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著者プロフィール
新田 一実(にった かずみ)
実は二人の女性のペンネーム。
里見敦子、ヤギ座の理科系。後藤恵理子、ウオ座の文科系。血液型はともに“復讐ノート”のA型。アイディアも文章も完全共同作業。愛猫たちに囲まれながら、交替でワープロを打っているとか。
著書に「海神の寵児ディロン」「漂泊の剣士ハーコン」「霊感探偵倶楽部」「お客様ご用心」など多数のシリーズ作があり、今若い読者にもっとも人気のある作家の一人(二人?)である。
実は二人の女性のペンネーム。
里見敦子、ヤギ座の理科系。後藤恵理子、ウオ座の文科系。血液型はともに“復讐ノート”のA型。アイディアも文章も完全共同作業。愛猫たちに囲まれながら、交替でワープロを打っているとか。
著書に「海神の寵児ディロン」「漂泊の剣士ハーコン」「霊感探偵倶楽部」「お客様ご用心」など多数のシリーズ作があり、今若い読者にもっとも人気のある作家の一人(二人?)である。
解説
ティノニスの魔女エフェメリスを倒して3年。再興の進むグゥイナー王国を、アントリオの貴族の娘ティアナが訪れていた。グゥイナーの王女となるかもしれない少女である。
その動きを知った魔術師エルゴックは、成人の竜の儀式でグゥイナーの王マイヤの眼前からティアナをさらい、チモール帝国の王ビハールの元に向かう。そしてマイヤを牽制しながら、ビハールにティノニス侵攻を勧めるのだった――。伝説の王への道を歩むマイヤをめぐって、波乱の第二部が始まる!
その動きを知った魔術師エルゴックは、成人の竜の儀式でグゥイナーの王マイヤの眼前からティアナをさらい、チモール帝国の王ビハールの元に向かう。そしてマイヤを牽制しながら、ビハールにティノニス侵攻を勧めるのだった――。伝説の王への道を歩むマイヤをめぐって、波乱の第二部が始まる!
目次
第一章 異国の客
第二章 竜の原
第三章 老兵死す
第四章 新たなる闘い
あとがき
第二章 竜の原
第三章 老兵死す
第四章 新たなる闘い
あとがき
抄録
エルゴックは笑いを納め、ビハールを見据えた。
「我が王よ。……手中より娘を攫われた王が、どう動くと思われますか?」
「答えるまでもなかろう。……取り返すまでよ」
いい切ったビハールの片眉が、大きく引き上げられる。
「なるほど、グゥイナーの王を動かすか……。して、どうするつもりだ? その娘を餌におびき寄せるか? しかし、それは拙いぞ。どこの国でも女を囮(おとり)に使うとなると……」
「いえいえ、妙案といえば妙案ではございますが……」
言葉を濁したエルゴックに、ビハールの訝しげな視線が注がれる。
「ではどうする?」
「娘に関しては、私におまかせください。王はチモールとして当たり前の行動を起こされればよろしいのです。ティノニスに兵をお向けください」
「ティノニスに? 確かに潮時だが……」
「グゥイナーが動かねば、今のティノニスを従えることなど造作もございますまい」
ビハールは、にんまりと笑うエルゴックから視線を逸らし、掌に顎を預けた。
世界には三つの大陸がある。それらを総て手中に納めるのが、彼の望みだった。既に東の大陸と呼ばれるこの大陸は、彼の帝国である。今は、陸地で繋がる竜の大陸を帝国に組み入れることが目標だった。
そのためには、唯一、陸の繋がるティノニスが、竜の大陸を統合するための足掛かりなのだ。しかも、現在のティノニスには、かつての武力はない。にも拘らず、彼が西へと軍を進めないのは、確かにグゥイナーのせいだ。
当然のことながら、ビハールにしてもグゥイナーの復興を指を銜(くわ)えて見ていたわけではない。グゥイナーがその国力を伸ばす間に、ビハールは帝国の態勢を整えていたのだ。
気付いた時には、まだ成人もしていない若い王の率いる国が、彼のさらなる野望を、それとは知らずに阻(はば)んでいたのである。優秀な竜戦士の軍団を持つグゥイナーを、周辺諸国は頼りにしているのだ。ティノニスの軍がいない今、竜の大陸では最強の武装国家なのである。何かあれば、必ずグゥイナーに援助を求めるだろう。
戦士を主とする彼の軍にとって、竜戦士は充分に脅威(きょうい)となる存在だった。
グゥイナーには真の意味での竜戦士がいる。商人から買い上げた戦闘竜に乗るのではなく、自らの手で育て上げた竜を手足のように操る戦士達が。策もなく対峙(たいじ)する相手ではない。
それでなくとも、グゥイナーに伝わる竜王の伝説は、この大陸でも有名なのだ。下手に仕掛ければ、グゥイナーを中心に竜の大陸の諸公が結束してもおかしくはない。どんな小国でも、幾つもが手を組むとなると始末が悪かった。
と、ビハールの迷いを断ち切るように、エルゴックが口を開いた。
