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和書>小説・ノンフィクション>ノンフィクション>伝記・自伝
井本 農一(いもと のういち) 国文学者。元実践女子大学学長。国文学に関する著書多数。
十七文字で人生の深淵をのぞく――。遍歴漂泊の生涯を送り、俳諧を魂の感動の表現にまで高めた松尾芭蕉。本書は、著者の長年の蓄積のうえに、新たに発見された資料を駆使して、出生から死にいたるまでの「謎」を追い、その芸術のこころを明かした力作である。
まえがき 1 生い立ち 2 俳諧を学ぶ 3 新風うずまく江戸で 4 宗匠となる 5 転機に立つ 6 新しい出発 7 『おくのほそ道』の旅 8 不易流行の論 9 みのり 10 『おくのほそ道』なる 11 最後の年 芭蕉略年譜
東京を夜行列車で立つと、朝方、国鉄関西線の「伊賀上野」の駅に着く。汽車が駅を出ると間もなく、左手の丘陵の上に上野城の天守閣が遠く見える。天守閣は再建されたものだが、城址は今でも残っている。城址の石垣は、慶長十六年(一六一一)ごろ、藤堂高虎が築造したものである。 藤堂高虎は、これより先、伊予国(今の愛媛県)今治にいて二十二万石を領していたが、慶長十三年(一六〇八)八月、伊賀・伊勢に移り、二十二万石を領した。その後、慶長十九年、二十(元和元)年の大坂城攻略には徳川方に属して奮戦し、世が徳川方に移るや、伊賀一国十万石余の外、伊勢の安濃・一志を中心に十七万石、山城大和に五万石、別に下総(しもうさ)に三千石、合わせて三十二万石余を領する国持ち大名の雄藩となった。津と上野にはそれぞれ城代家老が置かれ、伊勢と伊賀の領地を治めた。上野の城代家老は、始めは藤堂出雲守高清であったが、寛永十七年(一六四〇)からは藤堂采女(うねめ)家が代々その職に着くこととなった(『上野市史』)。 その上野が芭蕉の郷里である。 上野の町のことをもう少し書いて置こう。 上野は伊賀の国全体からいうと、北寄りに位置している、伊賀盆地(今は上野盆地という)の中心の城下町であった。 伊賀の国は全体として山地である。従って地味肥沃(ひよく)とはいえない。伊賀一国で十万石であるから、農耕に恵まれた土地ではない。山に囲まれた地方で、中央に対し、いわば僻地(へきち)であるから、交通の要衝というわけでもなく、また農業に代わる他の産業の著しいものもない。伊賀は、どちらかといえば、恵まれない土地である。 気候の上からいっても、内陸性盆地特有の寒暖の差が大きい。『上野市史』によれば、過去における上野市の最高気温は三八・八度であり、最低気温は零下九・三度であるという。三重県下の他の測候所のどれよりも最高であり、最低である。海岸地帯に比して、きびしい気候であるといわねばならない。また、県下でも最も雨の少ない土地である。 伊賀一国の人口は、万治三年(一六六〇)の調査では、七万五千八百五十人で、それから六十七年後の享保十二年(一七二七)には、八万九千四百七十五人、家数で一万九千百四十四軒である(『上野市史』)。芭蕉の頃はその中間をとって、約八万人余ぐらいであったか。もっともこの調査には武士の人口は含まれていない。 伊賀盆地の中心である上野の人口は、享保十二年の調査では、家数二千百七十九軒、人口一万一千百九十五人である(『上野市史』)。芭蕉の頃はこれより少なかったから、一万人ぐらいのものであったろうか。もっとも、この数にも武士は含まれていない。
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※注意 同一の書籍でもファイル形式が異なるものは別商品として取り扱っております。
デジタル初版:2004年8月12日
ジャンル:和書>小説・ノンフィクション>ノンフィクション>伝記・自伝 ジャンル:和書>小説・ノンフィクション>文芸>詩歌 著: 井本農一 発行: 講談社
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