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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ロマンス

春の妖精

春の妖精


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 シャーロット・ラム(Charlotte Lamb)
 第二次大戦中にロンドンで生まれ、結婚後はマン島で暮らす。大の子供好きで、五人の子供を育てた。ジャーナリストだった夫の強いすすめによって執筆活動に入り、百作以上の作品を著す。二〇〇〇年秋、多くのファンに惜しまれつつこの世を去った。

解説

 理想とはかけ離れた女性に一目惚れ。その日から彼の人生はがらりと変わった。

 ■祖父の代から続く銀行を経営するジェームズは、自他ともに認めるエリートビジネスマン。父に遺された格調高い屋敷に住み、従順な使用人に恵まれ、申し分なくエレガントなガールフレンドがいて、何ひとつ不足のない人生だと思っていた――彼女に、小柄で赤い髪のペイシェンス・カービーに出会うまでは。彼女は身寄りのない老人のための下宿屋をしていて、ジェームズが幼いころ駆け落ちして家を出た彼の母が、弱った体でそこに暮らしているという。感情を包み隠さず、ずばりとものを言うペイシェンスは、ジェームズに欠けていた温かさと思いやりに満ちていた。彼は反発しながらも、強く惹かれていった。

抄録

 ジェームズは歯を食いしばったままたずねた。「君の恋人か?」
「あなたには関係ないでしょ?」
 まったくだ。だが納得するどころか、怒りがこみ上げた。「よくもそんなことが言えるな。君だって、僕の生活に首を突っ込んでいるじゃないか。個人的なことをほじくり返し、僕のことを勝手に決めつけ、一日中、ああしろこうしろと引きずりまわして」
「しいっ!」彼女は小道の方へ目を走らせた。「コリンが聞いたら、引き返してきてあなたを殴るかもしれないわ。あの人、気が立ってるから」
「僕がやすやすと殴られると思うのか」
「だから怖いの。彼にけがをさせてほしくないわ」
「それはおやさしいことだ」いったい、あんなやつのどこがいいんだ? ジェームズは、そう自問してから顔をしかめた。答えは明らかではないか。あいつは彼女と同年代なのだから。生活全般にわたって、共通の話題がある。音楽の好み、本、映画、ジョーク、ゴシップ、政治観、そして未来への展望。
 むこうからエンジンの音が聞こえてきた。「タクシーよ」ペイシェンスは言って、ジェームズの手首に触れた。彼ははっと体をこわばらせ、手元を見た。柔らかく温かな細い指が、手首をそっと握っている。「お願い、またお母さまに会いに来て。お母さまがあなたを置いて家出したことを忘れるのは、たしかに簡単なことじゃないでしょう。でも、誰にだって過ちはあるわ。なんとか許してあげて。背を向けて、帰っていってしまわないで」
 ジェームズはうわの空だった。かつて体験したことのない、猛々しい衝動にとらわれていたのだ。じっとペイシェンスの顔を見つめながら、彼はキスしたいという欲望と懸命に戦っていた。唇はふっくらとして、目くるめく官能を予感させ、夏に咲くばらのようにピンクでみずみずしい。味わってみたくて胸がうずく。柔らかく滑らかな肌の香りをかぎ、あのはしばみ色の目の中の金色のきらめきを間近で眺め、愛らしい茶色のまつげをじっくりと観察したい。
 ごく若いころから、こんなにも激しく女性と口づけしたいと思ったことはなかった。だが、ばかなまねは慎まねば。むりじいをすれば、彼女が平手打ちをしたり叫んだりして、あの男が駆けつけ、けんかになるだろう。あいつなど少しも怖くはないが、道のまん中でもめごとを起こすのは恐ろしい。
 後ろからタクシーが近づいてきた。ジェームズは視線を振りほどいてきびすを返し、逃れられてよかったと自分に言い聞かせた。だが心中は裏腹だった。
 タクシーに乗り込むと、ペイシェンスが言った。「私の誕生日にお食事に来て。来週の水曜日よ。お母さまにプレゼントを持ってきてね、お花だけじゃなくて。じゃあ、七時に」
 ジェームズは、イエスともノーとも言わずにシートに沈み込み、運転手にリージェンツ・パークの住所を告げた。タクシーが動き出す。門に目をやると、彼女の姿は消えていた。自分は幻を見ていたのか。彼女は初めからここにいなかったのではないか。
 だが、それにしてはあまりに生々しかった。今朝まで、あの娘の名前はおろか、この世に存在することすら知らなかったのに、今、この頭の中には彼女のさまざまな表情が渦巻いている。それに、ずっと前から知っていたような気がするのだ――生まれたときからずっと。振り向いて家に目をやると、月光が裸の枝々の間に降り注ぎ、川の流れのような水仙のうねりを銀色に染めている。子どもと老人たちは、もうベッドに入っているだろう。静まり返った一階で、ペイシェンスとあの若い男だけが起きている。
 あの二人は、いったいどういう仲なのだろう。キスをする? 愛し合う? あいつはせいぜい二十歳くらいだろう。ペイシェンスのほうが三つほど上、つまり“年上の女”ということになる。彼の両親が二人の仲を許さないのは、そのせいなのか。
 二人がベッドに入っている姿は想像できない。いや、想像したくないのだ。
 タクシーは大通りに入り、リージェンツ・パークを目指して南下した。ジェームズは長身をシートに沈め、タクシーの揺れに身をまかせた。あの二人がどうしようと、知ったことではない。なんの関係もないのだから。だが、どれほど自分にそう言い聞かせても、気になって仕方がないのだった。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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