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ヘル・オンライン 上

ヘル・オンライン 上


発行: キリック
シリーズ: ヘル・オンライン
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★☆☆3
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解説

 多人数参加型ゲーム──MMO。それは現在、ヴァーチャル技術の目覚ましい発展により、視覚や聴覚の情報を直接脳に送り込むことで、ゲーム世界のなかに自分が実際いるかのように体感できるものになっていた。最新のヴァーチャル・ゲームのベータテスターとして、他の参加者とともに研究所のような施設にやってきた洋介は、仮想現実体感ゲーム機『ダンテ』のヘルメットを装着した。プレイするのは「触覚」までもが備わった次世代機が走らせる『ヘル・オンライン』というホラーゲームだった。どこか不穏なものを感じながらもその世界に飛び込んだ洋介。しかし、早くもチュートリアルで運営が語ったゲームのルールに愕然とする。ゲーム内では六人パーティーを組まなければならない。パーティーは三人ずつ「アタッカー」と「ディフェンダー」という役割に分かれなければならない。そして、ディフェンダーとなったプレイヤーは、アタッカーとなった人間を生きたまま解体し、その人体パーツから武器を作らなければならない。仮想現実とはいえ、触覚・嗅覚も再現されたリアルな世界。それだけにプレイヤーたちは当然、人間の解体を躊躇する。だが、そうして作った武器化した人体を手に、地獄と呼ばれる世界に跋扈する「デーモン」を狩る……それが『ヘル・オンライン』というゲームなのだ。意を決して、洋介はアタッカーとなった少女を解体する。そんな行為など生ぬるいと思える本当の地獄がこの先に待っているとも知らずに……。

 常軌を逸した狂気のシステム……超リアル仮想現実でパートナーの人体を武器化して挑む、血みどろハンターゲーム・上巻!

