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著者プロフィール
新田 一実(にった かずみ)
実は二人の女性のペンネーム。
里見敦子、ヤギ座の理科系。後藤恵理子、ウオ座の文科系。血液型はともに“復讐ノート”のA型。アイディアも文章も完全共同作業。愛猫たちに囲まれながら、交替でワープロを打っているとか。
著書に「海神の寵児ディロン」「漂泊の剣士ハーコン」「霊感探偵倶楽部」「お客様ご用心」など多数のシリーズ作があり、今若い読者にもっとも人気のある作家の一人(二人?)である。
実は二人の女性のペンネーム。
里見敦子、ヤギ座の理科系。後藤恵理子、ウオ座の文科系。血液型はともに“復讐ノート”のA型。アイディアも文章も完全共同作業。愛猫たちに囲まれながら、交替でワープロを打っているとか。
著書に「海神の寵児ディロン」「漂泊の剣士ハーコン」「霊感探偵倶楽部」「お客様ご用心」など多数のシリーズ作があり、今若い読者にもっとも人気のある作家の一人(二人?)である。
解説
東の大国チモールとの戦いが膠着状態となったグゥイナー国は、戦局打開のため、マイヤ自らがディパイエへと赴き、全面的な協力を得ることに。一方、マイヤが伝説の王となることを阻むため、魔術師エルゴックはチモール王ビハールに加勢するが、魔術に頼って勝利を得ることを嫌ったビハールに疎まれ、策に窮していた――。
それぞれの思惑が絡みあう中、ついに決戦の火蓋が切って落とされる。果たしてマイヤは、伝説の竜王の座に就くことができるのか……!? 『暁の竜王伝説 第二部』完結編!
それぞれの思惑が絡みあう中、ついに決戦の火蓋が切って落とされる。果たしてマイヤは、伝説の竜王の座に就くことができるのか……!? 『暁の竜王伝説 第二部』完結編!
目次
第一章 出陣
第二章 覇王の砦
第三章 竜戦士
第四章 伝説の竜王
あとがき
第二章 覇王の砦
第三章 竜戦士
第四章 伝説の竜王
あとがき
抄録
風に舞い上がる黒髪を竜革の額金で押さえたラオ・ビハールは、物見に立って辺りを睥睨していた。
砦を築いたものの、ここで戦う気など毛頭ない。この砦は、ここよりは一歩も引かないという決意の表われでしかないのだ。未だかつて戦ったことのない相手だということもあって、慎重を期しているだけのこと。そして、それは戦士達も了解していた。
「……竜戦士は?」
まだ姿のない敵の数を聞く。
「四十騎ほど。……総て南の道におります」
遥か上空から舞い降りたエルゴックは、王の足元に膝を折った。
ビハールの眉が引き上がる。
この尊大な魔術師が、いくら戦士達が見守っているからとはいえ、ここまで臣下としての態度を取るとは、思ってもいなかったのだ。
「戦士は?」
「二手に分れております。南の道と中央の道に」
「北は捨てたか……」
「罠かもしれませぬが……」
どの道を辿っても、ティノニスの都に攻め込める。確かに、北の道が一番険しいが、それも竜の足にとっては、という程度のもの。人間が進むには何ら支障はないのだ。
「エルマノにも兵を残したかもしれんな。北の道ならば、途中で襲われてはひとたまりもない。……竜は南か……」
できるならば、竜戦士とは戦いたくない。しかし、中央の道を進んで、背後から竜戦士に襲われては、惨敗は目に見えている。グゥイナーの戦闘竜は、戦士が入り乱れて戦っていても、敵だけを選んで襲うものだと、先日の戦いで判っていた。
戦士の数は圧倒的に多いのだが、それでも優位とはいい難い。
「竜を始末いたしますか?」
眉を引き上げたビハールは、エルゴックを見下ろした。
黒い甲冑姿の魔術師は、平然と微笑んでいる。重たげな首飾りを幾重にも掛け、透けるような薄い黄金のマントは赤い宝玉で肩に留められていた。
虚仮威(こけおど)しとしか見えない姿だが、その力を使えば、竜戦士を片づけることもできる。一番たちの悪い竜戦士を始末できるというのなら、この魔術師にやらせるべきだろう。
しかし、ビハールは迷っていた。
この男がどこまで信用できるか、ますます判らなくなっているのだ。だが今現在。この瞬間だけは目的は同じだろう。
「よし。竜を始末してまいれ。ただし、戦士には手出しするな。魔術で殺されたなどと噂されたのでは、後々面倒だ。できるならば、竜の方をうまく始末しろ」
魔術師の介在を隠したいのは、エルゴックも同じだった。ラオ・ビハールには伝説の王を名乗ってもらわなければならないのである。グゥイナーにつきまとう伝説を打ち砕くには、真の伝説の王を出現させるしかない。グゥイナーを亡ぼしたのが竜の王を従えた王であれば、竜の大陸に根強く残る伝説は、新たな形に変質するだろう。
伝説という実態のないものを壊す。
