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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ヒストリカル

魔女に捧げる誓い

魔女に捧げる誓い


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ヒストリカル
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 デボラ・シモンズ(Deborah Simmons)
 日本では『狼を愛した姫君』でデビュー以来、ナンバーワンの人気を誇る作家。ディ・バラ家やド・レーシ家の面々を主人公に据えた中世の物語と、華やかなイギリス摂政期(十九世紀初頭)の物語を描き分ける。「どの作品もそれぞれ個性の際立ったものに仕上がるよう心がけている」と語る。夫と息子二人、猫二匹と迷い犬とともに、米オハイオ州に在住。

解説

 ■水鏡に映し出されし運命の相手。その名はディ・バラ……悩み多き騎士。

 ■ディ・バラ家一番の女好きで酒好きのスティーブンは、神々しいまでの美しさに恵まれ、何ひとつ不自由なく暮らしていた。だが実際は、日々つのるむなしさのせいで酒も女も楽しめない。しかも父キャンピオン伯爵から、不愉快な仕事を言い渡された。この寒さ厳しい気候の中、レストランジュ家の姫君ブリードをウェールズの館まで送り届けろというのだ。美しい女の護衛ならともかく、ブリードは彼をいらだたせるだけの存在だった。頭巾で髪をすっぽり覆い、始終しかめっ面を彼に向けてくる。しかしのろのろと道中を行くに従って、逆に興味がわいてきた。まるで魔力に導かれるがごとく、彼はブリードに吸い寄せられた。好奇心と飽くなき欲望は、やがて抑えきれないほどに……。

抄録

 彼の魅力はあまりにも強烈で、またしても一瞬、ディ・バラ家の男たちは、普通の人間を超えた力を持っているのだろうかと考えてしまった。だが、体から発散される匂いが──馬と革、ワインの混じった男の匂いが──スティーブンはまぎれもなく人間だと告げている。自分を支えるために差し出された手から、ブリードは険しい顔で逃れようともがいた。彼に触れられたくなどない。こんな松明の明かりが照らすだけのほの暗い塔の中では。いいえ、それ以外でもだめよ。危険すぎるもの。
 そう、彼は危険すぎる。いつもどおりブリードの抗議を無視して手を放さないことだけでも、それはわかる。わたしの部屋の前で、まさかこれ以上の真似をするはずはないでしょう? ブリードは忍び寄る恐怖と闘いながら、精いっぱい断固とした顔で相手をにらんだ。だが彼のハンサムな顔を見ると、その努力も続かなかった。官能的な唇がゆっくりと曲線を描いて、輝く白い歯がのぞき、濃い色の瞳はブリードの秘密を知っていると告げている。そんな秘密などないわ。誓って間違いなのに。
「そんな目で見ないで」
「どんな目だい?」わずかに眉を上げ、スティーブンが無邪気に尋ねる。だがスティーブン・ディ・バラほど、無邪気といったものとかけ離れた人間はいない。それなのに、わかっていながら彼に見つめられると、気持ちが揺れる。あの目の輝きも、空っぽな中身を覆うまやかしにすぎない。でも……。
「どういうことなんだい、ブリード?」物憂い声で尋ねられると、ブリードの体内をめぐる血の流れは緩慢になり、全身がぼうっとした温かさに包まれる。それでも彼女は頭を振って、スティーブンの誘惑を振り払った。彼がどんな力を持っていようと、それに影響されるつもりはない。
「わたしが言っていることは、はっきりわかっていらっしゃるはずですわ、だんなさま」こんな男にはまったく必要のない、不釣り合いな敬称を、ブリードは声高に呼びかけた。キャンピオン伯はまさしく偉大な貴族であり、叡智に満ちた尊敬に値する人だ。でもその息子はまったく違う。「数えきれないほどの女にあなたが投げかけてきた目ですわ。鏡の前でうっとりしながら練習なさったに違いないわ。でもわたしをそんな目で見てもまったくの無駄! 前にも申しあげたように、わたしはあなたの魅力になんの興味もありません」
 スティーブンの黒い眉がまた上がった。「本当かな?」
「ええ、本当です」冷ややかな目でスティーブンを見据えてブリードは答えた。
「それなら、あのキスはどう説明する?」
 ブリードは慎重に無表情を保った。「あなたはあれをそうお呼びになるの? わたしに言わせればあれは襲撃です。あなたのお父上になんと──」
 彼女の言葉は、ゆっくりと腕を撫であげる彼の手の感触にさえぎられた。「わたしが覚えていることと違うな。わたしの記憶では、きみはわたしを迎え入れ、もっとほしがっていた」スティーブンの温か
な息づかいが愛撫のようにブリードをくすぐった。
 忘れたい思い出がもたらした内心の混乱を、ブリードはかけらほども外には出さなかった。そしてできるだけ冷ややかに言った。「あなたに従うふりをしただけです、早く解放されるように。もしあなたが……」
 スティーブンはブリードの脅しを低い笑い声でかき消すと、ディ・バラ特有の傲慢さを見せて言った。「だったら、これから試してみようか?」
「結構です」それだけ言ってブリードはスティーブンを押しのけて廊下を抜けようとした。だが、スティーブンはつかんだ手にいちだんと力をこめ、ブリードはますます恐怖にとらわれそうになった。彼は嘘つきの怠け者だわ。それでもこの男が危険であることに変わりはない。彼からは離れなければ。口元にぐっと力をこめると、ブリードはスティーブンの顔に唾を吐きかけんばかりの勢いで言った。「あなたなんかほしくないわ!」
「わたしだって、きみなんかほしくない」スティーブンはそうささやいたが、彼の目は暗く陰っていた。長いひととき、ブリードは彼に溺れ、そして自分自身に溺れてしまう恐怖を覚えた。だが、スティーブンはあるものを忘れていた。ブリードも同じだった。スティーブンがブリードを引き寄せたとき、まだ彼女の手にあった皿がスティーブンの胸に当たった。脂っぽい残り物を上等のチュニックにべっとりとつけられて、スティーブンはあわてて身を引いた。
 その光景に一瞬驚いたものの、その後はブリードもためらわなかった。彼が手をゆるめた隙に、部屋に飛び込み、扉に閂をかけた。そしてぐったりと扉にもたれると、ほっとすると同時にこみあげる笑いを抑えた。ハンサムな女たらしが、見事な衣装を食べ物まみれにされたときの顔といったら! ブリードが息を殺して待っていると、やがて廊下を荒っぽく立ち去る足音が響いた。
 彼と話し合う決心なんて、こんなものだわ! でも、さっきのは話し合いとも言えない。明日こそ、ブリードは心に誓った。必ず朝から出発する。彼といっしょであろうとなかろうと。そのどちらを望んでいるのかは、彼女さえもはっきりわからない。いったん道に出てしまいさえすれば、わが家はもうすぐだ。そしてあの男とも永久に別れられる。そう考えてブリードは低い吐息をもらした。
 それまでは彼のうわべばかりの騎士道精神と、わずかに残っているかもしれないディ・バラの名誉心に頼るしかない。


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