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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・イマージュ

十二年後の奇跡

十二年後の奇跡


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・イマージュ
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★☆☆3
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著者プロフィール

 カレン・ヴァン・デア・ゼー(Karen van der Zee)
 子供時代をオランダで過ごす。小説を書いて旅をするのが夢だったが、幸運にも、その夢はかなえられた。作家となり、アメリカ人の夫が開発事業に携わっているため、さまざまな国に赴く必要があるからだ。ケニアで結婚し、長女をガーナで、次女をアメリカで出産。その後二年をインドネシアで送り、息子が新たに家族に加わった。今後も世界各地に移り住む生活は続きそうだ。

解説

 ■運命が二人を過去に引き戻していく。再会は一瞬のすれ違いでは終わらなかった。

 ■それは二度と会うことはないと思っていた二人の苦い再会だった。オレゴン州の小さな町のレストランで、グウェンは亡き夫の親友ジョーと食事をともにしていた。夫を亡くして沈みがちな彼女をジョーが連れ出してくれたのだ。食事を始めてすぐ、グウェンは見つめられていることに気づいた。忘れようもないシルバーグレーの目に……。エイダンだ! 十二年前にアフリカに去った彼が、どうしてここに? 向かい側には女性が座っている――妻らしき魅力的な女性が。グウェンは心ならずも動揺し、胸に痛みを覚えた。彼とのことは昔の思い出。それぞれ別の相手と結婚もしたのだから。だったら、この痛みはいったいなんなの? 奇跡は起こらないわ。私は独りでも、エイダンのそばには……。

抄録

 こんな気持にさせられるなんて――エイダンがそばにいるだけで、ある種の飢えを感じてしまう自分がいやだった。
 あれから十二年たった今も、こんなにもわたしを惹きつける力をエイダンは持っている。
 わたしは何を望んでここへ来たの? 自分の記憶が美化された十八歳の感傷にすぎないことを、あるいは、エイダンの魅力がかつて思ったほど圧倒的ではないことを大人の目で確かめたかった?
 ところが、彼は昔以上に魅惑的だった。今のエイダンは、若いグウェンが感じることのなかったセクシーな魅力を発散している。この魅力を感知できるのは成熟した女性だけなのかもしれない。
 沈黙の中で、エイダンの険しい表情がゆるんだ。
「座れよ」彼は椅子を指さした。
 グウェンは座った。「わたしが結婚したこと、どうして知ってるの?」震える手を膝の上で握り締めながら、彼女はきいた。
 エイダンは肩をすくめた。「新聞に出た告知をだれかが送ってくれたんだ」そう答えてから、グラスに水をまたついだ。「ご主人の名前はスペイン風だったと思うけど、メキシコ人だったのかい?」
「ええ。マルコス・シルヴァといって、彼自身はカリフォルニア生まれだったけど、ご両親がメキシコから来た人たちなの」
「彼、仕事は何をしてたんだい?」エイダンはグラスを傾け、水をごくごくと飲んだ。
 その喉の動きを、グウェンはじっと見つめた。
「建築家で、個人の住宅を設計してたわ」
 エイダンはうなずいた。「それならぼくよりずっと堅実だ。お母さんもきっと満足したろうな」淡々とした言葉だが、その裏には多くの意味がある。グウェンは体を駆け抜ける熱い憤りを感じた。
「母は彼を知らないわ」
 エイダンはかすかに意外そうな顔をした。「なるほど」
 何が“なるほど”なの? 何もわかっていないくせに! グウェンはすべてをぶちまけて説明したくなったが、エイダンが自分の言葉を受け入れる心境にないことはわかっていた。プライドが彼女に沈黙を守らせた。
 こんなに冷たい目をしたエイダンは、わたしが知っていたエイダンではない。それなのに、どうして全身の血が熱く駆けめぐり、心臓が早鐘を打つのだろう? この人は、若かったわたしが愛したあの快活な青年医師とは別人だ。なのに、なぜ胸のときめきを感じるの? 今ここにいる現実の彼ではなく、昔の思い出がそうさせているだけ?
 グウェンは窓の外に視線を向けた。目の隅で、エイダンがカウンターを離れ、近づいてくるのが見える。グウェンは不意に自分が無防備に感じられ、恐怖に襲われた。エイダンは両手をとって彼女を立ち上がらせた。グウェンは脚を震わせ、目の前にいるエイダンの顔を見つめた。裸の胸のぬくもりが感じられ、彼の息が顔にかかる。
 全身がぞくぞくして、グウェンは息苦しくなった。エイダンの胸に唇を押しあてたい……いいえ、だめよ! 忘れようと何年も努力してきたのに、またこんなうずくような欲望を感じてしまうなんて。パニックに襲われたグウェンは、必死になって抵抗した。だめよ! 絶対にだめ!
 二人の視線がからみ合い、グウェンの胸の鼓動は痛いほどに高鳴っていく。エイダンが唇を重ねた。そのキスは強烈で官能的で、うずきやパニックをやわらげるものではなかった。逆に、グウェンの体の奥で新たな炎が燃え上がった。そして、その炎をあおるのが、懐かしいエイダンのにおいと熱い唇の感触、押しつけられているたくましい体だった。
 だめよ! だめよ! グウェンはやっとの思いで本能をねじ伏せ、唇をもぎ離した。エイダンも彼女を放し、一歩さがった。グウェンはテーブルに手をついて体を震わせ、大きくあえいだ。
「今のは……なんのつもり?」わき上がる怒りを覚えながら、やっと声をしぼり出した。エイダンにはこんなことをする権利はないのに! だが、心ならずも欲望を感じてしまった自分にも腹が立つ。
 この怒りは不安の裏返しかもしれない。こんなことを許していたら、その先にあるのは悲嘆と破滅でしかない。
 エイダンは肩をすくめ、皮肉っぽく唇をゆがめた。
「昔のよしみってところかな」
「なんて人なの」グウェンはつぶやいた。
 そのとき家の前に車がとまり、続いてドアの閉まる音が聞こえた。グウェンは深く息を吸った。
 キッチンのドアがぱっと開き、エイダンの妻が入ってきた。ブルーのシャツに白のショートパンツ姿で、食料品の入った紙袋を胸に抱えている。
「ただいま」袋をカウンターに置くと、彼女はグウェンに気づいた。「こんにちは」挨拶してから、眉をひそめた。「ああ、ゆうべ、レストランでお見かけした方ね?」そして、尋ねるようにエイダンを見やり、紹介されるのを待っている。
「わたし、行かなくちゃ」どこから自分の声が出てきたのか、グウェンにはわからなかった。それでもなんとか脚を動かし、家を出て車に乗った。
 気づいたときにはハンドルを握り、かなりのスピードで路上を走っていた。
 体の中で怒りが燃え盛ると同時に、グウェンは屈辱感に打ちのめされていた。わたしに対して自分が持つ力を知っているエイダンは、それにつけ込んでわたしを辱めたのだ。
「ひどい人ね、エイダン!」グウェンは叫んだが、その言葉は風にさらわれてしまった。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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