マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ロマンス

愛を止めないで

愛を止めないで


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 未評価
◆レビューを書く

¥0サンプル
XMDFのファイルをご覧になるにはブンコビューア最新版(無料)をインストールしてください。

「書籍ファイルが壊れています」と表示される場合は、ブンコビューアを最新版にアップデートしてください。
購入する


著者プロフィール

 ダフネ・クレア(Daphne Clair)
 イギリス生まれ、ニュージーランド在住。五人の子供たちはみな独立し、現在はオランダ人の夫とともに暮らしている。ノンフィクションや詩、短編小説も発表。幅広いジャンルで活躍している。

解説

 モザイク画を専門にしている美術家のリアノンは、ふだんは絶対に使わないエレベーターに乗った。タイルのつまった重い箱を抱えていたからだ。だがエレベーターに乗り合わせた男性から、手伝おうかと言われた瞬間、身を震わせてバランスを崩してしまう。落とした箱を拾い、車で送ろうと申し出る彼を無視して、リアノンはその場から走り去った。数日後、偶然再会したとき、彼は自分の会社のホールをモザイク画で飾りたいと申し出る。いったい彼の目的は何? リアノンはただ不安におののいた。

抄録

 リアノンはカップを置いて立ちあがった。「必要ないわ。まず見積もりを出します」
 ガブリエルは身じろぎもせず、しばらく紙とペンを見つめていた。それから顔を上げ、怖いほどよそよそしく言った。「きみの好きなように」
 二人の視線がぶつかり合った。
 テーブルから一歩離れ、おろおろと両手を握り合わせていたリアノンは、ついに心を決め、手を離した。「ごめんなさい」
 彼の口が一瞬ゆがみ、それから表情がやわらいだ。「いいんだ。ぼくも謝るよ。きみを困らせたりしてはいけなかった。いつもはこんなに不器用じゃないんだけど」
「不器用ではありません」あまりに洗練されていて、察しがよすぎるくらいだわ。男女関係で困った経験は、彼のほうがはるかに多いはず。
 ガブリエルの片方の眉が上がった。「ありがとう。今後は今のきみの言葉に沿うよう努力するよ」口もとがほころぶ。「ぼくはきみといるのが楽しいんだ。もっと頻繁にきみと会いたい、きみのことを知りたい。もちろん、きみは違うだろうけど……」
 この人を拒むことはできる。でもそうしたら、この人は去っていく……そうでしょう?
 ガブリエルが自分の人生から去ってしまうと思ったとたん、リアノンは恐ろしさに喉を締めつけられた。彼女は心の奥底で、二度と訪れることのない機会を逃しかけているのを知っていた。
 しばし沈黙が続いたあと、ガブリエルがきりだした。「ぼくが嫌いなら、今、そう言ってくれ」
 リアノンはなんとか笑みを浮かべ、懸命に言った。「嫌いじゃないわ」声が低くかすれる。
 ガブリエルの顔が明るくなった。「本当かい?」彼はデスクをまわりこんだ。しかし、そこで立ち止まってデスクに腰を預け、腕を組んだ。「それなら、どういうことなのかな、リアノン?」
 彼女の視線は壁にかかったこのビルのスケッチの上をさまよった。「私、苦手なの……おつき合いが」
「ひどい経験をしたのかい? 一度ならず?」
 リアノンは勇気を出して彼を見た。だが、それはほんの一瞬だった。「男の人に……あまり関心がないだけ」
 ガブリエルは疑わしげだ。「きみはきれいな人だ。つき合った男性がいたはずだ……少なくとも男性は真剣につき合いたいと思ったはずだ」
 リアノンは片方の肩をぴくりと上げた。「事業を興すだけで精いっぱいだったわ」
「それなら、ぼくに関心はあるかい?」
 これは決定的な瞬間だと感じ、リアノンの顔から血の気が引いた。悪いことが起こりそうな予感と、今ではなじみになった興奮物質《アドレナリン》の勢いにめまいがする。「あなたが……好きよ」
「好き?」彼は眉を跳ねあげ、それから笑いだした。
 うぶな女だと思ったのね。でも、これが私にとって精いっぱいだということが彼にはわからない。リアノンはきっと顔を上げ、挑むような目を向けた。
 笑い声がやんだ。ガブリエルが真剣な目で見つめ返す。そして手を差しだした。「おいで」
 リアノンは喉をごくりとさせた。目をみはりながらも、唇が開いてしまう。
 彼は私に行動を求めている。一瞬ためらったあと、リアノンはおずおずと一歩踏みだした。そしてもう一歩。断崖を歩くように。一歩間違えれば踏み外して奈落の底に落ちるかのように。
 二歩歩いたところで、彼女は差しだされた彼の手のほうへ自らの手を伸ばした。すぐさま力強い指に包まれる。感じたのはパニックではなく、衝撃を受けるほど大きな安心とぬくもりだった。
 抱き寄せられると思いこんでいたリアノンは、再び驚いた。彼がゆっくり彼女の手を持ちあげ、手の甲にキスをしたからだ。さらに裏返して手首に口をあてがい、舌先で脈打つ箇所に触れる。
 灼熱の矢に体を射抜かれ、リアノンはうめいた。
 ガブリエルが顔を上げた。彼の目の輝きは、いっそうリアノンの脈を速めていく。彼は彼女のもう一方の手も取って、有無を言わせず抱き寄せた。体が軽く触れる。リアノンの腿がたくましい腿に、胸のふくらみが彼のシャツに。衣服を通して、ガブリエルの放つ熱を感じる。リアノンは呼吸を整えようと、外光を遮るブラインドに目をやった。
「リアノン?」
 ガブリエルの息を額の生え際に感じ、リアノンは重いまぶたを上げて彼を見つめた。あまりに彼が近くにいるので、顎にうっすらと生えている髭まで見える。彼の暗い瞳の中心に彼女自身がはっきり映っていた。
「リアノン?」ガブリエルが繰り返し声をかけた。「キスをしてほしいかい?」
 リアノンの頭の中で警告が響いたかと思うと、すぐにやんだ。リアノンはにわかに落ち着きを取り戻し、確信した。自分が彼の唇を求めていることを。美しく男らしい輪郭を描き、弾力があるのに薄くはなく、断固としていながら優しさを思わせる唇が、すぐ目の前にある。
 彼女は、雷鳴のようにとどろく胸の鼓動とは対照的な、極端にか細い声で答えた。「ええ」

 *この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

この本を読んだ人は、こんな本も読んでいます

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアは【ここ】から無料でダウンロードできます。
詳しくはXMDF形式の詳細説明をご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。

【MEDUSA形式】
MEDUSA形式の作品はブラウザですぐに開いて読むことができます。パソコン、スマートフォン、タブレット端末などで読むことができます。作品はクラウド上に保存されているためファイル管理の手間は必要ありません。閲覧開始時はネットに接続している必要があります。

詳細はMEDUSA形式の詳細説明をご覧下さい。