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ヘル・オンライン 下

ヘル・オンライン 下


発行: キリック
シリーズ: ヘル・オンライン
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆3
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解説

 多人数参加型ゲーム──MMO。それは現在、ヴァーチャル技術の目覚ましい発展により、視覚や聴覚の情報を直接脳に送り込むことで、ゲーム世界のなかに自分が実際いるかのように体感できるものになっていた。最新のヴァーチャル・ゲームのベータテスターとして、他の参加者とともに研究所のような施設にやってきた洋介は、仮想現実体感ゲーム機『ダンテ』のヘルメットを装着した。プレイするのは「触覚」までもが備わった次世代機が走らせる『ヘル・オンライン』というホラーゲームだった。どこか不穏なものを感じながらもその世界に飛び込んだ洋介。しかし、早くもチュートリアルで運営が語ったゲームのルールに愕然とする。ゲーム内では六人パーティーを組まなければならない。パーティーは三人ずつ「アタッカー」と「ディフェンダー」という役割に分かれなければならない。そして、ディフェンダーとなったプレイヤーは、アタッカーとなった人間を生きたまま解体し、その人体パーツから武器を作らなければならない。仮想現実とはいえ、触覚・嗅覚も再現されたリアルな世界。それだけにプレイヤーたちは当然、人間の解体を躊躇する。だが、そうして作った武器化した人体を手に、地獄と呼ばれる世界に跋扈する「デーモン」を狩る……それが『ヘル・オンライン』というゲームなのだ。意を決して、洋介はアタッカーとなった少女を解体する。そんな行為など生ぬるいと思える本当の地獄がこの先に待っているとも知らずに……。

 常軌を逸した狂気のシステム……超リアル仮想現実でパートナーの人体を武器化して挑む、血みどろハンターゲーム・下巻!

