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著者プロフィール
眉村 卓(まゆむら たく)
1934年、大阪生まれ。大阪大学経済学部卒。サラリーマン生活のかたわら同人誌「宇宙塵」に参加し、61年「下級アイデアマン」でデビュー。63年には「燃える傾斜」を発表し、日本で二番めの長編SF作家となった。以後、「幻影の構成」「EXPO'87」といった長編と共に、ショートショート、「ねらわれた学園」などの学園SFも多数執筆している。「消滅の光輪」で第七回泉鏡花文学賞を受賞。
1934年、大阪生まれ。大阪大学経済学部卒。サラリーマン生活のかたわら同人誌「宇宙塵」に参加し、61年「下級アイデアマン」でデビュー。63年には「燃える傾斜」を発表し、日本で二番めの長編SF作家となった。以後、「幻影の構成」「EXPO'87」といった長編と共に、ショートショート、「ねらわれた学園」などの学園SFも多数執筆している。「消滅の光輪」で第七回泉鏡花文学賞を受賞。
解説
その時、シロタの胸に去来したのはあの奇妙でインチキ臭い広告だった。
“あなたは人生の再出発が出来ます! ドリーム保険はやり直しのための保険です。今すぐドリーム保険に入りましょう!”
恋人を奪われ、合理主義万能の社会にイヤ気がさした、はみだし者シロタは、全財産をこの保険につぎ込む決意をした。が、その時彼は、これが驚くべき高度な文明を持つエリダヌ人の仕組んだ巨大な罠の一端だとは、夢にも思っていなかった……。
広大な宇宙に飛び出した地球人シロタの冒険を描き、人類文明に巨大な疑問符を投げかける眉村卓の処女長編SF。
“あなたは人生の再出発が出来ます! ドリーム保険はやり直しのための保険です。今すぐドリーム保険に入りましょう!”
恋人を奪われ、合理主義万能の社会にイヤ気がさした、はみだし者シロタは、全財産をこの保険につぎ込む決意をした。が、その時彼は、これが驚くべき高度な文明を持つエリダヌ人の仕組んだ巨大な罠の一端だとは、夢にも思っていなかった……。
広大な宇宙に飛び出した地球人シロタの冒険を描き、人類文明に巨大な疑問符を投げかける眉村卓の処女長編SF。
目次
1 序章
2 万能サービス連立会社
3 ドリーム保険
4 漂着者
5 短い滞在
6 跳航
7 エリダヌン
8 政策島で
9 イースター・ゾーン
10 エスピーヌンたち
11 地球戦団
12 終章
2 万能サービス連立会社
3 ドリーム保険
4 漂着者
5 短い滞在
6 跳航
7 エリダヌン
8 政策島で
9 イースター・ゾーン
10 エスピーヌンたち
11 地球戦団
12 終章
抄録
いつか、彼の身体は、変な人物と一緒に、コンベアーの上を滑っていた。門が開かれている。どこかで見た光景だとシロタはぼんやり考える。
――ドリーム保険!
そうだ。感じがそっくりではないか。いったいこれは暗合なのだろうか。
冷え冷えとした円い仄暗い部屋に来ると、例の人物は彼に衣服を渡した。さっきの狂人めいた連中が着ていたものと同じ服だ。
「名前を言いなさい」
と、そいつは言った。はっきり命令とわかる口調だ。
もう抵抗する気はない。
「シロタ・レイヨ。三十歳」と彼は答え、そいつが、手に持った奇妙なものに何か書きつけるのを見守る。異様な雰囲気がそこら一杯に充満していた。
服を着、渡された固形食料を食べてしまうと、シロタはそこへ坐り込んだ。
急速に眠くなってきた。きっと今の食料には睡眠剤が入っていたのだ。
いっそ、このまま眼が覚めなければいいんだが。こんなふうな狂った、訳のわからぬ環境で、今度は奴隷にでもされるのではないだろうか。それくらいなら、死んでしまった方がましだ。この変な人間は人間じゃないみたいだ。うすれてゆく意識の中で、シロタはそんなことを、考え続けていた。
眼がさめると、彼は腕の時計を見ようとした。《遅刻するぞ!》だが時計はなかった。彼はコンクリートに似た材質の、円い床の上に眠っていたのだ。
今までの記憶が重なりあって殺到した。
塔。
塔は見えない。いや、周囲には壁もない。
太陽がひとつ、山の端にかかっている。それも、もう沈もうとしていた。
首をめぐらすと、ずっと遠くに、あの塔が見えた。その下あたりには石質の群落がある。彼はどうやら運ばれて来たものらしい。いったいどういう訳で自分がこんな目に会わねばならないのか、シロタには皆目見当がつかなかった。
立ちあがって、台を降りて、数歩進んだ。突然何かが彼を妨げ、彼はそこで足踏みをしてから引き返す。
どの方向も同じだ。目には見えないが、何ものかが、彼を包み込んでいるのであった。
これは牢獄だ。シロタは唖然としながら、もう陽が落ちて、しだいに暗くなる空を眺める。
――ドリーム保険!
そうだ。感じがそっくりではないか。いったいこれは暗合なのだろうか。
冷え冷えとした円い仄暗い部屋に来ると、例の人物は彼に衣服を渡した。さっきの狂人めいた連中が着ていたものと同じ服だ。
「名前を言いなさい」
と、そいつは言った。はっきり命令とわかる口調だ。
もう抵抗する気はない。
「シロタ・レイヨ。三十歳」と彼は答え、そいつが、手に持った奇妙なものに何か書きつけるのを見守る。異様な雰囲気がそこら一杯に充満していた。
服を着、渡された固形食料を食べてしまうと、シロタはそこへ坐り込んだ。
急速に眠くなってきた。きっと今の食料には睡眠剤が入っていたのだ。
いっそ、このまま眼が覚めなければいいんだが。こんなふうな狂った、訳のわからぬ環境で、今度は奴隷にでもされるのではないだろうか。それくらいなら、死んでしまった方がましだ。この変な人間は人間じゃないみたいだ。うすれてゆく意識の中で、シロタはそんなことを、考え続けていた。
眼がさめると、彼は腕の時計を見ようとした。《遅刻するぞ!》だが時計はなかった。彼はコンクリートに似た材質の、円い床の上に眠っていたのだ。
今までの記憶が重なりあって殺到した。
塔。
塔は見えない。いや、周囲には壁もない。
太陽がひとつ、山の端にかかっている。それも、もう沈もうとしていた。
首をめぐらすと、ずっと遠くに、あの塔が見えた。その下あたりには石質の群落がある。彼はどうやら運ばれて来たものらしい。いったいどういう訳で自分がこんな目に会わねばならないのか、シロタには皆目見当がつかなかった。
立ちあがって、台を降りて、数歩進んだ。突然何かが彼を妨げ、彼はそこで足踏みをしてから引き返す。
どの方向も同じだ。目には見えないが、何ものかが、彼を包み込んでいるのであった。
これは牢獄だ。シロタは唖然としながら、もう陽が落ちて、しだいに暗くなる空を眺める。
本の情報
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