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マリクロ連載文庫 花びらを描く女(2)

マリクロ連載文庫 花びらを描く女(2)


発行: マリクロ
レーベル: マリクロ連載文庫 シリーズ: 花びらを描く女
価格:100pt
形式:MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 妻吹 恋(つまぶきれん)
 20世紀生まれ。長年、編集者として書籍の編集に携る。小説によって追究するテーマは「性」。近代を超える作品を目指す。俳句を嗜む。

解説

 都代子をモデルにした彫像を恩師が彫っている。出来上がりつつある「木の女」を目にすると都代子の心は揺れる。誰も入れたくない部屋で、都代子は独り、絵を描き続ける。彼女は、子供の時から、周りの人達と打ち解けられない。孤独を感じ、人間関係を厭う。また、肉体と意識が調和せず、引き裂かれるような感覚に苦しみ、憩うことができない。都代子は、出口を見出すことができるのだろうか。

抄録

 都代子はベッドに倒れ込み、枕に顔を埋め、身動き一つしない。雨音だけが聞こえてくる。胸にこみあげてくるものを押し戻そうと、都代子は大きく息を吸おうとした。悪寒がし、都代子は泣き出す。泣きつつ、服を脱がなければいけないと思う。皺になるのが気になった。足は冷たく、それが腰にまで伝わってき、顔のみ熱い。都代子はまどろみはじめたのに気づく。眠りの中へ陥ってはいけないと思いながら、すべてを闇に向けて投げ出した。

 誰が服を脱がしてくれているのだろう。都代子は考えている。夕焼け空が厚いカーテンの裂け目に隠見しているのを都代子は見ていた。脱ぎ捨てられた服を都代子は鞄に詰め、カーテンの下に置いた。鈍く光るカーテンは湿りけを帯びているようだ。指で触れてみると、腥《なまぐさ》い魚の皮のような気がした。裂け目の向こうを見てみたい、と思った。都代子は裂け目を潜り抜け、カーテンの向こうの世界に這い出た。
 郷子が待っていた。郷子はおかっぱの髪にリボンをつけている。子供のころの遊び友だちが他に二人いる。都代子は「ありがとう」と郷子に言った。しかし、なぜ、あたしを待ってくれていたのかしら、都代子は不思議に思った。四人は地下に掘られた長い通路に入っていった。抜け出れば森があり、橋があり、その向こうに緑色の海があることをみんな知っている。黙って四人は通路を歩いて行く。足元の小石が気にかかった。通路の途中に半円の入口のある部屋があった。突然、都代子は三人に突き飛ばされ、その部屋の中に倒れ込んだ。膝が傷ついたらしい、ひどく痛んだ。立ち上がったとたん、一瞬、眩んだ。目を開けると、脱脂綿が落ちているのに気づいた。血に染まっている。都代子は、誰かが処置に困って、ここに来たにちがいない、と考えた。それにしてもいったい誰だろう。脱脂綿は幾片かに引き千切られ、部屋のあちこちに散らばっている。汚れていない脱脂綿を都代子は探している。三人が見て笑っている。郷子に都代子は飛びかかろうとした。両腕を二人にしっかりと掴まれ、都代子は身動きができない。郷子は笑っている。しかし、都代子には笑い声が聞こえない。森を抜け出て、橋を渡り、丘の上から緑色の海を三人は眺めている。誰かが泳いでいるようだった。都代子は急に泳ぎたくなった。「水着を貸して」と都代子は頼んだ。「泳げないくせに」と郷子は言い、三人揃って海におりて行った。みんな水着を着けている。都代子は服を脱いで、三人のあとを追った。ふり向いた三人は、裸の都代子を見て笑った。「服は脱がなければいけないのよ」都代子は叫んだ。

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