和書>小説・ノンフィクション>ライトノベル>恋愛
著者プロフィール
津原 やすみ(つはら やすみ)
1964年広島県広島市生まれ。89年春、津原やすみ名義で少女小説作家としてデビュー。以来八年間に三十余作を発表するが、96年暮れに少女小説から引退。97年秋、津原泰水名義で怪奇幻想小説『妖都』(講談社)を発表。綾辻行人、小野不由美、井上雅彦、菊地秀行の各氏に絶賛され、“本格ホラーの超新星”として脚光を浴びる。その後、アンソロジー《異形コレクション》(廣済堂)などに短篇を発表。現在、幻想長篇『ペニス』を小説推理(双葉社)に連載中。
99年6月に連作短篇集『蘆屋家の崩壊』(集英社)を、近日中に怪奇小説『夜想曲』(角川ホラー文庫)、近未来小説『ハウンド』(講談社)を上梓予定。
1964年広島県広島市生まれ。89年春、津原やすみ名義で少女小説作家としてデビュー。以来八年間に三十余作を発表するが、96年暮れに少女小説から引退。97年秋、津原泰水名義で怪奇幻想小説『妖都』(講談社)を発表。綾辻行人、小野不由美、井上雅彦、菊地秀行の各氏に絶賛され、“本格ホラーの超新星”として脚光を浴びる。その後、アンソロジー《異形コレクション》(廣済堂)などに短篇を発表。現在、幻想長篇『ペニス』を小説推理(双葉社)に連載中。
99年6月に連作短篇集『蘆屋家の崩壊』(集英社)を、近日中に怪奇小説『夜想曲』(角川ホラー文庫)、近未来小説『ハウンド』(講談社)を上梓予定。
解説
あたし、百武千晶。引越しのため荷物を整理していたら、引き出しの奥から奇妙な日記を発見したの。NYからやってきて、同居しているイトコの星男がエイリアンだという、SFまがいのもの。あたしには書いた記憶もないし、星男に聞いてみても心当たりはないって言うし……。
そんなあたしたちは、日本人でありながらキャサリンと名乗る大富豪のお嬢様と出会ったために、とんでもない事件に巻き込まれることになるんだ――。
そんなあたしたちは、日本人でありながらキャサリンと名乗る大富豪のお嬢様と出会ったために、とんでもない事件に巻き込まれることになるんだ――。
目次
プロローグ
1 中庭
2 神社
3 豪邸
4 客間
5 対面
6 廊下
7 弁償
8 転居
9 盛装
10 音楽
11 後悔
12 破裂
13 記憶
14 別荘
15 侵入
16 潜入
17 危機
エピローグ
あとがき
1 中庭
2 神社
3 豪邸
4 客間
5 対面
6 廊下
7 弁償
8 転居
9 盛装
10 音楽
11 後悔
12 破裂
13 記憶
14 別荘
15 侵入
16 潜入
17 危機
エピローグ
あとがき
抄録
「ぼくの手元に、招待状が届いたのが、昨夜なんです」
三京くんは、言った。
「ちょっと、常識では考えられないことです。こういう類いのものは、少なくとも1か月は、期間を置くのが、マナーですから。不審に思った、ぼくは、安藤家に電話をかけてみましたが、もはや、残っているのは使用人ばかりで、何を尋ねても、らちがあきません。そこで、他の、招待を受けていそうな人間に、手当りしだいに、電話をかけてみたんです」
と、三京くんは、一呼吸おいて、
「実際に、招待を受けていたのは、安藤家の主要な親戚、及び、キャシーの親しい友人たちだけでした。しかし、パーティの趣旨を、知らされている人間は、ひとりもいません」
「じゃあ、なんで、婚約だなんて?」
「最初は、直感でした。しかし、事実、ホシオくんは、そのパーティに招待されている。失礼な言い方かもしれませんが、招待客の中で、ホシオくんは、異彩を放っているんです。この事実は、すなわち、パーティが、ホシオくんという人間の、お披露目のために開かれることを、意味します」
「でも、ホシオは、何も知らないんですよ」
「既成事実を作ってしまうのが、パーティの目的なんです。趣旨を知っていようが、いまいが、出席さえすれば、ホシオくんは、役割を果したことになるわけです」
「でも、ホシオが、後で断っちゃえば」
「安藤家の、面子(メンツ)というものがあります。キャシーも、その両親も、あらゆる手段を講じて、婚約を成立させようとするでしょう。間違いありません」
「そんなぁ」
「もう一つ、ぼくの推測には、根拠があります。キャシーの母親の、家柄です。父親の方は、はっきり申し上げて、いわゆる成金の部類ですから、恋愛に関しても、何ら、制約的なところはないのですが、母親の方は、旧華族の家柄です。キャシーに、結婚を前提としない、男女交際を許すことなど、まず、あり得ません。つまり、キャシーが、ホシオくんとの交際を望めば、非公式にでも、婚約する以外、手だてがないんです」
あたし、ため息をついた。
すごい世界。
「恐らく、この策略には、キャシーの父親が、相当、かんでいることでしょう。彼は、娘に対しては、完全に言いなりですからね。そうでもなければ、ホシオくん程度の家柄で……いや、失礼、しかし、並の人間が、フリーパスでキャシーと……」
ギリッ。
と、歯ぎしりの音。
