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著者プロフィール
清水 義範(しみず よしのり)
昭和22年10月28日名古屋市生まれ。愛知教育大在学中より「宇宙塵」等に作品を発表。卒業後、半村良氏に師事して上京。10年のサラリーマン生活の後、執筆活動に専念。88年『国語入試問題必勝法』で吉川英治文学新人賞受賞。奇抜な発想とユーモアを駆使した作品を次々と発表。SF、ミステリー、エッセイなど著書多数。
昭和22年10月28日名古屋市生まれ。愛知教育大在学中より「宇宙塵」等に作品を発表。卒業後、半村良氏に師事して上京。10年のサラリーマン生活の後、執筆活動に専念。88年『国語入試問題必勝法』で吉川英治文学新人賞受賞。奇抜な発想とユーモアを駆使した作品を次々と発表。SF、ミステリー、エッセイなど著書多数。
解説
光の国の若き王ジャン・ランドルフィは、様々な苦難を乗り越え、ついに冥海の神獣島で神授冠を手に入れた。
再び世界に平和がおとずれるかと思われたが、隻眼の魔術師ショーレムに操られた軍勢が風の国と草の国に進行したのである。
新たに旅に出たランドルフィだったが、大魔術師ダークマリオンの出現に至り、さしもの野生王も重大な危機に直面する!
清水義範が描く、壮大な長編ファンタジー、第四弾。
再び世界に平和がおとずれるかと思われたが、隻眼の魔術師ショーレムに操られた軍勢が風の国と草の国に進行したのである。
新たに旅に出たランドルフィだったが、大魔術師ダークマリオンの出現に至り、さしもの野生王も重大な危機に直面する!
清水義範が描く、壮大な長編ファンタジー、第四弾。
目次
第一章 祝典と悲報と
第二章 泥兵団の潰滅(かいめつ)
第三章 飛竜の出現
第四章 誘拐(ゆうかい)された女王
第五章 荊棘(いばら)の丘の怪鳥
第六章 風の国での再会
第七章 空中の大決戦
第八章 森の国へ
第九章 邪悪の大王
第十章 迷宮の邂逅(かいこう)
第二章 泥兵団の潰滅(かいめつ)
第三章 飛竜の出現
第四章 誘拐(ゆうかい)された女王
第五章 荊棘(いばら)の丘の怪鳥
第六章 風の国での再会
第七章 空中の大決戦
第八章 森の国へ
第九章 邪悪の大王
第十章 迷宮の邂逅(かいこう)
抄録
「聖金剛石の秘力、破られたり」
木の上で様子を見ていたショーレムが嬉しそうにそう言った。
右手で魔の水晶を差し上げたダークマリンは、その左手をランドルフィの方に差し向けた。
聖石の秘力を苦もなく遮られて焦ったランドルフィは、更に念を強めて、怪物消え失せろと精神を集中した。しかし、聖金剛石の発する光線は六角形の壁に虚しく撥ね返されるばかり。
ダークマリオンの左手の先から、もやもやと黒い煙のようなものが吐き出され、それはするすると前方に漂うように進んでくる。黒い煙は空中を意志あるもののように流れて、やがて、ランドルフィの体に達した。
その黒煙が、野性王の体にゆっくりとまとわりついて、黒く包み込んでいくのであった。
「うぐ」
ランドルフィの顔に苦悶(くもん)の表情が表れた。そしてその光景を、地面に横たわる二人の豪傑と、従者ゲロルフは驚愕のうちに目撃した。そうしてる間にも、ランドルフィを包み込む黒い煙のような気配はますます濃くなっていき、その姿が見分けにくくなっていく。
この時、決死の働きをみせたのは忠誠の従者ゲロルフであった。その大男は、主人危うしと見て、敵の本体に多少なりとも打撃を加えなければならんと考えたのであった。秘力を尽くして戦っている最中ならば、一方に隙もあるだろうと思ったのである。
ゲロルフは手斧を振り上げてダークマリオンに襲いかかっていった。それは熊が人を襲うかのように猛々しい攻撃であった。
右手を差し上げ、左手でランドルフィに黒い霞を吐きかけているダークマリオンは、身動きもならずただ立ち尽くすのみ。
うまいぞ、と地面に倒れていたウルフは思った。今ならばこの怪物に打撃を加えることができるかも知れぬ。
しかしその時、ダークマリオンはわずかに首をひねって、襲いくるゲロルフの方に目を向けたのであった。そしてその目が、カッと見開かれたと思うや、赤い光を発したのだった。
その赤い光は、ゲロルフの巨体をあますところなく照らした。すると彼の体は、斧を振り上げ、駆け寄らんとするその姿勢のまま、ピタリと静止してしまったのである。
そして、その手からぽろりと手斧が落ちた。奇妙な姿勢のまま、ゲロルフの顔には恐怖の色が広がった。
その次に起こったことは、ウルフもフェンテスも、想像だにできなかった怪異であった。二人はそれを見て、息もつげぬほどに驚いた。
ゲロルフの体が、みるみる全身灰色に変わっていくのである。衣服も肉も髪も、何の区別もなく灰色になっていく。すなわち、忠誠の従者の体は石になってしまったのである。
魔物の目から発せられた赤い光がすっと消えた。そしてその時には、ゲロルフであった人間の姿はもうなく、そこには人の形をした一個の岩が立っていたのである。
ダークマリオンの左手の先からはまだ黒い気配が吐き出され続けていた。それはまっすぐランドルフィの方に伸び、王の体を闇の中に包み込んでいた。その闇の中に人がいるということがもう見分けられなくなってしまった。
そこで、それまで黒い霞を突き破って発せられていた聖金剛石の出す白光が、不意に消えてしまった。ランドルフィは完全に闇に包まれたのである。