抄録

 誰もが言葉を失っていた。
 膨大な量の熱い血潮が、天井にまで飛び散る。
 剣崎のチェーンソーは勇魚の首筋を見事に切り裂いていた。
 勇魚は腰を抜かしたように、後ろにひっくり返った。
 目には、凄まじいまでの恐怖が浮かんでいる。当然だ。いきなりこんなことをされて、平然としているものはいない。
「いやあああああああああああああ」
「きゃあああああああああああああああ」
 岬と紫織の悲鳴が石壁に囲まれた部屋のなかに響きわたった。
 むせ返るような血臭に、気分が悪くなりそうだ。嗅覚までここまでリアルに再現されると、現実と区別がつかない。
 だが、現実には首を切られてここまで大量の血を失った人間が意識を通常に保てるわけがなかった。
「まいったね……いきなりかい」
 勇魚の声は震えているが、苦痛の色は感じられない。それが「現実ではない」証拠だ。
「悪かった。だが、こちらのほうが、たぶん楽だろうと思ってな」
 剣崎の顔にも、嫌悪感が表れている。ただ、彼の言うこともわかる気がした。
 もし「さあ、これから首を切断します」などと言って待たされたら、そのほうがはるかに恐ろしいはずだ。剣崎は、剣崎なりに勇魚のことを考えたのだろう。
「にしても、変な気分だよ……刃が食い込むのはわかるのに、痛くない。それに……この調子じゃ、本当は声なんて出せないんじゃないのかな」
 勇魚の言うとおりだった。
 剣崎のチェーンソーは、すでに勇魚の首のかなりの部分を切断している。そのブレードは頸動脈から気道のあたりまで達しているのだ。
 現実なら、この状態で勇魚が声を出せるとは思えない。
 声とは、胴体から呼気が送られて初めて発せられるものだ。本来なら、ひゅうひゅうという音にしかならないはずである。
「勇魚、そのまま仰向けになってくれ。それで首を固定すれば、チェーンソーで首を切断しやすくなる」
 狂気の沙汰だ。勇魚の上にのしかかった剣崎は、殺人鬼のようにしか見えない。
 が、これはあくまで「武器制作の一過程にすぎない」のだ。
「わかったよ」
 勇魚が観念したように、石床に身を横たえた。
「生きたまま首を切られるなんて……本当に、貴重な体験かできてありがたいね」
 それは勇魚なりのいやみのようだった。
 さらに、剣崎がチェーンソーで勇魚の首を切断していく忌まわしい音が鳴り響いた。
 肉が削がれ、頸骨のあたりで刃がひっかかっているのか、ときおりがりがりという音が鳴る。
 おぞましい時が経過し、やがて勇魚の首は完全に胴体から切断された。
「ははは、はははははは」
 勇魚が笑った。彼女の精神が、不安なところだ。
「怪奇、生首女の出来上がり……と言いたいところだけど、おかしな話だ。体のほうにまで、ちゃんと感覚が残っている」
 むろん、現実ならそんなことはありえない。
 身体感覚は脳に神経を通じて情報として送られるのだ。その経路である首が切断されれば、肉体がどうなっているか脳に知るすべはない。
 しかしそれは「これが現実ならば」の話だ。
「これは現実じゃない現実じゃない現実じゃない」
 いつしか洋介は、何度も自分にそう言い聞かせていた。どこまで正気でいられるか、このままではわからない。
「しかし……背骨を抜き取るといっても、やり方がわからないな」
「とりあえず、いろいろやってみるしかないんじゃない?」
 もう剣崎と勇魚は、異次元の会話をしている。こんな状況に短時間で適応できるとは、二人とも凄まじく強靭な精神力の持ち主だ。
「ところで、お前ら」
 剣崎が、一同を見渡した。
「そんなふうに、見物している場合じゃあないぞ。お前たちも、作業を進めないとまずいんじゃないのか」
 そのとおりだ。
 とはいえ、こんなとてつもなく陰惨な行為を、普通の精神の自分ができるわけがない。
 剣崎も勇魚も、精神のどこか重要な部分が欠落しているのではないか、という気がしてきた。さきほど勇魚の勇気を褒めたが、実際にあんな目にあっているところを見せられると考え方も変わってくる。
 仮想現実とわかっていても、勇魚の肉体は生々しかった。首の断面などは、どうみても本物にしか思えない。
 あの白いのは頸骨で、その前に気道らしいものがある。さらに食道に、黄色い神経の束に……。
 見ているだけで、吐き気がしてきた。だが、これでは駄目だ。
 もっと気を強く持たなければ、このゲームの世界に適応できない。
 ゲームが実際に始まったら、今度はダメージが待っている。しかも現実と同じような苦痛つきのダメージが。
 改めてぞっとした。
 ある意味、それで死ねるのならまだいい。しかしこの仮想現実では、死という解放すら許されていないのだ。
 ここはまさに、地獄だ。
「岬さん……大丈夫?」
「な、なんとか」
 洋介の言葉に、岬はかすれた声で答えた。
「とりあえず、剣崎の言っていることは正しい。俺たちはディフェンダーだ。いまのうちに、アタッカーの人たちを加工して、武器にしておかないと……」
「そ、それはそうだけど」
 岬の声が二オクターブほど上がった。
「あ、あんなことできるの?」
「やるしかないんだよ」
 返り血を浴びた岬の顔に、冷や汗がぷつぷつと浮き出すのがわかった。
 こんな細かいところまで現実を再現する必要はないのに、と思う。
「とりあえず、誰を『相棒』にするか、まず決めなくちゃいけない」
 それを聞いて、田宮と紫織が悲鳴をあげた。
「や、やめてくれ」
「いや……いやあ……」
 しだいに洋介は苛立ってきた。
「俺たちだって、好きでこんなことをしているわけじゃない。でも、いまは仕方がないんだ」
 それでも、田宮も紫織も体を震わせている。
 偉そうなことを言っているが、立場が逆なら自分もきっと似たような態度をとるだろう。それだけに、かえって苛立ちがつのった。彼らの意思は、もはや問題ではないのだ。
 それにしても、どちらと相棒になるか。
 田宮も紫織も、優秀な「アタッカー」になれるか、わからない。田宮は臆病だし、紫織も武器になってさえ、こちらの足をひっぱりそうな気がする。
「じゃあ……私が……」
 岬が、緊張した面持ちで告げた。

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