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プロジェクトX 挑戦者たち 壁を崩せ 不屈の闘志 カーナビ 迷宮を走破せよ

プロジェクトX 挑戦者たち 壁を崩せ 不屈の闘志 カーナビ 迷宮を走破せよ


発行: 日本放送出版協会
シリーズ: プロジェクトX 挑戦者たち
価格:100pt
形式:XMDF形式⇒詳細 
対応端末:パソコン ソニー“Reader”
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解説

 車が溢れる渋滞列島、日本。朝夕の通勤ラッシュ、帰省ラッシュ、長い行列に耐えるのがドライバーの宿命である。12年前、日本で画期的な製品が開発された。アメリカの軍事衛星GPSを利用したカーナビゲーション。初めての道でも裏道でも迷わない夢の機械である。
 開発に挑んだのは音響メーカーのパイオニア。当時、看板商品のカーステレオの売れ行きが伸び悩み、会社は新製品開発にもがいていた。その時、カーナビ開発を提案したのが畑野一良31歳。カーステレオ部署のエース企画マンだった。畑野は方向音痴。家族でドライブに行くと抜け道で迷った。車内は険悪なムードになった。「家族で楽しくドライブをしたい」。カーナビ開発は、ささやかな思いから始まった。
 川越工場の本橋実がカーナビ本体の開発を担当。技術研究所の清水敏彦が地図作りを担当。
 しかし、困難な壁が次々と立ちはだかった。GPS受信機は200万円。車本体よりも高かった。地図を映し出すコンピューターは、真夏の車内気温50度で壊れた。プロジェクトは完全に行き詰まった。
 そのとき、雪降る、北海道、旭川から、思わぬ援軍が駆けつけた。
 負け続けの男たちの、奇跡の逆転の物語をお伝えする。

目次

一 生き残りを懸けて
二 挫折を知る男たちが立ち上がった
三 完成目前、最大のピンチ
四 夢をかなえた男たち

抄録

一 生き残りを懸けて


迷宮・世田谷


 平成一五(二〇〇三)年一月。われわれ取材スタッフは、年明け早々、とんでもないことに巻き込まれていた。道に迷い、すでに一時間以上、同じ場所での行ったり来たりを繰り返していたのである。街の名は、東京・世田谷。都内屈指の高級住宅地。そのせいなのか、道沿いには、ただひたすら、見上げるような高い塀が続き、目印になるものは何もない。
 この日、何度目になるだろうか。広島出身のドライバーが急ブレーキを踏んだ。そして、怒りに満ちた声で叫んだ。
「また、同じ場所だ!」
 そこは、すでに三度、目にした小さな交差点だった。どの方向に進んでも、なぜか一〇分後には戻ってきてしまう不思議な交差点。何とか大通りに出ようと、左折や右折を繰り返してみるものの、最後には必ず、一方通行や通行止めの標識に行く手をさえぎられてしまう。すでに、自分たちが地図上のどこにいるのかすらわからない。
「一生、世田谷から出られないんじゃないか」
 そんな冗談を力なく言い合っていたときだった。交差点の向こう側から一台のタクシーがやって来たのが目に入った。
 スタッフ全員、まるで最初からそう決めていたかのように、車を降りて、駆け出した。そして、タクシーの窓を叩いた。
「お願いです。道を教えてください」
 みな、必死だった。タクシー運転手は、最初、そんなわれわれの様子に驚いたようだったが、道を聞かれることに慣れているのか、じつにわかりやすく大通りへの道を教えてくれると、にやりと笑って言った。
「世田谷はすごいところでしょう。うっかり入ってしまうと出られなくなっちゃうからね。本当に迷路そのものですよ。われわれ、タクシー運転手仲間では、『迷宮・世田谷』って呼んでいるくらいだからね」
 われわれは運転手に礼を言い、教えてもらった道をゆっくりと進んでいった。そのとき、「やっと出られる」という安心感とともに、タクシー運転手の言葉が脳裏によみがえってきた。
「迷宮・世田谷」。そして一四年前、この道に挑み、懸命にハンドルを握った男たちのことを思った。
 男たちは、中堅音響機器メーカーの社員、いつもライバルメーカーに先を越され、負けつづけてきた技術者や企画マンたちだった。社運を懸けた商品開発に取り組んでいた。
「カーナビゲーション」、通称「カーナビ」。最初から車に装着されているタイプではなく、あとから取り付け・取り外しができる、いわゆる「市販型」と呼ばれるものだった。方向音痴のドライバーにとって、地図上での現在地を指し示してくれるカーナビは、悲願の商品といってよかった。


悲願の商品


 男たちは、試作品の性能を試す場所として、ここ世田谷を選んだ。
 もしこの街で、迷わず運転できれば、その製品は全国どこでも使用に耐えうる――そう確信していた。
 しかし、開発は困難の連続となった。
 最初につくり上げた試作機は何と二〇〇万円以上、車本体よりも高かった。しかも、ディスプレーに電子地図を映し出すコンピュータが、炎天下の車内で焼けて壊れてしまう。
 男たちは、打開策を懸命に探し求めた。その間に、ライバルメーカーが猛烈な勢いで追い上げてきた。巨大自動車メーカーに、世界的な家電メーカー。自分たちとは比較にならない大企業だった。もし先に開発されてしまえば、否、販売力や宣伝力を考えれば、開発が同時であったにしても、男たちに勝ち目はなかった。生き残るためには、何が何でも、ライバルに先んじて開発し、販売を始めるしかなかった。
 男たちは繰り返し、繰り返し、自分たちのつくった試作品を手に、世田谷の「迷路」に闘いを挑んだ。あるときは、電子地図に、あるはずの道が表示されなかった。またあるときは、些細なことから男たちの間に軋轢(あつれき)が生じた。しかし、男たちは決して諦めず、ハンドルを握りつづけた。そして、その闘いは、一四年後のいま、技術者の間に語り継がれる伝説の物語となった。


二 挫折を知る男たちが立ち上がった


カーナビ開発前史


 物語の始まりは、昭和六一(一九八六)年にさかのぼる。
 この年、ある製品の将来性を予測し、業界を横断する形での大きなうねりが湧き起こっていた。製品の名は「カーナビゲーションシステム」。
 車内に電子地図を設置して、そこに現在地を表示し、その情報をもとに目的地まで誘導する。「現在、地図上のどこにいるのかわからない」という、道に迷ったときの最大の問題点を解決してくれる、ドライバー悲願の製品だった。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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