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友達警察 上

友達警察 上


発行: キリック
シリーズ: 友達警察
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆3
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解説

 世界的な大不況で国家財政が破綻し、無政府状態の〈暗黒時代〉を迎えた日本が、復興を果たすべく導入した「友達ポイント制度」──それは、国民を団結させるために生まれた友情主義に基づき、社会生活の中で何より「友情」や「愛情」を大切にするよう、十年前に新政府が導入した法律だった。国の管理下にある携帯端末で、相手と互いに「友達登録」をすると、政府公認の友達同士となり、新規の友達をつくったり友達とコミュニケーションを重ね友情を深めていくごとに、友達ポイントとして加算されてく。そして、そのポイントが高い国民は、食料品の値引きから進学や就職先まで、社会生活のあらゆる面で優遇された。逆に、二十五歳を過ぎて友達ポイントが0になると、社会不適合者として「施設」に送られてしまう。だから国民はみな友達ポイントを稼ぐのに必死だった。そんな中、高校に入学して一ヶ月も経つというのに、八神瞭一にはまだ一人も友達がいなかった。引っ込み思案な性格もあるが、瞭一はそもそも友達ポイント制度に疑問を抱いていた。しかし、それを公然と批判することはできない。そんなことをすれば、反友達主義者の烙印を押され、やはり「施設」行きになるからだ。警察とは別の治安組織である友情省警保局──通称「友達警察」によって。だがある日、同級生の心ない一言に思わず、友達ポイント制への批判を口にしてしまう瞭一。教室内に緊張が走る。と、女生徒の一人が瞭一に近づいてきて告げた「私と友達になりましょう」。それは、以前から友達ポイント制への批判を公言してはばからない問題児、北崎雪乃だった。才色兼備の美少女だが、みな面倒事をおそれ敬遠しているせいか、彼女も友達は一人もいない。瞭一は少しためらいつつも雪乃と友達登録をした。それが自分の運命を大きく変えることになるとも知らずに……。

『友達ー♪  友達ー♪  友達たくさん、つくろうねー♪』間の抜けた歌を響かせて、「施設」送りにするために、友達警察がやってくる……本物の友情とは何かを問いかける、近未来モダンホラー前編!

