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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ヒストリカル

春を待つ騎士

春を待つ騎士


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ヒストリカル
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ジュリエット・ランドン(Juliet Landon)
 イギリス北部の古代の面影を残す村に、引退した科学者の夫とともに住む。美術や歴史に対する興味が旺盛で、豊かな想像力が生きると思い、ヒストリカルの小説を書き始めた。作品を執筆するために調べ物をするのはとても楽しいと語り、特に中世初期がお気に入りの時代だという。刺繍について豊富な知識と技術を身につけ、その腕前はプロとして講師を務めるほど。

解説

 ■長い冬のあいだ春を待ち続けた今、きみを可憐な桜草で飾ろう

 ■十四世紀なかばのイングランド――二年前に老齢の領主であった夫を亡くしたアレッタは、忠実な使用人たちの協力のもと、女手一つで荘園を管理していた。十五歳で嫁いで以来七年間、暴虐な夫から虐待を受けた彼女にとって、大変ではあっても、夢のように平和な日々といえた。その平安を打ち破るかのように、春の嵐が巻き起こる。長く不在だったという隣の荘園の領主、ジェロントが帰ってきたのだ。彼は初めて顔を合わせた瞬間から、アレッタを嘲り、挑発した。最初はアレッタの土地に、次いで荘園邸にも侵入し、彼女の心の中にまで横暴に踏み込んでくる。ジェロントがささいな弱みを突いて偽りの婚約を迫ってきたとき、アレッタは動揺を隠すことができなかった。わたしが過去の結婚に感じていた恐怖は、彼にはわからない。なぜ、ほうっておいてくれないの!

抄録

「サー・ジェロント、もう十分ではないこと? あなたが望むものがわからないわ。仕返しのつもりなら、もう気はすんだはずでしょう?」
 足がそっと地面に下ろされ、ようやく手の力がゆるんだ。アレッタはさっと正面を向いた。彼の気が変わらないうちに跳ね起きて逃げるのよ。だが立ち上がる前にジェロント卿が覆いかぶさり、彼女の両肩に腕をのせて全身で押さえつけた。アレッタはぎょっとして悲鳴をあげ、体を横へ傾けたが、彼の動きは敏捷だった。ジェロント卿の両肩を思いきり押したが、まるで身動きがとれず、勝負にならない。
 顔の真上、息がかかるほど近くに彼の顔がある。彼女の瞳の奧をのぞきこむ目ははしばみ色で、緑色の斑点が浮かび、黒いまつげに縁取られているが、その目は怒っているわけではなく、冷酷無惨でもなく、おもしろがっていた。
「さてと。本当にわたしの望むものがわからないなら、説明しなくてはなるまい。簡潔に」
 アレッタはその意味を悟った。「いいえ、お願いだからやめて」彼女はささやき、顔をそむけた。
「なぜ?」ジェロント卿の唇があごをかすめる。硬い唇の感触。そしてすぐ横に見える耳の上の黒髪。アレッタは目を閉じた。「なぜだ?」彼は引き下がらない。「怖いから? そうなのか?」彼女の暗い目の中の恐怖を見逃してはいなかったのだ。
 ええ、怖いわ。でも口には出さなかった。「いいえ、怖くないわ」そう耳もとで答える彼女の唇に、豊かに波打つ黒髪が触れた。男というのは汗臭く酸っぱいにおいのするものとばかり思っていたが、ジェロント卿の髪はさわやかな香りがして、つかの間アレッタは、自分の脚にそっと重なる彼の腿と、自分の胸に重なる彼の肩を感じることを我が身に許した。これはわたしが覚えているあの感じとは違う。怖いけれど、でもぞっとする恐怖ではない。
 ジェロント卿はつかんでいた両手を離し、彼女ののどに熱い指をあてて自分のほうへ向かせた。アレッタののどがひきつり、いっきに不安が広がるのがてのひらに伝わる。アレッタは身を震わせ、目を見開き、昔と同じ暴行を受けるのかと身構えた。やがて、ゆっくりと、彼の唇がじらすようにアレッタのあごの線をなぞり、彼女の口をふさいだ。その柔らかさにアレッタは驚き、ジェロント卿の指が髪の中へはい上がってきても微動だにせず、全身を駆け抜ける思いがけない興奮にうっとりとなった。
 熟練の技で、彼の唇はアレッタの反応をせがんだ──きみも参加するんだ、きみは与え、そしてわたしは奪う。数年の結婚生活の中で、アレッタはこんなふうにキスされたことはただの一度もなかった。優しく、そして休むことなく、ジェロント卿の唇は彼女の口の上を動きまわった。アレッタはその巧みな甘い誘惑に目を閉じ、抵抗する気力も失せ、時のたつのをすっかり忘れた。
 ようやく彼は顔を上げてアレッタを見た。その愛らしさ、さっき見せた怒りに隠された傷つきやすさ、愛の行為の喜びに対する不安と無知を目にして、つかの間満足感にひたった。彼女は優しさに触れたことが一度もないのだとジェロント卿は思いながら、アレッタが目を開け、そこに驚嘆の色が浮かぶのを見守った。
 彼はほほえみかけた。「さあ、アレッタ・マーケンフィールド、これでほぼおあいこだろう」
「これが罰金? わたしはもう自由の身なの?」
「罰金はまだ半分だ」
「お願い、この先は続けないで」
 ジェロント卿はふたたびほほえんだ。親指でそっとアレッタの唇に触れる彼の両肩が、彼女の手の下で硬く盛り上がった。「きみはそう思ってはいない。続けてほしいと思っている」
 熱い興奮のうねりがアレッタの下腹部から太腿にどっと流れると同時に、彼がふたたび顔を寄せた。
 彼女の両手が自分の肩をはいまわり、ぎゅっとつかむのを感じながら、ジェロント卿は片手をアレッタの下に滑りこませ、草の上に弓なりになった背中の曲線をなでた。重ねた唇の下から彼女の悲鳴があがり、その体がこわばって、やがてまたゆるむのを感じる。彼の要求に、アレッタはまたしても我を失ったのだ。
 ずっと長いこと抑圧してきた肉体の欲求が、キスの中へあふれ出した。寂しさと絶望と虐待の中で過ごした数年間、その痛み、傷、孤独、渇きのすべてが、ジェロント卿の引きしまった体と木立と春の日差しの下でいっぺんに噴き出した。
 キスはいつまでも続いた。彼はアレッタがキスを返してきてもたじろがず、それはすでにあった予感を裏づけるものにすぎなかった。だからといって彼はこの機に乗ずるつもりはなかった。いま、この場所で、これ以上先へ進むべきではない。
 ふいにアレッタは耐えられなくなり、うめき声は静かなすすり泣きに変わった。と同時に、彼女は唇を引き離し、顔をそむけた。土手の下で赤の他人に、敵である隣人に、体で罰金を払うなんて。いままで繰り返し自分に言い聞かせてきたのに。男の人はもうたくさん。二度とごめんだと。
 アレッタはジェロント卿を押し返し、顔をそむけて言った。「もう自由にして。罰金は払ったわ。放して!」
「わたしが納得したらな」
「お願い!」必死の形相で彼と向き合う。「お願い、すぐに戻らないとみんなが探しに来るわ。もう行かなければ。サー・ジェロント。お願い!」


 *この続きは製品版でお楽しみください。

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