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和書>小説・ノンフィクションハーレクインシルエット・スペシャル・エディション

カナダ傷心旅行

カナダ傷心旅行


発行: ハーレクイン
シリーズ: シルエット・スペシャル・エディション
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 マリー・フェラレーラ(Marie Ferrarella)
 ヨーロッパに生まれ、ニューヨークで育った。現在は南カリフォルニア在住。USAトゥデイ紙のベストセラー・リストの常連で、アメリカ・ロマンス作家協会のRITA賞の受賞歴も持つ。これまで百五十作を超える作品を発表し、マリー・ニコールの名でも執筆。世界中の多くの読者から支持を得ている。

解説

 ■彼はモデルにしたいような騎馬警官。なのに、なぜ孤独に暮らす人間嫌いなの?

 ■「あの人よ! 彼にしてください」ジュディは騎馬警察隊の隊長に向かって叫んだ。さっき、ハイウェーで彼女にスピード違反の切符を切った警官だ。フォトジャーナリストのジュディは、騎馬警官を取材するために、カナダの北の果て、ノースウェストの小さな町までやってきた。この地を訪れたとたん、夏を前にしたすばらしい自然に魅せられ、そこで働く騎馬警官の姿を早く撮りたくてうずうずしていた。ジュディは町の警察隊の支部で見つけたその警官を、さっそくモデルにしたいと隊長に頼み込んだ。違反切符を切る間も、不愛想で、見るからに不機嫌そうな顔をしていた彼に、持ち前の好奇心が刺激されたのだ。あんな人でもほほえむことがあるのかしら? 彼が見かけどおりの、こわもての警官かどうか確かめてみよう。だが、当のポール・モンローは優秀な警官ではあったが、同僚の誰とも付き合わず、町から離れた一軒家に暮らす孤独な男。ジュディがどんなに陽気に話しかけても、決して心を許そうとしない、頑固この上ない男だった……。

抄録

 ジュディは彼の顔を見返した。彼が気の毒でならなかった。「人生が楽しいからよ」
 利口な人間の吐く言葉じゃないな。陳腐なカードに書かれていそうな台詞だ。「人生は苦難の連続だ。そして、最後は死で終わるんだ」
 なんてことかしら。この人は誰かに人生を踏みにじられ、心をずたずたにされたんだわ。ジュディは彼の腕に手を置いた。「大切なのは始まりと終わりの間に何があるかよ。一日を生きること。人の力になれること。あなたは騎馬警官よ。みんなに頼られる存在だわ。あなたは世の中を少しずつ変えているの。世の中の力になってるのよ」
 世の中を変えている? そんな考えはとっくに捨ててしまった。「それは子供の本に出てくる警官の説明だ」
「だからって、ばかにしたものじゃないわ」どうすればこの人の心を開けるの? 鍵はどこにあるの?「子供は大人よりも確かな目を持ってるのよ。物事の本質を見抜く目を」
 そんな話、彼女は本気で信じてるんだろうか? 「子供に何がわかる?」
 ジュディは今日助けた少年のことを考えた。遊んでいた子供たちの明るい顔を思い返した。あの子たちは純真だけど、ちゃんと世界を理解しているわ。あの子たちなりの理解力で。そして、人生を楽しんでいるわ。「わかってると思うわ」彼女は穏やかに言った。「もしかしたら、私たちよりずっと」
 ポールは歯を食いしばり、ゆっくりと息を吐いた。この女は救いようがない。「君の風船は地面に落ちないようにできてるのか?」
 ジュディは笑い、ひるむことなく答えた。「落ちかけたことなら何度かあるわ。でも、緊急の事態に備えて、つぎ当て用の布を持ってるから」
 この調子では、いくら考えの甘さを指摘しようとしても無駄だ。彼女はなんでも裏返しに取ってしまう。ネガフィルムを見慣れているせいだろうか。
「緊急事態といえば、まだ助けてもらったお礼を言ってなかったわね」
 ポールは肩をすくめた。「職務上、助けただけだ。死亡事故となると、面倒な報告書がいるからな」
 ジュディは胸の前で手を組み合わせ、おおげさにまつげをしばたたいた。「昔からの夢だったのよ。面倒が嫌いな騎馬警官に助けてもらうのが」そう言って、おかしそうに笑った。岩場を流れる澄んだ水のような、涼しげな笑い声だった。
 彼女は衝動的にポールのジャケットをつかみ、爪先立って頬にキスをした。再び踵を地面に戻した時、彼女の口元からは笑みが消えていた。
 二人は初対面の人間同士のように互いを見つめ合った。その瞬間、雪もレイモンドもカメラも存在を忘れ去られた。存在しているのは、彼らが立っている狭い空間だけだった。ジュディは激しく胸を高鳴らせながら、もう一度、背伸びをした。青い瞳を見つめながら、ポールの唇に自分の唇を近づけた。
 何をやってるんだ? ポールは自問した。さっさと背中を向けて、スノーモービルを移動させろ。おまえはトラブルを見分ける訓練を受けたプロだろ う? この青いパーカを着た女は間違いなくトラブルのもとだ。分別を働かせろ。
 だが、彼の体ではじけた衝動は、訓練の成果も分別も吹き飛ばしてしまった。
 ポールはいきなり彼女の顔をとらえて唇を重ねた。優しさもためらいもなかった。あるのは彼を突き動かしている激しい力と情熱だけだった。それに欲望もあった。長い呪縛から突如として解き放たれた、怪物のような欲望が。
 ジュディは支えを求めて彼の首に両腕を回した。ポールは手袋を脱ぎ捨てた。分厚い防寒着を通してでもいいから、彼女を肌で感じたかった。ポールは彼女を抱き寄せ、その背中に手を這わせた。痛いほどうずいている欲望を制御できなかった。
 彼のキスはジュディの予想をはるかに超えたものだった。彼の中に情熱が潜んでいることは薄々感じていた。だが、遠慮がちなつかみどころのない欲望をイメージしていた。頭が真っ白になるほどの激しさまでは予想していなかった。
 キスは始まりと同じ唐突さで終わった。ポールは怖くなった。これからの展開が。体の中で騒ぐ欲望が。自分自身が。悪夢から目覚めた時のように、彼の息はひどく乱れていた。
 命綱を伝い下りる生存者のように、ジュディは彼のジャケットの隙間に手を這わせながら、ゆっくりと踵をついた。「私、その、レイモンドの様子を見てくるわ」
 ポールはもう一度彼女を抱き締めてキスしたかった。いつまでも彼女の中に溺れていたかった。
 だが、それができないことはわかっている。彼は肩を怒らせ、厳しい表情になった。「そうだな」
 彼は背中を向け、スノーモービルに歩み寄った。かろうじて地雷原をくぐり抜けた男の心境だった。
 なんてばかな真似をしたんだ。ポールは自分の弱さをののしった。自分にも夢を抱いていた‘うぶ’な時期があったことを思い出させた彼女を恨んだ。父親とともに育んだ夢。だが、それは現実を知る前の話だ。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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