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本日、怪獣を預かりまして

本日、怪獣を預かりまして


発行: キリック
レーベル: シフォンノベルズ
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★☆☆3
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解説

 「腹減ったのか、飯どうしよう。三歳児って何食うんだ? ケータイで調べてみる」
 突然やってきた父親の再婚相手に腹違いの弟・凛を託された哲郎。都会で気ままな大学生活を送っていたところへ突きつけられた家族の役目。弟とはいえ幼子の扱い方がわからず途方に暮れる哲郎に救いの手を差し伸べたのは、これが二度目となる高取であった。家が託児所という高取の子どもの扱いはお手のもの。そんな高取に助けられながら三歳児との生活が始まって……。

※こちらの作品にはイラストが収録されていません。

抄録

「てれびみる」
 凛がテレビのリモコンを見つけた。教えたわけでもないのに、赤い電源ボタンに細い人差し指を押し付ける。家でもああやって、テレビをつけているのだろう。哲郎の知らない家族の姿だった。
 スイッチが入ると液晶画面に映像が映る。時間帯はちょうど、ドラマの再放送をやっていた。時代劇だった。理解できるのか、ただ動くものを目で追っているのか、凛は金さんの越前裁きをじっと見つめていた。
「凛、時代劇なんか見るのか。子供の癖に渋いな」
 高取が褒めろというので、無理に褒めた。
 ふと高取が時計を見る。
「今の時間帯ならNHKで子供向け番組をやってないかな。凛、ちょっとチャンネル変えるぞ」
 高取がリモコンを操作すると、画面に溌剌《はつらつ》としたお姉さんとお兄さんが、軽快な音楽に合わせてキャラクター達と体操をしていた。
「おあー」
 途端に凛が立ち上がった。見よう見まねで動きに合わせる。この世にこんな楽しいことがあったのかと言わんばかりのはしゃぎよう。
「凛、楽しいのはわかるけど、あんまり暴れるなよ。このアパート木造だから、響くんだよ」
 そんなこと、はしゃぐ三歳児にわかるわけもなかったが、注意せずにはいられなかった。また高取に何か言われるかと思いきや、思慮深い眼差しで凛を見ていた。
「子供向け番組を初めて見たって喜びようだな。お前の家のこと悪く言う気はないけど、子供がすくすく育つ環境ではなさそうだな」
 高取の分析は、よもやハズレではない。哲郎が捨てたあの町で、哲郎の父が築いた新しい家庭は、あまり幸せではないのかもしれない。自分ばかりが不幸な気がして、親に金を出せと子供の権力を振りかざしたのだが、その余波が赤ん坊にまで及んでいるとは夢にも思っていなかった。
 強がることも、無関心を装うこともできず、哲郎はただ黙りこくった。高取の意見に反論することも、凛の体操を見守ることもできず、ケータイを掴んで父親を呼びだす。
 あんたの家族を放ったらかして何をやっているんだと、怒鳴りつけてやりたい。けれど、麻巳子が言った通り、電源が入っていなかった。父の一郎は撮影旅行に出ると、外部からの連絡を拒む癖がある。撮影に集中したいのだと言っていた。それでどれだけ家族が不便を強いられたか。いくら訴えても聞く耳を持たない。芸術家かぶれの心境は、哲郎には理解できなかった。電話は諦めてメールを送ることにした。今の状況を簡潔に説明し、帰宅を促《うなが》す。送り終えると、見計らったように電話が鳴った。麻巳子からだった。
『凛はいい子にしている? どんな様子?』
 「今飯食わせたところ。子供向け番組見て喜んでるよ」
 哲郎は嫌みを込めて言った。
『それなら良かった。とにかく三日だけ凛をよろしくね』
 それで電話は切れた。
 やはり嫌みは通じなかった。いい加減な母親だという思いは拭い切れたわけではないが、電話を寄こしただけでもマシかもしれない。
「さて、凛の飯も終わったし、俺はそろそろ帰るよ」
 高取が腰を上げる。
 ということは、凛と二人だけにさせられるというのか。育児のいろはなど全くわからない大学生の元に子供を置いていくなんて、二人とも泣くのは目に見えている。
 帰らないでくれ。高取の足にすがろうとした時、哲郎よりも早く凛が言った。
「かえっちゃいや」
 いいぞ、凛。もっといけ。高取の母性本能、なければ父性本能をくすぐれ。
「だってよ、高取」
「どうしようかな。まあ、このまま帰るのはちょっと心配だし、もうちょっといるか」
「わーい」
 凛の顔が輝いた。
 でかした。弟よ、よくやった。
 わーい。
 哲郎も喜んだ。
「飯の後は風呂って言ってたな」

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