抄録

 地獄には時刻という概念がない。
 それでも、「ここ」にやってきてからあきらかに二週間以上が経過していることはわかる。感覚的には、すでに一ヶ月はたっているようにも思えた。
 だが、まだゲームは終わらない。
 ある意味、洋介にとってはありがたいことだった。
 桐ケ谷への復讐を果たすまでは、ゲームに終わられては困るのだ。
 すでに洋介のなかで「現実」など遠い過去にすぎなかった。自分がどんな生活をしていたかすらほとんど忘れてしまっている。
 いまの洋介にとっては、この仮想現実の世界こそが「本物の現実」なのだ。
 剣崎たちと別れてから、あちこちのパーティーに傭兵役として雇われた。洋介はすでにかなりの有名人となっている。
 決して雇い主を裏切らない。確実に仕事をこなす。ただし本当に自分に身の危険が迫ったときは即座に契約を破棄し、撤退する。
 多くのパーティーが競って洋介を雇いたがった。
 洋介が桐ケ谷のせいでひどい目にあわされたことも広く知られている。
 そのため、稀に洋介に関わることを恐れる者もいたが、ほとんどのパーティーは洋介の「傭兵としての優秀さ」を高く買っていた。
 ときおり磯貝とも情報を交換している。お互いに憎しみ合いながらも、いまでは奇妙な連帯感めいたものが生まれていた。共通の敵である桐ヶ谷に対する憎悪は、互いに向けられるそれをはるかに凌駕していたのだ。
 ディザスターの街の酒場で、二人は酒を酌み交わしていた。
 もっともここは非中立地帯である。なにしろ磯貝は普通の街では酒場にすら入れないのだ。
 非中立地帯は「人斬り」たちのねぐらになっていることが多い。そのため、初めのうちは警戒したが、最近では情報収集のために入ることもめずらしくなくなった。
 いま店内にいるのは二人だけだ。従業員はみなNPCである。
「しかしお前が以前、言っていた話……どうなんだろうな」
 洋介はちびちびと酒を舐めた。
 決して泥酔はしない。非中立地帯でそんなことをすれば命に関わる。たとえ時間がたてばまた復活するとはいえ、死の苦痛を何度も味わえっていたら、そのうちロストしてしまう可能性があるのだ。
「桐ケ谷がもしデーモンだとすれば……やっぱり奴はNPCなのか?」
「わからねえな」
 磯貝のほうは酒を派手にあおっていた。
 肝機能検査の結果で、酒の強さなどを隠しパラメータとして設定しているのだろうか。
 とにかく磯貝は酒に強い。まともにつきあっていたら、こちらがつぶれる。
「だいたいこのゲームのNPCも、やたらと人間的すぎるだろう?」
 それは以前から感じていたことだった。
「下手なAIプログラムじゃあんなことはできないと思うぜ」
 AIとは人工知能のことだ。
「最近のはわりと出来のいいのもあるといっても、このゲームのは次元が違う。もっとも仮想現実の技術と一緒で、オニオン・コーポレーションのAIはかなり先を行っている、って可能性もあるが……」
 だがそれだけとは思えなかった。
「このゲームのNPC……『運営』に雇われた人間が、演技してるのかもな」
 洋介は言った。
「ただ、だとすると……桐ケ谷の一件は『運営が起こしたイベント』ってことになる」
「それが俺にもわからねえんだよ」
 磯貝がデーモンの肝をかじった。このゲームでは珍味として知られているが、普通の店では出さない。非中立地帯にあるような裏酒場でしか食べられないのである。
 理由は単純で、毒性があるからだ。体力のパラメータが低いプレイヤーは、死ぬこともある。
 それでも磯貝はデーモンの肝がお気に入りらしい。
「『運営』があんなことして……なんの得があるっていうんだ? 言っちゃ悪いが洋介、いまでこそお前は大した有名人だが、当時は剣崎の仲間、くらいにしかみんな見ていなかった。それがどうだ。いつしかお前は悲劇の主人公みたいなポジションじゃねえか」
「ああ、それはな」
 洋介は舌打ちした。
「すごいむかむかするような仮説が……ないこともない」
「ほう」
 磯貝がにやりと笑った。
「その悲劇の主人公の仮説とやらを、聞かせてもらおうじゃないか」
 こういう嫌味なところは、磯貝は相変わらずだ。いまさら腹も立たないが。
「『運営』はなんていうか……『ゲームを盛り上げるためにあれを仕組んだ』のかもしれない」
「あ?」
 ぽかんと磯貝が口を開けた。
「どういうことだ」
「つまり、奴らは意図的に『俺を悲劇の主人公に仕立て上げた』んだ」
「ああ……なるほどな。連中の考えそうなことだ」
 磯貝が暗い目をした。
「なんていうか……ドラマ性のあるプレイヤーがいたほうが、たしかにゲーム全体が盛り上がるからな」
 だとすれば、この復讐心すらも「運営」が用意した演出だというのだろうか。
 それはそれでかまいはしない。
 とにかくあの桐ケ谷を殺し、拷問し、また殺し、責めたて、ロストさせる。
「もしそれが事実ならお前も俺もいいように『運営』の手のひらで踊らされているってわけだ。もっとも、それでお前の復讐心がなくなるとも思えないがな」
「それはお前もだろう」
「ああ」
 磯貝が笑った。陰惨な笑みだ。
「同じだね。俺を裏切った連中を、みんなロストさせてやる」
「しかし桐ケ谷が本当に全パーティーロストを狙っているとしたら……」
「『運営』が、それを意図しているってことになるな」
 しばし沈黙が落ちた。
「なあ、俺たち、ひどく分の悪い戦いをさせられているよなあ」
 磯貝が酒盃に口をつけた。
「いくら俺たちが頑張っても、この世界をつくったのは『運営』だ。奴らはその気になればなんだってできる。結局、相手は神……いや、まあ地獄だから魔王みたいなもんか。そんな連中を相手にしてる俺たちは、奴らからすればただの研究対象か、あるいは虫けらみたいなもんなんだろうよ」