「さ、三京くん、落ち着いて」
「失礼」
「あの、パーティの、時間と場所を」
「もちろん、お教えします。必ず、来てほしい。開始時刻は、午後7時。別荘の住所は、千葉県……」
「婚約ぅ?」
マキは、聞き返した。
「そう。婚約」
と、あたしは、答えた。
一瞬、間をおいて、マキの爆笑が、電話線を伝わってきた。
あたし、受話器から、少し、耳を離した。
「ウケてもらっちゃ、困るのよ。マキ以外は、全員、大まじめなんだから」
笑いが、ピタリと止んだ。
「あたしも、大まじめよぉ。ねえ、じゃあ、ホシオくんって、結婚しちゃうんだぁ」
「……そりゃ、まあ、そのまま行けば」
「ぷぷっ」
マキ、再び爆笑。
どこが、大まじめなのよ。
「とにかく、すぐに、支度してちょうだい。40分後に、黄島駅の上りホームで、待ってるから」
「えっ、どこ行くのぉ?」
「決まってるじゃない。安藤数子んとこの別荘よ」
「なんで、あたしが、行かなきゃいけないのよぉ」
「あたしのボディガード。キミ、強いんでしょ」
「強くなんかないもぉん」
「いないよりは、ましだわ。だいいち、そもそもの発端をつくったのは、キミなんだからね、マキ」
「小学生ん時のことじゃなぁい。でも、千晶ぃ、そこ行って、いったい、何するつもりなわけぇ?」
「盗み出すのよ、ホシオを」
三京くんは、言った。
「ちょっと、常識では考えられないことです。こういう類いのものは、少なくとも1か月は、期間を置くのが、マナーですから。不審に思った、ぼくは、安藤家に電話をかけてみましたが、もはや、残っているのは使用人ばかりで、何を尋ねても、らちがあきません。そこで、他の、招待を受けていそうな人間に、手当りしだいに、電話をかけてみたんです」
と、三京くんは、一呼吸おいて、
「実際に、招待を受けていたのは、安藤家の主要な親戚、及び、キャシーの親しい友人たちだけでした。しかし、パーティの趣旨を、知らされている人間は、ひとりもいません」
「じゃあ、なんで、婚約だなんて?」
「最初は、直感でした。しかし、事実、ホシオくんは、そのパーティに招待されている。失礼な言い方かもしれませんが、招待客の中で、ホシオくんは、異彩を放っているんです。この事実は、すなわち、パーティが、ホシオくんという人間の、お披露目のために開かれることを、意味します」
「でも、ホシオは、何も知らないんですよ」
「既成事実を作ってしまうのが、パーティの目的なんです。趣旨を知っていようが、いまいが、出席さえすれば、ホシオくんは、役割を果したことになるわけです」
「でも、ホシオが、後で断っちゃえば」
「安藤家の、面子(メンツ)というものがあります。キャシーも、その両親も、あらゆる手段を講じて、婚約を成立させようとするでしょう。間違いありません」
「そんなぁ」
「もう一つ、ぼくの推測には、根拠があります。キャシーの母親の、家柄です。父親の方は、はっきり申し上げて、いわゆる成金の部類ですから、恋愛に関しても、何ら、制約的なところはないのですが、母親の方は、旧華族の家柄です。キャシーに、結婚を前提としない、男女交際を許すことなど、まず、あり得ません。つまり、キャシーが、ホシオくんとの交際を望めば、非公式にでも、婚約する以外、手だてがないんです」
あたし、ため息をついた。
すごい世界。
「恐らく、この策略には、キャシーの父親が、相当、かんでいることでしょう。彼は、娘に対しては、完全に言いなりですからね。そうでもなければ、ホシオくん程度の家柄で……いや、失礼、しかし、並の人間が、フリーパスでキャシーと……」
ギリッ。
と、歯ぎしりの音。
「さ、三京くん、落ち着いて」
「失礼」
「あの、パーティの、時間と場所を」
「もちろん、お教えします。必ず、来てほしい。開始時刻は、午後7時。別荘の住所は、千葉県……」
「婚約ぅ?」
マキは、聞き返した。
「そう。婚約」
と、あたしは、答えた。
一瞬、間をおいて、マキの爆笑が、電話線を伝わってきた。
あたし、受話器から、少し、耳を離した。
「ウケてもらっちゃ、困るのよ。マキ以外は、全員、大まじめなんだから」
笑いが、ピタリと止んだ。
「あたしも、大まじめよぉ。ねえ、じゃあ、ホシオくんって、結婚しちゃうんだぁ」
「……そりゃ、まあ、そのまま行けば」
「ぷぷっ」
マキ、再び爆笑。
どこが、大まじめなのよ。
「とにかく、すぐに、支度してちょうだい。40分後に、黄島駅の上りホームで、待ってるから」
「えっ、どこ行くのぉ?」
「決まってるじゃない。安藤数子んとこの別荘よ」
「なんで、あたしが、行かなきゃいけないのよぉ」
「あたしのボディガード。キミ、強いんでしょ」
「強くなんかないもぉん」
「いないよりは、ましだわ。だいいち、そもそもの発端をつくったのは、キミなんだからね、マキ」
「小学生ん時のことじゃなぁい。でも、千晶ぃ、そこ行って、いったい、何するつもりなわけぇ?」
「盗み出すのよ、ホシオを」
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