和書>小説・ノンフィクション>ボーイズラブ小説>社会人
著者プロフィール
魔鬼 砂夜花(まき さやか)
生年月日 3月14日
星座 お魚
血液型 エビ
近況 貧乏暇無し。でも幸せなんで、良しとしている。
HPアドレス http://www3.cnet-ta.ne.jp/o/owariya/
生年月日 3月14日
星座 お魚
血液型 エビ
近況 貧乏暇無し。でも幸せなんで、良しとしている。
HPアドレス http://www3.cnet-ta.ne.jp/o/owariya/
解説
義兄によって男のカラダを覚えさせられ、その義兄に金を貢ぐために夜の街で男娼として働いてきた千尋。大学卒業までという約束どおり足を洗うが、客であった柴本への切ない想いに気づき、戸惑っていた。そんな千尋が就職したのは、なんと柴本が勤める会社。思いがけず、柴本との再会を果たした千尋だったが、その身には義兄の罠が迫っていた……。
目次
純情な蝶になりたい
抄録
「出来れば笑ってくれないかな。僕は君の笑顔が好きなんだよ」
言われて、千尋は自分が泣きそうな顔になっていることに気付き、なんとか微笑もうと努力した。
だが、それは見事に失敗に終る。
笑おうとすればする程、涙が目尻に溜まってゆき、ついには堰を越えて流れ出す。
慌てたのは柴本である。
千尋くん、千尋くんと続け様に名を呼んで、それからおそるおそる頭を抱く。
胸にしっかり抱き留めるのではなく、腕でそっと頭を包むだけの抱擁に、千尋の涙腺はさらに激しく壊れてしまった。
いつの間にか柴本のスーツの胸にすがりつき、小さく何度もしゃくりあげる。
馴染んだコロンの香りが鼻をくすぐり、安堵の匂いとなって立ち込めた。
助けて。と閉じ込めていた心が溢れ出る。
長い間、自分でも見ない振りをして過ごしてきた心は追い詰められ、行き場を求めて叫んでいる。
それを知っているかのように、優しい手は離れない。
「千尋くん、千尋くん。どうしたの? こんな事をしてくれると、私は自惚れてしまうよ?」
男の声が、そっと耳元で囁かれる。
「私は君が思っているよりずっと、未練たらしい人間なんだよ」
俺だってそうなんです。
叫ぶかわりに千尋は指に力を込めた。
もう少し、もう少しだけこうしていたい。
柴本の手が、千尋の頬にそっと触れる。
涙で濡れるのも構わず、指は千尋の頬を撫でた。
続いてファサリと紙が落ち、吐息のようにキスを受ける。
「千尋くん、お願いだから泣きやみなさい。そうでないと私はここから動けやしない」
「ごめんなさい。ごめんなさい、柴本さん」
「何がそんなに悲しいの? 千尋くん、泣いてばかりではわからないよ…」
「ごめんなさい。ごめんなさい…」
繰り返し、繰り返し、千尋は柴本に謝罪した。
それでも涙は止まらない。
柴本のキスは少しずつ大胆さを増し、頬から瞼、瞼から鼻、そして唇にと辿り着く。
何度も何度もそっと触れ合う。
やがて誘うように開いた唇に、しっとりと柴本のそれが重なって、舌が深く絡み合った。
瞬間、千尋の中から思考が抜ける。
好きです。貴方が好きなんです!