ダークマリオンは左手をすっと持ち上げて、上空を指し示した。すると、闇はゆっくりと上昇していき、ぐんぐん小さくなっていった。
王が連れ去られる、とフェンテスは空を見上げて思った。闇に包まれ、どこかへ運び去られてしまうのだ。おそらくそれは、一度入ったが最後、二度と出られぬという迷宮の森の中へであろう。
ランドルフィを包んだ闇は、天を翔(か)けてやがて完全に見えなくなってしまった。人が一人消え失せてしまったのである。
ダークマリオンは術を使うのをやめた。両手をゆったりと下げる。透明の壁も、黒い煙も消滅した。そして、その顔に氷のような冷たい微笑を浮かべた次の瞬間、邪悪の王自体も、ぱっとかき消えたのである。たった今までそいつがいた空間には、ただ夕闇が広がるだけであった。
木の上の魔術師ショーレムは満足そうに笑うと、突然鴉の姿になった。そして、バサバサと翼をはためかすと、空へ飛び上がったのであった。しばらく嬉しそうに飛び回っていたその鳥は、やがて天の彼方へと飛び去っていった。
木の上で様子を見ていたショーレムが嬉しそうにそう言った。
右手で魔の水晶を差し上げたダークマリンは、その左手をランドルフィの方に差し向けた。
聖石の秘力を苦もなく遮られて焦ったランドルフィは、更に念を強めて、怪物消え失せろと精神を集中した。しかし、聖金剛石の発する光線は六角形の壁に虚しく撥ね返されるばかり。
ダークマリオンの左手の先から、もやもやと黒い煙のようなものが吐き出され、それはするすると前方に漂うように進んでくる。黒い煙は空中を意志あるもののように流れて、やがて、ランドルフィの体に達した。
その黒煙が、野性王の体にゆっくりとまとわりついて、黒く包み込んでいくのであった。
「うぐ」
ランドルフィの顔に苦悶(くもん)の表情が表れた。そしてその光景を、地面に横たわる二人の豪傑と、従者ゲロルフは驚愕のうちに目撃した。そうしてる間にも、ランドルフィを包み込む黒い煙のような気配はますます濃くなっていき、その姿が見分けにくくなっていく。
この時、決死の働きをみせたのは忠誠の従者ゲロルフであった。その大男は、主人危うしと見て、敵の本体に多少なりとも打撃を加えなければならんと考えたのであった。秘力を尽くして戦っている最中ならば、一方に隙もあるだろうと思ったのである。
ゲロルフは手斧を振り上げてダークマリオンに襲いかかっていった。それは熊が人を襲うかのように猛々しい攻撃であった。
右手を差し上げ、左手でランドルフィに黒い霞を吐きかけているダークマリオンは、身動きもならずただ立ち尽くすのみ。
うまいぞ、と地面に倒れていたウルフは思った。今ならばこの怪物に打撃を加えることができるかも知れぬ。
しかしその時、ダークマリオンはわずかに首をひねって、襲いくるゲロルフの方に目を向けたのであった。そしてその目が、カッと見開かれたと思うや、赤い光を発したのだった。
その赤い光は、ゲロルフの巨体をあますところなく照らした。すると彼の体は、斧を振り上げ、駆け寄らんとするその姿勢のまま、ピタリと静止してしまったのである。
そして、その手からぽろりと手斧が落ちた。奇妙な姿勢のまま、ゲロルフの顔には恐怖の色が広がった。
その次に起こったことは、ウルフもフェンテスも、想像だにできなかった怪異であった。二人はそれを見て、息もつげぬほどに驚いた。
ゲロルフの体が、みるみる全身灰色に変わっていくのである。衣服も肉も髪も、何の区別もなく灰色になっていく。すなわち、忠誠の従者の体は石になってしまったのである。
魔物の目から発せられた赤い光がすっと消えた。そしてその時には、ゲロルフであった人間の姿はもうなく、そこには人の形をした一個の岩が立っていたのである。
ダークマリオンの左手の先からはまだ黒い気配が吐き出され続けていた。それはまっすぐランドルフィの方に伸び、王の体を闇の中に包み込んでいた。その闇の中に人がいるということがもう見分けられなくなってしまった。
そこで、それまで黒い霞を突き破って発せられていた聖金剛石の出す白光が、不意に消えてしまった。ランドルフィは完全に闇に包まれたのである。
ダークマリオンは左手をすっと持ち上げて、上空を指し示した。すると、闇はゆっくりと上昇していき、ぐんぐん小さくなっていった。
王が連れ去られる、とフェンテスは空を見上げて思った。闇に包まれ、どこかへ運び去られてしまうのだ。おそらくそれは、一度入ったが最後、二度と出られぬという迷宮の森の中へであろう。
ランドルフィを包んだ闇は、天を翔(か)けてやがて完全に見えなくなってしまった。人が一人消え失せてしまったのである。
ダークマリオンは術を使うのをやめた。両手をゆったりと下げる。透明の壁も、黒い煙も消滅した。そして、その顔に氷のような冷たい微笑を浮かべた次の瞬間、邪悪の王自体も、ぱっとかき消えたのである。たった今までそいつがいた空間には、ただ夕闇が広がるだけであった。
木の上の魔術師ショーレムは満足そうに笑うと、突然鴉の姿になった。そして、バサバサと翼をはためかすと、空へ飛び上がったのであった。しばらく嬉しそうに飛び回っていたその鳥は、やがて天の彼方へと飛び去っていった。
本の情報
紙書籍初版: 1986/3/31
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