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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ロマンス

一人にさせないで

一人にさせないで


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 シャーロット・ラム(Charlotte Lamb)
 第二次大戦中にロンドンで生まれ、結婚後はマン島で暮らす。大の子供好きで、五人の子供を育てた。ジャーナリストだった夫の強いすすめによって執筆活動に入り、百作以上の作品を著す。二〇〇〇年秋、多くのファンに惜しまれつつこの世を去った。

解説

 本当は、彼を忘れてはいなかった。逃れようとしてきた過去に、彼女はおびえた。

 ■ピッパは幸せだった。一週間後には、私は花嫁になる。孤児だった彼女にとって、温かい家庭こそがずっと夢見てきたものだ。婚約者のトムとなら、平凡だけど穏やかな家庭を築けるに違いない。そんなある夜、ピッパとトムが乗っていた車が接触事故を起こし、相手の男の顔を見てピッパは息をのんだ――ランダルだ。ランダルは、四年前、ピッパが勤めていた会社の社長だった。男らしい横顔、力強いグレーの瞳に、ピッパは夢中になった。二人はふとしたことからキスをしたが、ピッパは、それをきっかけにして彼の前から姿を消した。彼には帰るべき家がある。自分だけを愛してくれる人がほしかった。「僕はもう結婚していないよ」再びピッパの前に現れたランダルの言葉に彼女は体が震えた。心の奥にしまっていた苦い思いが、頭をもたげた。

抄録

「保険会社の彼とは知り合ってどれくらいになるんだい?」そう尋ねられてピッパは顔を上げた。きらきら輝く灰色の瞳と目が合うと、彼女の心は衝突した飛行機のようにつぶれそうになった。
 こうして目が合うたびに体が心を裏切りつづけたら、いつまで彼を無視していられるかしら。あの夜彼を見た瞬間、昔と同じ感情が否応なく私を圧倒した。彼のことは忘れたと自分に言い聞かせようとしてきたけれど、それは嘘だった。
「四年よ」ピッパはぶっきらぼうに答えた。
「つまり、僕から逃げだしてからすぐだ」
「逃げだしたりなんかしてないわ」彼の言葉にむっとしてピッパは言い返した。
「歩いて逃げた?」ランダルはあざ笑った。
「仕事を替えたいと思っただけよ」ピッパは挑むように緑の瞳で彼を見て言った。自分は再婚しようとしているのに、なぜ私にそんなことを言うの? 「保険会社に仕事を見つけて、トムの下に配属されたのよ」
「それからどれくらいで交際が始まった?」
 ピッパは激怒した。顔が赤くなり、神経がぴりぴりしているのがわかった。「なぜ裁判官みたいに私を質問攻めにするの? 私の私生活はあなたとはなんの関係もないはずよ」実のところトムのデートの誘いを受けたのはかなりたってからなのだが、ランダルがそれを聞いてどう思うかがわかっているだけに、本当のことは言いたくなかった。
「彼を愛しているの?」
「答える気はないわ」ピッパはコーヒーポットを取りあげた。「いかが?」
「ブラックで」
 ランダルにコーヒーを手渡すとピッパは自分のカップを持ってソファに移動した。テーブルにカップを置いてから、一人がけのソファに座るべきだったと思ったが遅かった。ランダルも場所を変えてピッパに寄り添って座り、長い脚の一方を彼女の脚に触れる近さで投げだした。今さらあからさまに席を移るわけにもいかない。
「愛していないんだったらなぜ結婚する?」
「愛してないなんて言ってないわ」
「でも愛しているとは答えなかった」
「あなたにそんな質問をする権利はないから答えなかっただけよ」
「愛しているのならなぜ素直にそう言わない?」
 彼との会話は地雷の埋まった野原を歩いているのと同じだった。一歩一歩気をつけないと、自爆しかねない。ピッパはかっとなってランダルの方に向き直った。「質問攻めにするのはよして」だがそれも間違いだった。彼は思ったよりずっと近くにいたからだ。すぐ目の前にあの灰色の瞳があった。ピッパは無意識に息をのんだ。
「どうした、ピッパ?」わざとらしく彼がきいた。
「別に。何を言いたいのかわからないわ」
「いや、君にはわかっている」ピッパがあとずさりするよりも早くランダルは身をかがめ、彼女の唇を捕らえた。
 なんとか逃れようともがいたが、厚い肩がピッパの上半身をソファの背に押しつけ、動けなくしてしまった。彼の力が強いのと、全身が震えていて力が入らないせいとで抵抗ができなかった。
 ランダルの唇の熱さがピッパに火をつけた。固く閉じていた唇が開き、瞳が閉じられた。脈が早鐘のように打っていた。
 時を飛び越えて初めてキスされたあの日に戻った気がした。感じられるのは彼だけ。彼の甘い唇、押しつけられる体の感触――歓びがピッパを圧倒し、思考を奪った。知らないうちにピッパはランダルの首に手を回し、髪をまさぐっていた。体がさらに強く押しつけられた。彼の指が全身をはって肩から胸へと動くと、今まで感じたことのない感覚に体が目覚めていくのがわかった。彼の腕の中で裸になり、直接触れてもらえたら……。
 この四年、何度もこれと同じ夢を見て深い眠りから起こされ、夢の中の情熱的なキスの名残に震えながら一人わびしさに泣いた。そんな夢は二度と思いだすまい、彼のことは考えまいと、ピッパは意識的に記憶を封じてきた。そのせいか、夢を見る回数は減ったが、全く見なくなったわけではなかった。その夢が今よみがえった――現実になって。今私は本当に彼の腕の中にいて、彼に身をゆだねたい、キスを返したいという誘惑と闘っている。
 ランダルはゆっくり顔を離してピッパの瞳をのぞき込んだ。ピッパは激しく震えて目を閉じていた。彼の目を見る勇気がない。彼に見つめられたらわかってしまう。濡れた唇を半ば開いた私が、まだ彼のキスの余韻と欲望に溺れていることが。
「さあ、彼を愛しているのならそう言うんだ」ランダルはピッパを試そうとして言った。
 必死に見開いたピッパの瞳は、瞳孔がぼんやりと開いていた。「私、彼と結婚するわ!」
「気が触れたのかい? 二人とも幸福になれるはずがない。彼はすぐに君に愛されていないと気づくだろう。そうしたら君を憎むようになる。だまされたと思い、地獄のような生活に閉じ込められていると君を恨むぞ」
「私たちのことを知りもしないで勝手に憶測しないで」
「悲惨な結婚についてはよく知っているつもりだ」ぴしゃりと言われてピッパは顔をしかめた。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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