「グゥイナーは何より名誉を重んじる国。その国の王が目の前で娘を攫われたのですから、自ら動くしかないでしょう。――必ずマイヤは動きます。一人ということはありますまいが、連れて行っても数人……。あの娘を取り戻すまでは、何があろうと目もくれますまい」
「女一人のために他国は捨てると申すか」
呆れた声を上げるビハールに、エルゴックは婉然と微笑んだ。
「あの国の者共なら、女を取り戻すまでは、王と認めぬくらいのことは申しかねませぬゆえ」
ビハールは低く唸った。
「何より、娘は紅い髪をしております」
「何と……紅い髪だと!?」
「はい、サラファン様と同じ……。それだけでもマイヤは必死になりましょう」
玉座の背に身体を預け、高い天井を見上げる。
「なるほど伝説の王の隣りに、伝説の女神がいたのでは話ができすぎだな。……それで攫ったと申すか」
「グゥイナーのマイヤが、伝説の王と認められればあなた様も困るはず。――それは私も同じ……」
ビハールはゆっくりと身体を引き起こし、きつい視線をエルゴックに据えた。
「我が王よ。……手中より娘を攫われた王が、どう動くと思われますか?」
「答えるまでもなかろう。……取り返すまでよ」
いい切ったビハールの片眉が、大きく引き上げられる。
「なるほど、グゥイナーの王を動かすか……。して、どうするつもりだ? その娘を餌におびき寄せるか? しかし、それは拙いぞ。どこの国でも女を囮(おとり)に使うとなると……」
「いえいえ、妙案といえば妙案ではございますが……」
言葉を濁したエルゴックに、ビハールの訝しげな視線が注がれる。
「ではどうする?」
「娘に関しては、私におまかせください。王はチモールとして当たり前の行動を起こされればよろしいのです。ティノニスに兵をお向けください」
「ティノニスに? 確かに潮時だが……」
「グゥイナーが動かねば、今のティノニスを従えることなど造作もございますまい」
ビハールは、にんまりと笑うエルゴックから視線を逸らし、掌に顎を預けた。
世界には三つの大陸がある。それらを総て手中に納めるのが、彼の望みだった。既に東の大陸と呼ばれるこの大陸は、彼の帝国である。今は、陸地で繋がる竜の大陸を帝国に組み入れることが目標だった。
そのためには、唯一、陸の繋がるティノニスが、竜の大陸を統合するための足掛かりなのだ。しかも、現在のティノニスには、かつての武力はない。にも拘らず、彼が西へと軍を進めないのは、確かにグゥイナーのせいだ。
当然のことながら、ビハールにしてもグゥイナーの復興を指を銜(くわ)えて見ていたわけではない。グゥイナーがその国力を伸ばす間に、ビハールは帝国の態勢を整えていたのだ。
気付いた時には、まだ成人もしていない若い王の率いる国が、彼のさらなる野望を、それとは知らずに阻(はば)んでいたのである。優秀な竜戦士の軍団を持つグゥイナーを、周辺諸国は頼りにしているのだ。ティノニスの軍がいない今、竜の大陸では最強の武装国家なのである。何かあれば、必ずグゥイナーに援助を求めるだろう。
戦士を主とする彼の軍にとって、竜戦士は充分に脅威(きょうい)となる存在だった。
グゥイナーには真の意味での竜戦士がいる。商人から買い上げた戦闘竜に乗るのではなく、自らの手で育て上げた竜を手足のように操る戦士達が。策もなく対峙(たいじ)する相手ではない。
それでなくとも、グゥイナーに伝わる竜王の伝説は、この大陸でも有名なのだ。下手に仕掛ければ、グゥイナーを中心に竜の大陸の諸公が結束してもおかしくはない。どんな小国でも、幾つもが手を組むとなると始末が悪かった。
と、ビハールの迷いを断ち切るように、エルゴックが口を開いた。
「グゥイナーは何より名誉を重んじる国。その国の王が目の前で娘を攫われたのですから、自ら動くしかないでしょう。――必ずマイヤは動きます。一人ということはありますまいが、連れて行っても数人……。あの娘を取り戻すまでは、何があろうと目もくれますまい」
「女一人のために他国は捨てると申すか」
呆れた声を上げるビハールに、エルゴックは婉然と微笑んだ。
「あの国の者共なら、女を取り戻すまでは、王と認めぬくらいのことは申しかねませぬゆえ」
ビハールは低く唸った。
「何より、娘は紅い髪をしております」
「何と……紅い髪だと!?」
「はい、サラファン様と同じ……。それだけでもマイヤは必死になりましょう」
玉座の背に身体を預け、高い天井を見上げる。
「なるほど伝説の王の隣りに、伝説の女神がいたのでは話ができすぎだな。……それで攫ったと申すか」
「グゥイナーのマイヤが、伝説の王と認められればあなた様も困るはず。――それは私も同じ……」
ビハールはゆっくりと身体を引き起こし、きつい視線をエルゴックに据えた。
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