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ある日突然『花嫁見習い』

ある日突然『花嫁見習い』

著: 朱西美佐 画: 渋矢しかご
発行: イースト・プレス
レーベル: B−cube
価格:525円(税込)
10ポイント還元
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★☆☆☆1
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解説

 なけなしのお金を持ち逃げされ路頭に迷う身となった真琴。藁にもすがる思いで、亡き母の残してくれたメモに従って、そこで示された家に向かう。そこに一人で住む清宮はルックスはいいものの無愛想な油絵画家だった。そっけない対応に退去しようとしたところで、苛立たしげに驚きの言葉をかける。
 「いいだろう。おれの嫁としてなら、この家に置いてやる。なにも今すぐにとは言わない。きみにも心の準備というものがあるだろうから、そうだな……、しばらくは『花嫁見習い』ということにしてやる」
 いま真琴の花嫁見習いという名の家政夫としての日々が始まった!

抄録

 「そこに立って」
 と、清宮は画架を前にした椅子に座ったまま、まだ秋の日差しが残っているアトリエの、中央の空間を指し示した。
 「……はい」
 よくわからないが、言われたとおりにその場に立つと、清宮は信じられないことを口にした。
 「着ているものを脱いで。下着も全部だ」
 「ええっ!」
 「早く」
 「そんな、どうしてっ?」
 うろたえて後ずさると、清宮は呆れたように言った。
 「何勘違いしてるんだ。襲ったりしない。デッサンのモデルをしてほしいだけだ」
 「モ、モデル?」
 「そうだ。見るだけだ。何もしない。モデル代も出す」
 「で、でも……」
 「男どうしだろうが」
 それはそうだが、銭湯の脱衣場で裸になるのとはわけが違う。
 なんといっても、清宮とふたりだけの部屋で自分だけが全裸になるなんて、どういう罰ゲームかと思ってしまう。
 「脱げないのか?」
 「だって、見られるのは恥ずかしいし」
 すると、真琴をじっと見つめて清宮は訊ねた。
 「きみは、役者志望なんだろう? 見られないことには意味がないぞ」
 「え……?」
 何を言い出したのかと、真琴が清宮の端整な顔を見返せば、清宮は淡々と続けた。
 「裸になるだけじゃなくて、きれいなものも、汚いものも、自分の生々しい内面を、観客に洗いざらい全部さらけ出す覚悟がなくて、役者なんてやれるものか」
 「……っ……」

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