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イタリア紀行(下)

イタリア紀行(下)

著: ゲーテ
発行: グーテンベルク21
シリーズ: イタリア紀行
価格:840円(税込)
10ポイント還元
形式:テキスト形式⇒詳細
対応端末:パソコン 
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著者プロフィール

 ゲーテ(1749〜1832)
 父は帝室顧問官、母は同市市長の娘という夫婦の裕福な市民の長男として、1749年に生まれる。ストラスブール大学で法律の勉強をしながら、最初の大作『ゲッツ・フォン・ベルリヒンゲン』の構想を練たものと考えられている。弁護士の修行をしながらも、彼の情熱は恋愛と創作の方に注がれていった。<ドイツに起こった、因習や伝統を否定し個性と意欲と自然を尊重する文学運動>の旗手としてドイツのみならず外国でも有名となる。
 代表作に『若きヴェルテルの悩み』『修業時代』『ファウスト』『詩と真実』『イタリア紀行』などがある。
 死に際して「さ、よろい扉をあけておくれ、もっと光を。・・・もっと光を」とつぶやき、ワイマールで82歳の生涯を終えた。

解説

 ローマへの憧れはゲーテにとっては一種の熱病であった。「第二次ローマ滞在」で発見したローマは「歳月に移りゆくローマ」ではなく、「永続するローマ」であった。ゲーテはそこに自己の理想を投影し、「土地に深く根をおろした生活の報告」を卓抜した筆致で書きつづる。「イタリア紀行」発表後、十年の歳月を経て、ゲーテが世を去る二年前に公刊された続編。

目次

 ナポリ


第二次ローマ滞在


 六月
  ティッシュバインからゲーテへ
 七月
  煩わしい自然観察
 八月
 九月
 十月
 十一月
 十二月
  語源学者としてのモーリッツ
  ユーモアのある聖者フィリッポ・ネーリ
 一月
  アルカディア協会への入会
  ローマの謝肉祭
 二月
 三月
  美の造形的模倣について
 四月


解説

抄録

 フラスカテイにて、一七八七年九月二十八日
 ぼくは当地でひじょうに幸福である。一日じゅう夜になるまで、写生をし、彩色をほどこし、墨で描き、のりづけをし、手芸、美術がじつに職業的になされている。宿の主人である顧問官ライフェンシュタインが相手をしてくれ、ぼくたちは快活に楽しくやっている。晩には月光をあびながらほうぼうの別荘を訪れ、闇のなかでさえも奇抜な画題が写しとられる。二、三の画題はぼくたちが探しだしたものだが、ぼくはそれをぜひとも仕上げたいと思っている。その完成の時期のくるのをぼくは願っている。高きを望めば、完成はきりもなく遠いところにある。昨日ぼくたちはアルバーノへ馬車で行き、また戻ってきた。その途中でもあたりの風景をたくさんすばやく写しとった。充実のさなかにある当地では何かしら楽しむことができ、ぼくもまたすべてをわがものにしようとの情熱のために燃えている。そしてぼくの魂がより多くの対象を把握する程度に応じて、ぼくの趣味が純化されるのを感じている。ただ、すべてこれらの言説の代りに、一度何か立派な作品を送ることさえできればいいのだが! 二、三の小品を、ある同国人に託して君たちにあてて発送する。
 おそらくカイザーにはローマで会えるだろう。そうなると、音楽までもぼくの仲間に加わることになり、いろいろな芸術がぼくの周囲に描く系列を完成することになる。まるでそれらは、ぼくが友人たちのために気を配るのを妨げようとしているかのようだ。しかし、ぼくがどれほど孤独に感ずることがままあることか、また君たちのもとにありたいという憧憬がどれほどぼくの心をとらえることか、といった問題はふれるにしのびないのだ。ぼくはつまるところ陶酔のなかに生きてゆく人間で、それ以上のことは考えたくもないし考えることもできない。
 モーリッツとはじつに有益な時間を過ごしている。彼にぼくの植物体系を説明しては、そのたびに、ぼくたちがどの程度まで達したかを、彼のいる前で記録にとることをはじめた。こういうやり方でのみ、ぼくは自分の思考の一端を紙面に書き記すことができた。この考え方の最も抽象的な点さえも、それが正しい方法で報告され、相手の心が準備されている場合には、いかに理解されやすいものとなるかを、この新しい弟子によって悟ることができる。彼はそれに大きな喜びをいだき、いつも自ら推論を下しながら先へ進んでゆく。しかしいずれにせよ書き記すことは困難であり、たとえすべてが厳密に明確に書かれたとしても、ただ読むだけで理解することは不可能である。
 このようにしてぼくは、わが父の家にいるがゆえに、幸福に暮している。それをぼくに恵み、直接間接にぼくを助け、奨励し維持してくれるすべての人びとによろしく伝えてくれたまえ!

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