 洋介も幾度も同じことを考えた。
「よく考えてみろ、洋介。たとえば『運営』の気まぐれで、もしデーモンがすべての街を襲ったら、俺たちは拠点を失う。結局、連中は俺たちを生かさず殺さずの状態にして、愉しんでるんだか観察しているんだか……」
「いまさらそんなことを言っても仕方ない。違うか?」
 洋介は磯貝を睨みつけた。
「俺だってわかってる。だがな……」
 まずいな、と思った。磯貝はかなり酔っている。
「飲みすぎだ。ここが非中立地帯だっての、忘れたのか」
「でも最近は、ここらへんも妙に治安がいいからな。やばい連中は、みんな桐ケ谷についてどっかいっちまった」
「相変わらず桐ケ谷はあちこち、居場所を変えているのか」
「そうそう……妙な噂があってな」
 磯貝がげっぷをした。
「馬鹿馬鹿しい話なんだが『デーモンの街』ってのがあるらしいんだ。桐ヶ谷は、そこを拠点にしているとか」
「おい」
 洋介は思わず、机を叩いた。
「そんな重要な情報、なんで早く言わなかった!」
「いや、いいかげんなほら話だと思っていたし……お前をびっくりさせたくてな」
「まあ、いい」
 なんとか洋介は自分を落ち着かせた。
「で、その街はなんなんだ?」
「デーモンの街っていうくらいだから、原則としてデーモンしか入れないらしい。だが、桐ヶ谷の部下どもは別らしいんだ」
 微妙に磯貝の口調が暗くなった。桐ケ谷の部下は、かつての磯貝の配下だったのだ。
「こんな話、実際にあると思うか? デーモンどもの街? 奴らが酒場に行ったり、女を買ったりするってのか」
「デーモンといっても……俺たちの知っているのとはまた別物かもしれんぞ」
 洋介の脳裏に、忌々しい桐ケ谷の顔が浮かんだ。
「桐ヶ谷は本当にデーモンなのかもしれない。つまり、人間と同じ姿かたちをした、あるいは人間に化けるデーモンがいてもおかしくはないだろう?」
「ぞっとしねえな」
 磯貝が気味悪そうに体を震わせた。
「じゃあ桐ケ谷以外にも、デーモンが人間のなかに紛れ込んでいるかもしれないっていうのか」
「そういうことだ。『運営』が悪趣味なのは、お前も知っているだろう?」
 ありうる話だった。
「ああ……そういや、デーモン絡みでまた別に変な話を聞いたな」
「どんな?」
「人間が……デーモンになるって話だ」
 初耳だった。
「それは、人間に化けていたデーモンが正体を現したとかじゃないのか?」
「よくわからねえが、高レベルのパーティーでそういう事件が起きたって話だ」
 いやな予感がした。
「まさか、剣崎とか……」
「いや、あいつらはまだ大丈夫だよ。奴らはいまじゃ、『ソード・ワルキューレ』って呼ばれて大活躍している」
 剣崎たちが順調にいくつものクエストをこなしていることは、風の噂で聞いていた。
「ならばいいが……」
「古巣が恋しくなったか」
「いや」
 彼らのもとに戻れば、迷惑がかかる。
「それよりデーモンの件だ。なんで人間が……」
「よくわからんが、その高レベルパーティーはとんでもないアイテムを持っていたって話だ」
「アイテムの副作用とか?」
「そこらへんが妥当だろうな。そいつらはものすごい吹雪を起こしたらしいが……並の魔改造された武器じゃあ不可能な規模だったそうだ。あれはある種の『魔法』なんじゃないか、っていう奴もいたな」
 魔法。なにかが意識の奥でひっかかったが正体はわからなかった。
「このゲームに魔法はなかったんじゃないのか?」
「それをいったら、最初のうちは魔改造なんてなかった。いまはどうだ?」
 高レベルになると魔法が出てくるということは、考えられないでもない。
「しかしシステムがいろいろと複雑になってきたな。魔改造に、人間のかたちをしたデーモン、そして魔法か……」
「デーモンを召喚したりできるアイテム、なんて噂もあるぜ。ただ……お前ももう、気づいているよな」
 磯貝の言いたいことはすぐにわかった。
「ああ、最近のプレイヤーの……」
「どんどんみんな、強欲になっていく。平気で仲間を裏切る奴らも増えた」
「魔改造の影響がますます悪化してる……そういうことだろう」
 事実、洋介も雇われたパーティーに二度、襲われたことがある。皮肉な話だが、そんな状況だからこそ洋介のような「信頼できる傭兵」が重宝されるのだ。
「みんな競うように高レベルを目指して、いいアイテムを取ろうとする。なにかに取り憑かれているみたいに、だ。その点……妙な話だが、お前は信用できる。なぜだ?」
 わからない。
「俺だって『紫織』をずいぶん、あれから魔改造しているんだがな」
「お前の場合『桐ケ谷に憎悪が集中しているから』かもな」
「どういうことだ」
「他の連中は人間のいやな面をいろんな方向に出している。だから高レベルパーティーはかなりえげつないことになっている。でもお前の負の面は、桐ヶ谷への憎悪の一点に絞られている。そういうことだ」
 磯貝の言うことにも、一理あるかもしれない。
 そのとき、酒場の扉が開かれる音がした。
 三人の女性が、こちらに近づいてくる。
 先頭のリーダーらしい女は、女性にしてはかなりの長身だった。しかもかなり筋肉質だ。
 このゲームでは外見で相手の能力を判断することはできない。ゲーム内での容姿はあくまで「現実」にいたときのプレイヤーのものだからだ。
「私たちは『ブラッディ・シューター』と呼ばれる人を探しています。この酒場にいけば会えるとうかがったのですが」
 女の声は、予想どおりハスキーなものだった。お世辞にも美人とはいえないが、意志の強そうな顔立ちだ。

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