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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・アフロディーテ

地中海に舞う戦士

地中海に舞う戦士


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・アフロディーテ
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 チェリー・アデア(Cherry Adair)
 USAトゥデイのベストセラーリストにも載る人気作家。二十代のはじめに南アフリカから地球を半周し、アメリカにやってきた。現在は夫と猫と犬とともにワシントン州西部に住む。専業作家となる前はインテリアデザインの会社を経営していた。本とティーポットを集めるのが趣味で、執筆以外のときは庭いじりをしているという。

解説

 トリーはテロリストに捕まった兄の救出を請うため、兄の仲間のエリート特殊部隊員、マークのもとを訪れた。すでに監禁場所のイタリアの孤島に単身乗り込み、拷問の末に追い返されたトリーにとって、彼が頼みの綱だった。だが必死の願いもむなしく、断られてしまう。仲間を見殺しにするなんて、なんという冷酷な男なの! 怒りと失望に打ち震えたトリーは、頼みを聞かないと彼の職業がスパイであることを町じゅうにばらすと脅した。すると、しぶしぶ電話で救出の手配を始めたマークが、受話器に向かって言った。「女を一人連れていく」

抄録

 マークは後悔した。トリーを無理やり連れてきたことも、こんなに生臭い漁船に乗せたことも。
 気の毒なトリーは乗ってから三時間というもの、甲板から顔を突き出して吐きっぱなしだった。マーク自身も船酔いで気分が悪かった。波が全長十二メートルの船の横腹に情け容赦なくぶち当たる。いっそのこと、この先数百キロを泳いで渡りたくなるほどだ。五メートルも上まで海水のしぶきが上がり、そこらじゅう何もかもが水浸しだった。暖かいキャビンにトリーを連れて下りてみたものの、今度は生臭さに耐えられず、一分たりともいられなかった。
 トリーはついに吐くものもなくなり、ぐったりした。胃は痙攣しているし、腕も痛い。マーク・サヴィンに対する憎しみは募る一方だ。
“人でなし”とは彼のためにある言葉だわ。こうなると思ったから行かないと言ったのに! 全部彼のせいにするといくらか満足した。
「人が苦しんでいるのを見て、さぞ面白いでしょうね」マークの声を聞きつけたトリーは手すりから弱々しく顔を上げ、彼のほうをにらんで言った。
 しかし、マークが話しかけたのはトリーではなかった。いまいましい笑顔で、悪魔の船を操っている船頭と何か言葉を交わしている。そこでまた吐き気をもよおし、トリーはあわてて頭を突き出した。
「そら!」アンジェロは歓声をあげた。舵がよほど重いと見え、まるまるとした腕の筋肉が盛り上がっている。「相棒、あの波を見ろよ。自然の力に比べれば人間なんかちっぽけなものだな」
 マークは夜空を見上げた。まばゆいばかりの月が甲板を照らしている。東側から厚い雲が急速に接近してくるのがわかった。「少しのんびりしすぎじゃないのか?」
 トリーの姿を眺めやると、今にも死にそうにぐったりしている。「アンジェロ、そろそろまじめにやってくれ。島まであとどのくらいだ?」
 アンジェロは太い手首に巻きつけた防水用の腕時計に目を落とした。「現在時刻は夜の十一時だ。ちょうど嵐の来るころにまぎれて上陸できるぞ。最後の数十メートルは自力で泳がなくちゃならないが、あの娘は大丈夫か?」
「ああ、俺がなんとかする」マークはきっぱり言うと、トリーのギプスに巻きつけたビニール袋の防水カバーがずれていないかどうか確かめに行った。ついでに水筒を渡し、トリーに口をゆすがせる。
 水を飲み終わったトリーは、ガムをさし出したマークをにらみつけて言った。
「ガムは食べないわ。レディらしくないから」
「甲板から顔を出して吐くのもレディらしくないと思うけどな」マークはガムの紙を剥ぎ、トリーの口に押し込んだ。「いいから噛めよ」
 トリーはかすんだ目を凝らしていまいましげにマークを見た。「あなたとは絶対デートなんかしてやらない」あごを動かしてガムを噛み始める。爽快なミントの香りが口に広がり、生き返った心地がした。
 マークは笑いを噛み殺した。「最初から誘ったりしないよ。ところであと四十分ぐらい持ちこたえられるか?」
「それ以外に選択肢があるの?」
 マークはトリーの顔にかかった髪を払って笑った。「泳ぐ前からびしょ濡れだな」
「距離はあとどのくらい?」トリーがまじめな顔で尋ねたときだ――船が大波をかぶり、ざあっと大量の水が降ってきた。トリーは悲鳴をあげた。マークは泡立つ波に足元をすくわれないよう手すりにしがみつき、トリーを抱き寄せた。
 風にあおられたトリーの髪が鞭のようにマークの顔を打つ。ベビーシャンプーの香りだ。「危なかった」マークはトリーの細いウエストを抱き、彼女の頭につぶやいた。
 黄色いレインコートの胸元で、くぐもった声がした。「映画でも冒険ものは嫌い。さっきから濡れっぱなしよ」生き生きとした目がマークを見上げた。「おまけにガムをのみ込んじゃった」マークが笑うとトリーは胸を押しやった。「何がおかしいのよ」
 船はまた波にのまれた。マークはしめたとばかりに再びトリーを抱き寄せた。厚手のレインコートが邪魔だったが、トリーの体はぴったりと彼の胸におさまった。「スパイと冒険とは切っても切れない縁だからな」口の端を上げて笑う。
 トリーの顔に視線を落とすと、のどが脈打っているのがわかった。黒いまつげは塩で固まり、むき出しになった額には青あざとこぶがあった。青ざめた顔はいくらか血の色を取り戻し、唇は花びらのような淡いピンクだ。
 きれいだ。マークは思わず見とれた。
 トリーはまだマークの腰に抱きついたまま彼を見上げている。マークはそっと口づけをした。
 ミントと海水の味がした。マークは彼女の唇の合わせ目を舌でなぞった。
「開けてくれよ」
「何するの……」
 マークはトリーのびしょ濡れの髪に手を入れて頭を抱き寄せた。「これは実験なんだ」そして再び唇を重ねたとき、新たな波が二人のそばにぶつかって砕けた。マークは舌先でトリーの歯を探りながら、より強く抱きしめた。厚手のレインコートがうっとうしい。マークが体をすり合わせるとトリーはのどの奥からため息をもらし、うっとりしながら寄りかかってきた。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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