抄録

 友達警察の車両は、一見するとほのぼのとした感じに見える。
 基本的には白い塗装で、外部には虹や仲よく手をつなぐ子供たちが描かれている。青い鳥が、空を飛ぶ様子もデフォルメされていた。
 だが、あたりの人間は緊張している。車両そのものの構造が、実は装甲車に近いのだ。
 後部のドアが開かれると、そこから何人もの白い制服をまとった男女が現れた。
 みな体格がよくあきらかに格闘訓練をうけている。防弾ジャケットに身を包み、ヘルメットまでかぶったその姿は、もはや警察官というよりは軍人に近かった。
『みなさま、お騒がせしてまことに申し訳ありません。我々は、友情省警保局の職員です。現在、対象者を確保するための公務を執行しております』
 拡声器から声が流れた。
『公務の執行を妨害したものは、それだけで施設に連行される場合もありますので、ご注意ください。市民のみなさまのご協力をお願いいたします』
 鳥肌が勝手に立ってくる。体じゅうが縮み上がるような感覚にとらわれる。
 いまの日本人であれば、誰であれ「友達警察」の恐ろしさは知っている。
 いかつい白い制服をまとった男女は、警棒を手にしていた。この棒には高圧電流で相手を感電させる機能があったはずだ。
 何人もの友達警察の職員たちは、半円形になってベンチに座った老人に迫っていった。
 足がすくむ。これから老人は「施設」に連れていかれる。
 もう運命は確定した。施設の内部でなにが起きているのかは知らないが、老人にとってはおそらく過酷な生活が待ちうけているだろう。下手をすると、施設内でそのまま処刑されるかもしれない。
 とはいえ、相手は友達警察だ。友情省で最も力を持つ相手なのだ。
 どうしようもない。
「いいんだ」
 申し訳なさそうな顔をしている瞭一を見て、老人が笑った。
「こうなることは……わかっていた。かまわないよ。覚悟はできている」
 老人の手が震えているのを、瞭一は見逃さなかった。こちらにきっと気をつかってくれているのだろう。
 だが、老人はいま卒倒しそうなほどの恐怖に襲われているはずだ。
「素晴らしい心がけです」
 友達警察のリーダーらしい男が冷静な口調で言った。
「ご安心ください。『施設』は外の世界で言われているほどひどい場所ではありませんので。衣食住が保証されているという意味ではむしろ一般の世界より暮らしやすいといってもいいでしよう」
 嘘だ。そんなことはみんな知っている。しかし相手が悪すぎた。
 そのときだった。
「やめなさい」
 雪乃が、低い、怒りのこもった声で言った。
 あまりにも意外な事態に、なにが起きているのか瞭一はおろか友達警察の職員たちでさえ困惑していた。なにしろ一介の女子高生が、国家権力の象徴である友達警察の人間に命令したのだ。
「お嬢さん……君は自分がなにを言っているのかわかっているのかな」
 リーダーらしい男が苦笑した。
「私たちは公務を執行中だ。それを妨害すると最悪、君も施設行きということになるんだがね」
 そのとおりだ。雪乃は普通ではないとは感じていたが、まさかここまでとは思わなかった。
 およそ正気の沙汰ではない。
 一人の友達警察の職員が、リーダーらしい男に耳打ちをした。するとリーダー格の男が驚きの表情を浮かべ、そしてにやりと笑った。
「はは、なるほど、そういうことか……君があの有名な……」
 有名? 
 北崎雪乃は友達警察の間でも有名人だというのだろうか。
 わけがわからず、瞭一は呆然となりゆきを見守ることしかできなかった。
「しかしね、お嬢さん。世の中にはルールというものがあるんだ。いくら君でもルールを破ることはできない」
 友達警察の職員が冷徹に告げた。
「あまりこれ以上、馬鹿なことをやっていると、いずれお父上にもご迷惑がかかるかもしれないよ」
 その瞬間、雪乃の顔が紅潮し、怒りに歪められた。お父上、という言葉に反応したとしか思えない。
 そういえば、先ほども家族のことを訊かれて雪乃は不機嫌になった。父親との間になにかあるのだろうか。
 その間に友達警察の職員たちは、無抵抗な老人にむかって警棒を振り下ろした。
「うあっ」
 さらに電流まで流したらしい。老人の体が激しく震えた。
「おいおい。相手は無抵抗なんだ。あまりやりすぎないようにな」
 リーダーらしい男があきれたように命じた。
「しかし一応、規定どおりの処置です」
「臨機応変、という言葉を知らんのか? これでこのじいさんがぽっくり逝ったりすれば、始末書ものだぞ。手間が増える」
 彼らはまったく、老人のことなど心配していないようだ。強烈な電撃を浴びせられたせいか、老人の口から泡が噴き出している。両目とも白目をむいていた。
 いくらなんでも、ひどすぎる。
 激しい怒りがこみ上げてくる。だが、友達警察の職員の冷ややかな目を見ただけで、そんなものはすぐに雲散霧消してしまった。
 怖い。
 彼らは国家を背負っている。それに、相手はプロなのだ。戦って勝てる相手ではない。
 手慣れた仕草でストレッチャーを運んでくると、友達警察の人間たちは老人をその上に乗せた。かたわらでは、雪乃が歯噛みしている。非力な自分に対して怒っているのだろう。
 しかしこれは仕方のないことなのだ。
 老人の体が友達警察の車両のなかに運ばれていく。職員たちも俊敏な動きで、車内に戻っていった。
『公務は無事、執行されました。みなさまにご迷惑をおかけして、まことに申し訳ありません』
 再び拡声器からあのふざけた歌が流れはじめた。

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