全身がそう叫ぶ。
だが微かな音をたてて唇が離れた時、千尋は柴本の瞳に映る己を見、はっ、と自分を取り戻した。
即座に両腕を突き立てて、相手の体から身を剥がす。
突然の拒絶に驚いた顔をする柴本に、千尋は力なく微笑んで見せた。
「…ごめんなさい。もう、しません」
「千尋くん?」
男の声に不信が滲む。
耳を閉じてそれを聞かず、千尋はぐいと涙を拭いた。
それから扉に手を掛けて、男の方に振り返る。
「今度お会いする時は、もう少し大人になってます。本当に今日はありがとうございました」
そう言って深々と頭を下げる。下げながら片手で扉を開いた。
その先は、公共の場たる廊下である。
なにか言いたそうに口ごもったものの、柴本は結局何も言わず、溜め息だけを残して部屋を出て行く。
そうしなければならないように仕組んだくせに、切なくて、千尋は涙を噛み締めた。
足音が消えて行くのを確かめてから、戸を閉める。
そのままゆっくりと床にへたりこみ、千尋は頬を涙で濡らす。
柴本の匂いが、髪に、服に、まだ残っている。
それが消えてなくなるまでは、涙は止まってくれそうになかった。
言われて、千尋は自分が泣きそうな顔になっていることに気付き、なんとか微笑もうと努力した。
だが、それは見事に失敗に終る。
笑おうとすればする程、涙が目尻に溜まってゆき、ついには堰を越えて流れ出す。
慌てたのは柴本である。
千尋くん、千尋くんと続け様に名を呼んで、それからおそるおそる頭を抱く。
胸にしっかり抱き留めるのではなく、腕でそっと頭を包むだけの抱擁に、千尋の涙腺はさらに激しく壊れてしまった。
いつの間にか柴本のスーツの胸にすがりつき、小さく何度もしゃくりあげる。
馴染んだコロンの香りが鼻をくすぐり、安堵の匂いとなって立ち込めた。
助けて。と閉じ込めていた心が溢れ出る。
長い間、自分でも見ない振りをして過ごしてきた心は追い詰められ、行き場を求めて叫んでいる。
それを知っているかのように、優しい手は離れない。
「千尋くん、千尋くん。どうしたの? こんな事をしてくれると、私は自惚れてしまうよ?」
男の声が、そっと耳元で囁かれる。
「私は君が思っているよりずっと、未練たらしい人間なんだよ」
俺だってそうなんです。
叫ぶかわりに千尋は指に力を込めた。
もう少し、もう少しだけこうしていたい。
柴本の手が、千尋の頬にそっと触れる。
涙で濡れるのも構わず、指は千尋の頬を撫でた。
続いてファサリと紙が落ち、吐息のようにキスを受ける。
「千尋くん、お願いだから泣きやみなさい。そうでないと私はここから動けやしない」
「ごめんなさい。ごめんなさい、柴本さん」
「何がそんなに悲しいの? 千尋くん、泣いてばかりではわからないよ…」
「ごめんなさい。ごめんなさい…」
繰り返し、繰り返し、千尋は柴本に謝罪した。
それでも涙は止まらない。
柴本のキスは少しずつ大胆さを増し、頬から瞼、瞼から鼻、そして唇にと辿り着く。
何度も何度もそっと触れ合う。
やがて誘うように開いた唇に、しっとりと柴本のそれが重なって、舌が深く絡み合った。
瞬間、千尋の中から思考が抜ける。
好きです。貴方が好きなんです!
全身がそう叫ぶ。
だが微かな音をたてて唇が離れた時、千尋は柴本の瞳に映る己を見、はっ、と自分を取り戻した。
即座に両腕を突き立てて、相手の体から身を剥がす。
突然の拒絶に驚いた顔をする柴本に、千尋は力なく微笑んで見せた。
「…ごめんなさい。もう、しません」
「千尋くん?」
男の声に不信が滲む。
耳を閉じてそれを聞かず、千尋はぐいと涙を拭いた。
それから扉に手を掛けて、男の方に振り返る。
「今度お会いする時は、もう少し大人になってます。本当に今日はありがとうございました」
そう言って深々と頭を下げる。下げながら片手で扉を開いた。
その先は、公共の場たる廊下である。
なにか言いたそうに口ごもったものの、柴本は結局何も言わず、溜め息だけを残して部屋を出て行く。
そうしなければならないように仕組んだくせに、切なくて、千尋は涙を噛み締めた。
足音が消えて行くのを確かめてから、戸を閉める。
そのままゆっくりと床にへたりこみ、千尋は頬を涙で濡らす。
柴本の匂いが、髪に、服に、まだ残っている。
それが消えてなくなるまでは、涙は止まってくれそうになかった。
本の情報
この本を読んだ人は、こんな本も読んでいます
形式
【XMDF形式】
XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアはここから無料でダウンロードできます。
詳しくはブンコビューアダウンロード初めての方へをご覧下さい。
対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。
【bookend形式】
この書籍は、商品の初回閲覧時に必要ソフト「bookend」(無料)を手動インストールする必要があります。
詳細はbookend形式のご利用方法をご覧下さい。
bookend形式の書籍をご覧いただくためにはAdobe Reader最新版(無料)が必要になります。Adobe Reader最新版はここから無料でダウンロードできます。


























