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ベネチアの宮殿に囚われて

ベネチアの宮殿に囚われて


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 シャンテル・ショー(Chantelle Shaw)
 イギリスの作家。ロンドン育ちで、頭の中でおはなしを作るのが大好きな少女だった。二十歳で結婚、第一子の誕生とともにケント州の海辺に移り、現在に至っている。浜を散歩しながら小説の構想を練るという。趣味はガーデニングやハイキング。六人の子供の母親でもある。

解説

 ロンドンで小さな内装店を営むジェスは、急な来客に驚いた。やってきたのは、イタリア名門一族の総帥ドラゴ・カサーリ。彼は行方不明のいとこ、アンジェロが働いていた店を捜していた。数日前から休んでいるアンジェロを心配していたジェスは、彼が意識不明の重体だと聞き、乞われて、すぐにドラゴとともにベネチアへ向かった。ところがベネチアへ着くと、ドラゴは態度を豹変させ、ジェスを詐欺師と罵り、宮殿に閉じ込めてしまう。いったいどういうこと? なぜ私がこんな目に遭うの? 身の潔白を証明するすべのない彼女に、ドラゴは誘惑を仕掛け……。

抄録

 二十分が過ぎた。これが夢ならすぐに覚めてほしい。でないと危険な脱出作戦を実行に移さなければならなくなる。だがバルコニーに立ってみると、夜風のささやきも、運河の水音も、夢にしてはやけに現実的だった。
 部屋が最上階ではなく三階だったのは不幸中の幸いだが、それでも運河沿いの道ははるか下に見える。ジェスの気持ちはなえかけた。
 しかし警察に尋問されることを考えると、そちらのほうが恐ろしかった。ドラゴはジェスがいとこの相続財産をだましとったと信じているし、警察も犯罪歴のある彼女を疑ってかかるだろう。疑いを晴らすことができる人物はアンジェロだけだから、彼が意識を取りもどすまでは、またしても無実の罪で犯人扱いされなければならない。
 ドラゴの不遜な顔が目に浮かんだ。よくも監禁してくれたわね。怒りで気持ちを奮いたたせる。すでにベッドからシーツをはがし、結びあわせてあった。それがしっかりバルコニーに固定されているのを確かめると、ジェスは手すりを乗りこえ、急ごしらえのロープを下りはじめた。
 幸いなことにジェスは身軽で、高所にも慣れていた。仕事中はしじゅう足場を上り下りしている。だが見おろすと、地面はめまいがするほど遠かった。二度と下は見るまいと決め、ジェスは慎重に下りていった。明朝、ドラゴがどれほど驚くかと思うと、いくらか気分が浮きたった。
「もう帰るのか、ミス・ハーパー?」聞きおぼえのある声がした。
 シーツをつかむ手が緩み、ジェスは叫び声をあげて落下した。目を閉じ、石畳に叩きつけられるのを覚悟する。だが、そうなる代わりに力強い腕でつかまれ、大きな胸に抱きとめられた。
「まったく、なんてばかなんだ」ドラゴはうなるようにそう言って、ジェスを立たせた。よろめく彼女に、怒りに燃えた目を向ける。
 ジェスはショックで口もきけなかったが、ドラゴは遠慮なく感情を吐きだした。
「死ぬところだったんだぞ」ドラゴはバルコニーを見あげ、身震いした。「こうして命がけで逃げようとするところを見ると、やはり君はアンジェロの金について何か知っているらしい」
「素人探偵に事実無根の疑いをかけられた上に、監禁されるなんてまっぴらよ!」ジェスは言いかえした。
 無事に地上に下りてみると、その脱出作戦がどれほど危険だったかがわかる。落ちていたら大けがをしただろうと思うと、背筋が寒くなった。だが、そんな危険を冒さなければならなくなったのは、全部ドラゴのせいなのだ。
「私はアンジェロの助けになりたくてイタリアに来たの。あなたの言いがかりや侮辱を黙って聞いている義理はないわ。それより、あなたのいとこがロンドンでどうしてあんなに不幸せそうだったのか自問してみたら? 何か悩みがあるんだろうと思ったけれど、彼は私には打ちあけなかった。どうやらあなたにも同じだったようね。“弟のように思っている”なんて聞いてあきれるわ」
 ドラゴの表情がかげった。「僕とアンジェロのことなど何も知らないくせに」
 批判されて腹が立ったが、ジェスの言葉にはある程度の真実が含まれていた。〈カサ・ディ・カサーリ〉の経営で手いっぱいだったドラゴは、アンジェロを留学させたことで、家族に対する責任から部分的に解放された気になっていたのだ。
 おばは、アンジェロがめったに電話してこないと心配していたが、ドラゴは独立心の表れだと喜んでいた。いとこが不幸せだなどとは思いもしなかった。とはいえ、それはジェスがそう言っているだけのことだ。詐欺で有罪になった人間の言葉など信じるに足りない。
 ジェスが後ずさりをしてリュックを背負った。ドラゴは訊いた。「どこへ行くつもりだ?」
「家に帰るのよ。あなたの“おもてなし”は辞退することにしたわ」ジェスが皮肉な口調で言った。「いちばん近い空港の方向を指差して。これで失礼するから」
「アンジェロの意識が戻るまで滞在すると言ったじゃないか」
「それはあなたが傲慢な威張り屋だと知る前の話よ」
 荒らげたジェスの声が、近くの橋を渡っていた一団の注意を引いた。話している言葉からするとアメリカ人のようだ。ベネチアを訪れる観光客の中には、春を選ぶ者も多い。夏の暑さとサン・マルコ広場の混雑を避けられるからだ。
 英語を話す一団に気づいて、ジェスの顔に安堵の表情が浮かんだ。ドラゴには容易にその考えが読めた。バルコニーから逃げようとしたのを見れば、ジェスが機知と実行力に富んでいるのは明らかだ。彼女に騒ぎを起こさせないようにする方法はひとつしかない。ドラゴはジェスを引きよせ、驚いた彼女の叫び声を唇で塞いだ。
 ジェスはたちまち身を硬くした。こぶしで胸を叩かれ、ドラゴは顔をゆがめた。生気あふれる髪や輝く瞳から、彼女がひと筋縄ではいかないことは予期しておくべきだった。だがジェスが柔らかな身をくねらせ、彼の抱擁から逃れようとすればするほど、ドラゴは血を、自尊心をたぎらせた。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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