マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・セレクト

花嫁の秘密

花嫁の秘密


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・セレクト
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★☆☆1
◆レビューを書く

¥0サンプル
XMDFのファイルをご覧になるにはブンコビューア最新版(無料)をインストールしてください。

「書籍ファイルが壊れています」と表示される場合は、ブンコビューアを最新版にアップデートしてください。
購入する


著者プロフィール

 シャーロット・ラム(Charlotte Lamb)
 第二次大戦中にロンドンで生まれ、結婚後はマン島で暮らす。大の子供好きで、五人の子供を育てた。ジャーナリストだった夫の強いすすめによって執筆活動に入り、百作以上の作品を著す。二〇〇〇年秋、多くのファンに惜しまれつつこの世を去った。

解説

 待ち望んでいたはずの結婚式を翌日に控え、ガブリエラは眠れぬままハンガーにかかった美しいウェディングドレスを見つめ続けていた。日が昇る前、とうとうガブリエラは決めた。やはりスティーヴンと結婚はできない。彼が私の過去を知ったら……。詫びの言葉だけの書き置きをスティーヴンの家の郵便受けに入れ、フェリーで英仏海峡を渡り、車でイタリアへ。湖水地方にいる幼なじみのパオロなら、忌まわしい記憶を忘れられずにいる私のこの苦しみをわかってくれるはず。だが、世界中に権勢を誇る実業家スティーヴンは、急遽結婚式をキャンセルしたあと、苦もなくガブリエラの居所を突き止め、険しい形相で追ってきた。

 ■起伏に富んだ心理描写を得意とする往年の名作家、シャーロット・ラム。本作は、キリスト教の“七つの大罪”のひとつ――“憤怒”をテーマに描いた、ドラマティックな作品です。

抄録

 彼という人のことを知らないとはいえ、それぐらいはわかっていた。彼は容赦ない。彼は不屈の精神の持ち主――戦わずしてあきらめるようなことは絶対にしない。
 スティーヴンは急にハンドルを切り、車は道路を横すべりした。ガブリエラはぎくりとした。一瞬また事故かと思ったが、ほかの車は見えなかった。
「どこへ行くつもり?」ガブリエラは震えながらきいた。
 車は道路をはずれて私道に入っていく――霧を透かして前方に高い錬鉄の門扉がちらりと見えた。門が近づくと、スティーヴンは何かを手に持って扉を指した。すると扉は左右に開いた。
「ここはホテル?」
 スティーヴンは答えない。車は門を通り抜けた。扉が再びうしろで閉まった。ガブリエラは不安でひどく緊張して、身を乗り出し、霧の中に目を凝らした。遠くにいくつか明かりが見えた。ホテルでありますようにと祈った。人目がある所なら安全だと思ったのだ。人の目がある所ならひどいことはされないだろう。
 右手に高い塀が霞んで見えた。塀の上にワイヤーのような物がある。電流が通っているのだろうか?
 ガブリエラの視線を追い、スティーヴンが低い声で言った。「そう。屋敷は電流のバリヤーで囲まれている。こっそり侵入することも、忍び出ることもできない」
「ホテルではないの?」ガブリエラは膝の上で両手を固く握り締めた。どうか、どうかホテルでありますように……心の中で祈った。
「個人の邸宅だ」スティーヴンはガブリエラの手をちらりと見て、そっけなく言った。「このヴィラはフロリダに住んでいる友達のものでね。彼女から数日借りた」
「彼女?」ガブリエラは驚いて青い目を彼に向けた。
「旧友の未亡人さ」スティーヴンはガブリエラの表情を探るように目を細めた。「ケイは夫が心臓発作で急死するまでここに住んでいた。いまこのヴィラは売りに出されている。彼女はアメリカ人で、ジョージが亡くなったあと一人ここで暮らすのは寂しいと国に帰ったんだ。フロリダに家を買ってね。広い庭と大きなプールつきの邸宅だが、このヴィラを管理するよりずっと楽だ。ここを切りまわすには使用人が大勢必要だからね」
 車は正面玄関に続く石の階段の前でゆっくりと止まり、ガブリエラは明かりのともった窓を見上げた。霧でよく見えなかったが古風な造りだった。十九世紀はじめごろの建物だろう、円柱のある玄関を挟んで両側に窓が並んでいる。
 化粧漆喰の壁はごく淡いクリーム色で、階段の手すりに白い蔓薔薇が絡みついていた。その花はほのかに光る幻のようで、陽はとうに沈んでいたが、空気にはかぐわしい香りがまだ漂っていた。
「ここにはほかにも誰かいるの?」ガブリエラは不安げに尋ねた。
「最小限の使用人がいる」スティーヴンは外に出て、車を回ってきて助手席のドアを開けた。
 ガブリエラはシートの中で身を縮め、動かなかった。
「車の中じゃ話はできない」スティーヴンが冷ややかに言う。
「なぜ?」
 スティーヴンがいら立たしげな身振りをした。「いったい何を怖がっているんだ? 僕が暴力をふるうとでも? 誓ってそんなことはしない。君は結婚式の当日に逃げ出したんだぞ。なぜ結婚するのが無理なのか会って説明もせずにだ。僕には説明を求める権利があるんじゃないか、ガブリエラ?」
 ガブリエラはため息をもらした。まったく彼の言うとおりだ。でも……彼に打ち明けるなんて、とても耐えられない。
 スティーヴンは身を乗り出し、片腕をガブリエラの体に回した。「さあ、降りるんだ」
 乳房のすぐ下のところに回された温かい彼の手。ガブリエラの体に震えが走った。
「わかったわ!」彼女はかすれた声で言った。「降りるわ。だからその手を離して! 一人で降りられるわ」
 彼は黙って手を離し、ドアを支えた。ガブリエラは体を回し、足を砂利の上に下ろして立ち上がった。彼女の頭の頂はスティーヴンの顎に届くか届かないか――あらためて彼がとても背が高いことを、力でもはるかに及ばないことを思い知った。もし力ずくで迫られたら、どんなに抵抗しても勝てるチャンスはない。だがガブリエラが彼を恐れるのは、彼が腕力で勝っているからではなかった。
 彼は女性を殴るような人ではなかった。それは確かだった。彼はじぶんが大きくて強いことを知っている。女に暴力をふるうのは弱い男だ。意気地のない、劣等感にさいなまれている男は、女を傷つけることでじぶんへの憤懣を晴らそうとする。
 スティーヴンはガブリエラの腕を取った。軽く。その態度は冷静だった。
「こっちだ」彼は階段の方へ促した。
 ガブリエラは階段の頂に目をやった。さっきまで閉まっていた玄関の扉がいまは開け放たれ、黄色い光の帯が石段にこぼれていた。ガブリエラはスティーヴンに腕を取られたまま上りはじめた。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

この本を読んだ人は、こんな本も読んでいます

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアは【ここ】から無料でダウンロードできます。
詳しくはXMDF形式の詳細説明をご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。

【MEDUSA形式】
MEDUSA形式の作品はブラウザですぐに開いて読むことができます。パソコン、スマートフォン、タブレット端末などで読むことができます。作品はクラウド上に保存されているためファイル管理の手間は必要ありません。閲覧開始時はネットに接続している必要があります。

詳細はMEDUSA形式の詳細説明をご覧下さい。