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和書>小説・ノンフィクションハーレクインシルエット・ラブ ストリーム

あの夜をさがして

あの夜をさがして


発行: ハーレクイン
シリーズ: シルエット・ラブ ストリーム
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ダーリーン・スカレーラ(Darlene Scalera)
 ニューヨーク生まれ。シラキュース大学でパブリック・コミュニケーションを専攻。卒業後、工場労働から放送、広告業界までありとあらゆる仕事を経てフルタイムのロマンス小説家となる。現在、二児の母。愛する夫ジムと子供たちに囲まれ、幸せに暮らしている。

解説

 ■束の間、身分の違いを忘れられた幻の一夜。その代償は彼女に重くのしかかった。

 ■十八歳の誕生日、ダニーは一夜限りのシンデレラになった。しがない厩務員であることを隠し、上流社会の夜会に出席したのだ。髪の色を変え、初めての化粧をしてきらびやかなドレスをまとい、カロライナ出身の令嬢ダニエル・デヴリスと名乗って……。令嬢と紳士たちが甘い言葉をささやきかわす舞踏会を、手の届かない生活を、ダニーは味わってみたかった。そして、運命の人に出会ってしまった。ケンタッキーきっての名門ハミルトン家の御曹子リードに。ダンスフロアを横切ってきて手を差し伸べたリードの、南部一と謳われた微笑みにあらがうことなどできなかった。夢のような夜をともにした翌朝、彼女は身分を恥じて姿を消した。ダニーはすべてを忘れるため遠く離れた地で競走馬の世話に励む。だが五年が経った今、残酷な現実が彼女に襲いかかろうとしていた。

 ■青い空とはてしない草原が広がる遙かなる大地。けれど、そこには決して越えることのできない階級の壁が存在して……。お届けするのは、サラブレッド競馬界に渦巻く陰謀とからめて展開される珠玉のラブストーリー。感動のラストには思わず涙を誘われます。

抄録

 彼女は屋根裏から下りて厩舎を横切り、身動き一つしないリードのひんやりした肩に左手をかけた。
 リードはくるりと振り向き、殴りかかろうとした。ダニーは先に声をかけるべきだったと思った。だが、すぐに彼の目から激しいきらめきは消え、驚いたような様子だけが残った。彼は握りしめた拳を広げ、ダニーに近づいた。
「きみを見たのは想像だったのかと思っていたところだったんだ」リードはこの不確かな時間と同じくらいぼんやりとした声で言った。彼の表情が険しくなる。「ここで何をしているんだい?」
「眠れなくて」ダニーは簡単に答えた。
「僕もなんだ」リードの視線は彼女を通り過ぎた。近くにいても、夜は彼の顔に影を落とし、その美しさを際立たせた。五年前、ダンスフロアを横切ってダニーの手を取ったときもこんなふうに見えた。謎めいて、魅惑的で、力強く見えた。ダニーは彼の視線が自分に向けられると、目をそらした。「窓から外を見ていたら、きみが厩舎に入るのが見えたんだ」彼は言った。
 目をそらしていても、ダニーは熱心に見られているのを感じ、闇が自分の顔にも陰影をつけ、平凡な容貌をあの夜のようにエキゾチックに見せているのではないかと不安になった。ダニーは後ずさりした。それを彼が罪悪感からだと解釈したとしても、あたらずとも遠からじだ。
「眠れないときは厩舎に来るんです」ダニーは屋根裏に顔を向けた。「あそこにいたんですよ」
 リードはまじまじと彼女を見た。ダニーはもう一歩下がりたくなったが、動かなかった。彼を見つめ、待った。強くきかれたら、もっと話すことにしよう。
 リードは彼女を見た。彼が何を見ているのかわかったら、とダニーは思った。彼の視線は私を通り過ぎている。それでも何を見ているのか知りたい。期待どおり、リードはそれ以上尋ねなかった。馬の飼育者である彼は、厩舎が安らぎの場になることを知っている。きっと彼も夜、藁の上で眠ったことがあるのだろう。
 ダニーの思考を読んだかのように、リードは言った。「僕も若いころ、同じことをしたものだよ」
 彼はまるで自分が年寄りみたいに言った。彼はまだ三十歳だ。でも私が二十三歳だからだろう、とダニーは思った。いや、彼にとって、この厩舎はもはやかつてのような安らぎの場ではありえない。私があの小屋で心安らかになれないのと同じように。リードは周囲を見回し、屋根裏に目を向けてから、馬房の並びを見た。ダニーは、彼が若いころのことを、幸せな日々を思い出していることを願った。
 リードは彼女を見た。ダニーは目をそらした。辺りはひどく静かで、この人はあまりにも近くにいる。でも、たとえこれが深夜でなくても、すべてが夢でも、彼が暗闇の中半裸で立っていなくても、私は感じただろう。いつも感じるのだ。あの夜と同じ、体の奥底をひそやかだが激しく流れる性的な欲求を。あの夜は私たちを決して解放してくれそうにない。
「事務所に折りたたみベッドがある」
 ダニーは彼を見た。喉がからからだった。
「干し草よりは快適だよ。眠らないとね」彼の目に何ら下心はなかった。「さあ。僕が用意しよう」
 その声の優しさに、ダニーはふいにリードの唇の感触を思い出し、目をそらした。リードは彼女の視線が自分の後ろの子馬にそれるのを見て、誤解した。
「ソルスティスなら、大丈夫だよ」
 リードの手が自分のほうへ伸びるのを見ていなかったダニーは、彼の指が蝶のように軽く腕に触れた瞬間、びくりとした。リードは手を引っ込め、自分の腿にあてた。触れられた部分はやがて冷たくなった。だが彼女が落ち着かないのは変わらなかった。
 リードはまた手を上げたが、今度は彼女に触れなかった。「ソルスティスの身にもこの厩舎にいるほかの馬の身にも悪いことは何も起こらせない。人が何と言おうとね」
 リードはソルスティスの父馬に何があったのか話そうとはしなかった。兄についても同じだった。その必要はなかった。ダニーがその話を知っていることはお互いに承知していた。サラブレッド競馬界の人々をはじめ、多くが知る話だった。第一発見者になった彼はさぞ苦しかったことだろう。数分前のアステカトレジャーの息子の前でうなだれる姿を思い出し、五年の歳月が彼の記憶を和らげることはほとんどなかったのだとダニーは悟った。
「心配なんてしてません」ダニーは銀色に光る彼の瞳をまっすぐにのぞき込んだ。彼に何かしてあげられることがあれば……。彼女は微笑んだ。「ここにいられるなんて、ソルスティスはついています」言葉を切り、さらに言った。「私もここにいられて幸せです。ありがとうございます」彼女は息子のことを思いながら、心からの感謝を込めて言った。
 リードは彼女を見据えた。「だから夜さまようのかい?」抜け目ない笑顔だったが、冷たくはなかった。「幸せだから眠れないのかい?」
 ダニーは答えようとしたが、その思考をさえぎるかのように彼が片手を上げて、てのひらを広げた。


 *この続きは製品版でお楽しみください。

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