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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ディザイア

楽園のかなたに

楽園のかなたに


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ディザイア
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ジャッキー・メリット(Jackie Merritt)
 長年会計士として働いたのち、取り組む対象を数字から言葉へめでたく転換した。家族の次に読書を最大の生きがいにしている。一九八七年に作家活動に入り、翌年には処女作が出版された。執筆や読書以外の時間には、水彩画を描いたり、ピアノを奏でたりする生活を送っている。現在は夫とともにネバダ州南部に暮らす。

解説

 二人だけの楽園。でも、その先には……

 ■レクシーは父親の代理で、財界の天才児と称されるマイルズ・レイトンに会うことになった。場所は彼が所有する豪華なヨット。クルーズに出ている間に、大切な不動産取り引きをまとめなければならない。マイルズは、噂どおり冷酷で傲慢な男だった。ハンサムで魅力的だけれど、仕事以外ではかかわりたくない相手。感情がなく、女性を心から愛せない人――そんな印象を抱いた。だがその夜、ヨットが爆発事故に見舞われ、すべてが変わった。幸運にも海に投げ出されたレクシーは、無人島に流れ着いた。そして、マイルズも! 彼は頭に傷を負い、記憶を失っていた。記憶喪失が性格を変えたのか、新しい彼は穏やかで心やさしく、情熱的にレクシーを求めた。常夏の楽園で、アダムとイブのような暮らしもすばらしいだろう。でも、彼の記憶が戻ったら? 二人が救助されたら? 傷つくことを恐れ、レクシーは拒絶しようとするが……。

抄録

 レクシーは膝を引き寄せて両腕でかかえ、二人が分かち合っている限られたスペースで、できるだけ体を縮めた。
「君はつらそうだね」マイルズが静かに言った。
「でも、僕はまったくつらくないんだ、レクシー。たしかに、今の僕たちはほとんどなにも持っていない。でも、この島にはいろいろなものがあるし、僕はここに君といることがすごく大切に思えるんだ。君はなにが欲しいんだい? 君が幸せになるのにぜったいに必要ななにかが、カリフォルニアにはあるのかい?」
「いちばん心配なのは、父のことよ、マイルズ。母はもう亡くなっているから、父には私しかいないの。今ごろ、気も狂わんばかりの思いをしてるわ」
「心配するのはもっともだ。でも、今の君にできることはなにもない」
「理屈を言っても、心配は消えないわ」
 マイルズはため息をついた。「僕はついてるのかもしれない。心配してくれている人がいても、覚えていないから悩むこともない」一瞬言葉を切ってから、彼は言った。「雨脚が弱まったみたいだ」
 そのとおりだった。「みじめな夜になりそう」レクシーが悲しそうに言った。
「洞窟へ行けば、濡れないよ」
「洞窟? まあ、マイルズ。私、心臓発作を起こすわ。あそこには蝙蝠がいるのよ!」
「あいつらが食べるのはねずみだ、人間じゃない」
 レクシーはまじまじとマイルズを見た。「ほんとうにあそこで眠れると思ってるの?」
「もちろん。なにもかもがびしょ濡れのここよりは、ずっとよく眠れるよ」
 雨は椰子の葉にしみこみ、二人の服はじっとりと濡れていた。それほど気温が下がったわけでもないのに、レクシーの裸足の足は冷たかった。
 大雨になると、暖かい雨でも冷たく感じるらしい。
「洞窟ね」レクシーは考えこんだ。「真っ暗に決まってるわ。おまけに蝙蝠が飛びまわっている」ぶるっと身をふるわせる。「いやよ、私はここにいるわ」
「弱虫」マイルズがからかった。
 でも、マイルズが島の反対側へ行ってしまったら、私は一人で夜を過ごさなければならない。レクシーはささやくように言った。「ここにいっしょにいて、マイルズ」
 レクシーの肩にまわしたマイルズの腕がびくんとこわばった。「心配いらないよ。夜に君を一人にしたりしない」マイルズはレクシーに顔を近づけ、ささやいた。「キスしてもいいかい?」
 レクシーはごくりと唾をのんだ。ノーと言うなんて無意味だし、お高くとまっているように思われるかもしれない。二人とも三十歳の大人なのよ。しかも、世間から隔絶した異常な状況にいる。
 レクシーは顔を突き出し、目を閉じた。唇と唇が触れ合ったとたん、全身に電流のようなショックが走った。予想もしなかった衝撃にぎょっとして、レクシーは顔を引いた。
「レクシー……」
 信じられないほど混乱した状況で、たった一つたしかなものが彼だとしても、自分からマイルズ・レイトンに身を投げ出したりしたら、私は一生自分を許さないわ!
「マイルズ、あなたにはわからないのよ」
「だったら、わからせてくれ。君と僕がたがいを好きになると、なにかいけないことがあるのか? 話してほしい、レクシー。僕はこの二日のことしか知らないんだ」
「あなたと私では、住む世界がまったく違うの」
「君は財産のことを言ってるのかい?」
「なんですって?」
「金だよ、レクシー。僕は金持ちで、君は生活のために働いていると言っていたね。そのせいで、僕と関係を結ぶのをためらっているのか?」
 いいえ、お金は関係ないわ。レクシーは心の中でつぶやいた。あなたが記憶喪失になっていなかったら、私たちはおたがいのことを好きにはなっていなかったはずよ。あなたは私のために小屋も作ってくれなかっただろうし、こうして体を寄せ合ってもいなかった。こんな話だってしていなかったわ。
 そして、私もこんなにつらい思いはしていなかった。それどころか、今ごろはカリフォルニアに戻っていた可能性だってある。ヨットで出会ったマイルズなら、自分たちがどこにいるのか知っていたはずよ。救出が来ることを即座に予測して、あらゆる準備をしていたわ。本物のマイルズ・レイトンは不愉快なくらい有能で、数少ない機会を逃しはしないと思うわ。彼なら、あの飛行機を見逃しはしなかった。
 でも、目の前のマイルズは、どういうわけか今の状況に満足している。無意識のうちに、現実に戻ることを拒んでいるんだわ、きっと。彼は幸せではなかったのかもしれない。たしかに、レディードリーマー号で握手した彼は、人生が楽しくてたまらないというようすではなかった。
 突然に、マイルズへの同情がわきあがり、レクシーは胸がいっぱいになった。理性には反していても、私は彼が好きなんだわ。
 マイルズはレクシーのうなじにてのひらをすべらせ、はねている髪を指にからめた。「ああ、マイルズ」そうささやく声には悲しみと共感がこもっていた。この状況でキスをして、それがいったいなんなの? 一度の軽いキスなのよ。
 二人の唇がためらいがちに出合い、レクシーは目を閉じた。ほんの少し、ひげがざらざらする。マイルズから立ちのぼる湿った服と雨とオレンジのにおいを吸いこみながら、レクシーは泣きたくなった。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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