古の魔法を究めたエルゴックにとっても、それは恐ろしく困難な仕事だった。伝説の王の候補を殺すだけでは、物事は解決しない。伝説を信じる人々は新たな王を捜すだけなのだ。尋常ではない殺され方をした場合、伝説に光を与えるだけになる。
それだけは避けなければならない。
マイヤが憎いわけでも、グゥイナーに怨みがあるわけでもないのだ。それだけにエルゴックの目的をラオ・ビハールに説明するのは難しかった。
「少し手間取りましょうが、何頭かの戦闘竜の統制を乱しましょう。シウムの連れていた竜のように……」
「なるほど……」
敵味方なく襲いかかり、戦力というよりは障害になった戦闘竜を、ビハールはその目で確かめていた。人が操るならば、これ以上ないほどの有力な武器となることも、思い知らされている。戦闘竜に全幅の信頼をおいている連中であるだけに、それが狂えば混乱するだろう。
「行け。行って連中を攪乱してくるのだ」
膝を折ったまま深く頭を下げたエルゴックは、金の霧のようなマントを翻すと、その場から掻き消えた。
砦を築いたものの、ここで戦う気など毛頭ない。この砦は、ここよりは一歩も引かないという決意の表われでしかないのだ。未だかつて戦ったことのない相手だということもあって、慎重を期しているだけのこと。そして、それは戦士達も了解していた。
「……竜戦士は?」
まだ姿のない敵の数を聞く。
「四十騎ほど。……総て南の道におります」
遥か上空から舞い降りたエルゴックは、王の足元に膝を折った。
ビハールの眉が引き上がる。
この尊大な魔術師が、いくら戦士達が見守っているからとはいえ、ここまで臣下としての態度を取るとは、思ってもいなかったのだ。
「戦士は?」
「二手に分れております。南の道と中央の道に」
「北は捨てたか……」
「罠かもしれませぬが……」
どの道を辿っても、ティノニスの都に攻め込める。確かに、北の道が一番険しいが、それも竜の足にとっては、という程度のもの。人間が進むには何ら支障はないのだ。
「エルマノにも兵を残したかもしれんな。北の道ならば、途中で襲われてはひとたまりもない。……竜は南か……」
できるならば、竜戦士とは戦いたくない。しかし、中央の道を進んで、背後から竜戦士に襲われては、惨敗は目に見えている。グゥイナーの戦闘竜は、戦士が入り乱れて戦っていても、敵だけを選んで襲うものだと、先日の戦いで判っていた。
戦士の数は圧倒的に多いのだが、それでも優位とはいい難い。
「竜を始末いたしますか?」
眉を引き上げたビハールは、エルゴックを見下ろした。
黒い甲冑姿の魔術師は、平然と微笑んでいる。重たげな首飾りを幾重にも掛け、透けるような薄い黄金のマントは赤い宝玉で肩に留められていた。
虚仮威(こけおど)しとしか見えない姿だが、その力を使えば、竜戦士を片づけることもできる。一番たちの悪い竜戦士を始末できるというのなら、この魔術師にやらせるべきだろう。
しかし、ビハールは迷っていた。
この男がどこまで信用できるか、ますます判らなくなっているのだ。だが今現在。この瞬間だけは目的は同じだろう。
「よし。竜を始末してまいれ。ただし、戦士には手出しするな。魔術で殺されたなどと噂されたのでは、後々面倒だ。できるならば、竜の方をうまく始末しろ」
魔術師の介在を隠したいのは、エルゴックも同じだった。ラオ・ビハールには伝説の王を名乗ってもらわなければならないのである。グゥイナーにつきまとう伝説を打ち砕くには、真の伝説の王を出現させるしかない。グゥイナーを亡ぼしたのが竜の王を従えた王であれば、竜の大陸に根強く残る伝説は、新たな形に変質するだろう。
伝説という実態のないものを壊す。
古の魔法を究めたエルゴックにとっても、それは恐ろしく困難な仕事だった。伝説の王の候補を殺すだけでは、物事は解決しない。伝説を信じる人々は新たな王を捜すだけなのだ。尋常ではない殺され方をした場合、伝説に光を与えるだけになる。
それだけは避けなければならない。
マイヤが憎いわけでも、グゥイナーに怨みがあるわけでもないのだ。それだけにエルゴックの目的をラオ・ビハールに説明するのは難しかった。
「少し手間取りましょうが、何頭かの戦闘竜の統制を乱しましょう。シウムの連れていた竜のように……」
「なるほど……」
敵味方なく襲いかかり、戦力というよりは障害になった戦闘竜を、ビハールはその目で確かめていた。人が操るならば、これ以上ないほどの有力な武器となることも、思い知らされている。戦闘竜に全幅の信頼をおいている連中であるだけに、それが狂えば混乱するだろう。
「行け。行って連中を攪乱してくるのだ」
膝を折ったまま深く頭を下げたエルゴックは、金の霧のようなマントを翻すと、その場から掻き消えた。
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