和書>小説・ノンフィクション>ライトノベル>恋愛
著者プロフィール
野島 けんじ(のじま けんじ)
福岡出身
福岡出身
解説
遙は少しずつ現状を認識しはじめていた。事故からどれくらい経ったのか訊かれ、答えられない孝之。だが、姉をだますことに限界を感じていた茜は、ついに「お姉ちゃんは3年間眠っていたの!あの事故から3年経ったの!」と言ってしまう。茜の言葉にショックを受けた遙は、再び意識を失う。その頃、水月は、孝之の気持ちが離れていくと感じ、その寂しさから行きずりの男性とホテルに向かっていた。偶然出会った慎二にとめられたものの、「誰でもいい」と思いつめた水月は、慎二と一夜を共にしてしまい…。大好評のアニメ小説化、ついに完結。
目次
第十一章 病みゆく恋情
第十二章 悔恨の疼き
第十三章 喪失の重さ
第十四章 一歩の勇気
最終章 本当の宝物
第十二章 悔恨の疼き
第十三章 喪失の重さ
第十四章 一歩の勇気
最終章 本当の宝物
抄録
「さっきだってヘラヘラ笑って、なにやってんだよ、お前!!」
慎二の怒気が、気迫が、鋭い言葉が、孝之の気持ちを追い詰めていく。
彼と目を合わせることができず、孝之は視線をそらしながら力なく口を開いた。
「もう放っといてくれ、俺だって……」
つらいのだ。それをわかってほしい。
だが、返ってきたのは、きつい言葉だけ。
「速瀬《はやせ》はお前の何倍もつらい思いをしてるんだぞ!」
「知ってるよ。水月《みつき》は……水月《みつき》はずっと俺のせいで苦しんでたんだよ」
「そこまでわかってて、お前はなにもしねーのかよ!」
慎二の言葉に苛立ちと怒りが湧き上がり、抑えていた感情が一気に膨れ上がった。
「仕方ないだろ! 俺にはなにもできないんだから!」
叫び、慎二を突き飛ばす。
数歩、孝之から離れるものの、それでも慎二は語気の強さをゆるめない。
「なにもできねーんじゃなくて、なにもしてねーだけだろ!?」
ズバリ自分が感じていたことを指摘され、孝之は言葉が継げなくなる。
慎二が続けて、言葉の刃で斬りつけてくる。
「速瀬《はやせ》はずっとお前のこと支えてたのに、お前は速瀬《はやせ》になにかしてやったのか!?」
自分の中で膨れ続け、いまにも弾けてしまいそうな感情に対し、孝之はあまりにも無力だった。すぐにでもそれを解放しないと、胸が潰れてしまう。
ここで怒るのは筋違いだとわかっている。わかっているが、抑えられない。だから、筋が通らないのを知りつつも、叫んだ。
「じゃ、どうすりゃいいんだよ!」
「お前が自分で考えろ!」
戻ってきたのは、冷たい、しかし、当然のひと言。
あれほど身を捩らせていた感情が、急速に冷めていく。
それに続き、もうどうでもいいや、という投げやりな思いが芽生え始めた。
「……。わかったよ」
「わかったって、なにが?」
「そんなに言うんなら慎二……水月《みつき》のこと、頼むよ」
「……!!」
慎二が、表情を強張らせたのがわかった。それでも孝之は、続けた。自分がとてもひどいことを言っているとわかっているのに、言葉を止めることができない。
「お前、水月《みつき》のこと好きなんだろ?」
とうとう、口にしてしまった。もう、取り返しがつかない。
慎二が、拳を握り締める。
「!」
――バキッ!
次の瞬間、その拳が孝之の横面に叩きつけられた。
衝撃とともに、視界が大きく揺れた。直後、目の前が白くなる。続けて、背中に強い衝撃を感じた。
地面に仰むけに倒れてしまったのだ。しかし、それだけでは終わらなかった。
――ゴキッ!
駆け寄ってきた慎二が、孝之に馬乗りになり、さらに殴りつけてきた。
また、頬に鈍い痛みが走る。口の中が切れたのがわかった。痛い。とても痛い。だがその痛みは、殴られたせいだけではない。
「このっ……」慎二が、孝之の胸倉をつかんで上体を引き起こし、「ダメなんだよっ! 俺じゃあ!! お前じゃなきゃ……」
拳を振りあげ、それを再び孝之の顔に落とした。
――バチッ!
