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獰猛な恋人

獰猛な恋人


発行: キリック
レーベル: シフォンノベルズ
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆3
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解説

 「俺を拒否して、誰と組む気だ?」
 ある事件をきっかけに組長の愛人の子という過去を書きかえ捜査一課の刑事になった蘇鴬。ヤクザがらみの事件でマル暴と共同戦線を張る矢先、毛嫌いする波多野の好色な振る舞いに過剰反応した蘇鴬は停職処分を喰らってしまう。ところが、その停職を波多野は強引に解き、蘇鴬は無理矢理タッグを組まされてしまい……。
 一方、事件は過去を隠す蘇鴬を揺るがす事態へと発展していき──。

※こちらの作品にはイラストが収録されていません。

抄録

 『随分、間延びした情けねぇ声じゃねぇか』
 「は……?」
 聞こえてきたのは思いがけない声だった。
 (なんで、こいつが……)
 咄嗟に硬直した不満を投げつけそうになり、慌てて口元を押さえ込んだ。
 『たった三日で王子も台無しだな』
 低く重たい声が鼓膜を撫で上げる。虫唾が奔った。
 こんな声が聞こえてくるものをいつまでも耳に宛てていたくない。
 でも、放り出してしまえば、負けたことになる。それだけはしたくない。悔しい。腹立たしい。
 「……わざわざ嫌味を言うために電話ですか?」
 『そこまで暇じゃねぇ』
 重たい声が引き摺るように嗤《わら》う。
 「じゃ、なんなんですか?」
 相変わらず呂律が廻らない。
 こいつと話す羽目になるのなら、あんなに飲むんじゃなかった。無理にでもあらを見つけ出し、難癖をつけようとしている相手にみすみす弱点を晒すようなものではないか。
 『明日から出てこい』
 なんの前置きもなく言い切られて、その酷薄じみた語尾に何故か寒気がした。
 ぶるぶると身震いして、蘇鴬は携帯電話を軽く耳から外した。
 『聞こえているのか? 明日から現場に戻れ』
 一、二センチ離してみたところで、低い声の呪縛は続く。残念なことに、充電はまだもちそうだ。
 『王子よ。いくら殴っちまうくらいに俺のことが嫌いでも、返事くらいしたらどうだ? 』
 焦れているわけでもなさそうなのに、微妙にせっつく口調を繕って、声が蘇鴬に絡みつく。
 数分前の震えの理由が見えたようで、蘇鴬は引き攣れた溜息を落とした。
 『王子? 』
 「……聞こえてます。その王子っていうのやめてもらえませんか? 波多野さん」
 蘇鴬は、これ以上はないほどの無愛想で応えた。
 通話の向こう側で、声の主──波多野が引きつけるように嗤った。
 いらっとして、蘇鴬は更に携帯電話を離した。
 それでも、抑えてなお大きな波多野の声はじかに脳髄を突き刺すように響く。だらだらと酒を飲み過ぎたせいか。ほとんど味わったことなどないが、これが二日酔いというやつか。
 『停職喰らっても、その態度とはたいしたもんだ。ほそっこいお坊ちゃんだとばっかり思ってたが、なかなか骨があんだな。お前さんとこの若造よかはマシ……』
 「そんなこと、部外者のあんたに言われたくありません」
 蘇鴬は継続した無愛想の上に、多少の攻撃的エッセンスを乗せて、波多野の言葉を遮った。
 『なんだよ。顔が見えてねぇと随分強気じゃねぇかよ。出来るんなら普段からそれくらい威勢良く喋れや。王子は妙に上品過ぎていけねぇや』
 波多野が面倒そうに吐き棄てた。
 がさつで乱暴ではあるが、それほど癇性《かんしょう》というわけでもない波多野は、他所からの反発に反発で返すことは滅多にない。からかわれたり、挑発されたりした側が勝手にキレるだけだ。蘇鴬も毎回そのパターンに填まり、「王子」と呼ばれるだけで不機嫌な視線を向けてしまう。
 その時点で既に波多野に負けているとはわかっていても、肩肘を張り、言い返さずにはいられない。波多野に更に揶揄されれば頑なな仏頂面になり、蔑んだような笑みでひらりと躱《かわ》されればいつまででも歪んだしこりを残す。
 露悪的な冗談だと、波多野はこんな男なのだと、何故流せないのか。
 波多野と接触するたびに、成長し切れていない感情を晒され、柔軟性のなさを自覚してしまう。本当に情けない。
 「だから、余計だって……」
 反論の途中で、充電の切れる警告音が鳴った。
 「言ってんですよ」と続けながら、充電コードに携帯電話を接続する。
 『確かに、余計だな』
 波多野は溜息混じりに嘘くさい笑い声を転がした。

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形式

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