、いいんです。気持ちを伝えたかっただけだから。わたし、バカだけど、先生がこんなガキに興味ないのは分かってますから」
 祐嗣は何も言わず、希愛に抱き付かれたまま、立ち尽くした。
 屈してしまいそうだった。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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