「ダメなんだよっ!!」
慎二の拳が、痛い。
慎二の叫びが、痛い。
慎二の想いが、痛い。
痛い、痛い、痛い。あまりにも痛い。
慎二の声に涙が混じっている。
それも痛い。
情けない自分が、彼の強い想いになにもこたえてやれないでいる。それも痛い。
なにもかもが、痛かった。
「俺とお前のどこが違うっていうんだよっ!!」
――ゴリッ!
声を震わせる慎二の拳が、孝之の頬を打つ。
痛い。心が、痛い。心が、とても痛い。
孝之は、また地面に倒れ込んだ。
慎二の怒気が、気迫が、鋭い言葉が、孝之の気持ちを追い詰めていく。
彼と目を合わせることができず、孝之は視線をそらしながら力なく口を開いた。
「もう放っといてくれ、俺だって……」
つらいのだ。それをわかってほしい。
だが、返ってきたのは、きつい言葉だけ。
「速瀬《はやせ》はお前の何倍もつらい思いをしてるんだぞ!」
「知ってるよ。水月《みつき》は……水月《みつき》はずっと俺のせいで苦しんでたんだよ」
「そこまでわかってて、お前はなにもしねーのかよ!」
慎二の言葉に苛立ちと怒りが湧き上がり、抑えていた感情が一気に膨れ上がった。
「仕方ないだろ! 俺にはなにもできないんだから!」
叫び、慎二を突き飛ばす。
数歩、孝之から離れるものの、それでも慎二は語気の強さをゆるめない。
「なにもできねーんじゃなくて、なにもしてねーだけだろ!?」
ズバリ自分が感じていたことを指摘され、孝之は言葉が継げなくなる。
慎二が続けて、言葉の刃で斬りつけてくる。
「速瀬《はやせ》はずっとお前のこと支えてたのに、お前は速瀬《はやせ》になにかしてやったのか!?」
自分の中で膨れ続け、いまにも弾けてしまいそうな感情に対し、孝之はあまりにも無力だった。すぐにでもそれを解放しないと、胸が潰れてしまう。
ここで怒るのは筋違いだとわかっている。わかっているが、抑えられない。だから、筋が通らないのを知りつつも、叫んだ。
「じゃ、どうすりゃいいんだよ!」
「お前が自分で考えろ!」
戻ってきたのは、冷たい、しかし、当然のひと言。
あれほど身を捩らせていた感情が、急速に冷めていく。
それに続き、もうどうでもいいや、という投げやりな思いが芽生え始めた。
「……。わかったよ」
「わかったって、なにが?」
「そんなに言うんなら慎二……水月《みつき》のこと、頼むよ」
「……!!」
慎二が、表情を強張らせたのがわかった。それでも孝之は、続けた。自分がとてもひどいことを言っているとわかっているのに、言葉を止めることができない。
「お前、水月《みつき》のこと好きなんだろ?」
とうとう、口にしてしまった。もう、取り返しがつかない。
慎二が、拳を握り締める。
「!」
――バキッ!
次の瞬間、その拳が孝之の横面に叩きつけられた。
衝撃とともに、視界が大きく揺れた。直後、目の前が白くなる。続けて、背中に強い衝撃を感じた。
地面に仰むけに倒れてしまったのだ。しかし、それだけでは終わらなかった。
――ゴキッ!
駆け寄ってきた慎二が、孝之に馬乗りになり、さらに殴りつけてきた。
また、頬に鈍い痛みが走る。口の中が切れたのがわかった。痛い。とても痛い。だがその痛みは、殴られたせいだけではない。
「このっ……」慎二が、孝之の胸倉をつかんで上体を引き起こし、「ダメなんだよっ! 俺じゃあ!! お前じゃなきゃ……」
拳を振りあげ、それを再び孝之の顔に落とした。
――バチッ!
「ダメなんだよっ!!」
慎二の拳が、痛い。
慎二の叫びが、痛い。
慎二の想いが、痛い。
痛い、痛い、痛い。あまりにも痛い。
慎二の声に涙が混じっている。
それも痛い。
情けない自分が、彼の強い想いになにもこたえてやれないでいる。それも痛い。
なにもかもが、痛かった。
「俺とお前のどこが違うっていうんだよっ!!」
――ゴリッ!
声を震わせる慎二の拳が、孝之の頬を打つ。
痛い。心が、痛い。心が、とても痛い。
孝之は、また地面に倒れ込んだ。
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