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君が望む永遠 3

君が望む永遠 3

著: 野島けんじ 原作: アージュ「君が望む永遠」製作委員会
発行: メディアファクトリー
レーベル: MF文庫J シリーズ: 君が望む永遠
価格:420円(税込)
10ポイント還元
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対応端末:パソコン ソニー“Reader”
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著者プロフィール

 野島 けんじ(のじま けんじ)
 福岡出身

解説

 遙は少しずつ現状を認識しはじめていた。事故からどれくらい経ったのか訊かれ、答えられない孝之。だが、姉をだますことに限界を感じていた茜は、ついに「お姉ちゃんは3年間眠っていたの!あの事故から3年経ったの!」と言ってしまう。茜の言葉にショックを受けた遙は、再び意識を失う。その頃、水月は、孝之の気持ちが離れていくと感じ、その寂しさから行きずりの男性とホテルに向かっていた。偶然出会った慎二にとめられたものの、「誰でもいい」と思いつめた水月は、慎二と一夜を共にしてしまい…。大好評のアニメ小説化、ついに完結。

目次

第十一章 病みゆく恋情
第十二章 悔恨の疼き
第十三章 喪失の重さ
第十四章 一歩の勇気
最終章 本当の宝物

抄録

「さっきだってヘラヘラ笑って、なにやってんだよ、お前!!」
 慎二の怒気が、気迫が、鋭い言葉が、孝之の気持ちを追い詰めていく。
 彼と目を合わせることができず、孝之は視線をそらしながら力なく口を開いた。
「もう放っといてくれ、俺だって……」
 つらいのだ。それをわかってほしい。
 だが、返ってきたのは、きつい言葉だけ。
「速瀬《はやせ》はお前の何倍もつらい思いをしてるんだぞ!」
「知ってるよ。水月《みつき》は……水月《みつき》はずっと俺のせいで苦しんでたんだよ」
「そこまでわかってて、お前はなにもしねーのかよ!」
 慎二の言葉に苛立ちと怒りが湧き上がり、抑えていた感情が一気に膨れ上がった。
「仕方ないだろ! 俺にはなにもできないんだから!」
 叫び、慎二を突き飛ばす。
 数歩、孝之から離れるものの、それでも慎二は語気の強さをゆるめない。
「なにもできねーんじゃなくて、なにもしてねーだけだろ!?」
 ズバリ自分が感じていたことを指摘され、孝之は言葉が継げなくなる。
 慎二が続けて、言葉の刃で斬りつけてくる。
「速瀬《はやせ》はずっとお前のこと支えてたのに、お前は速瀬《はやせ》になにかしてやったのか!?」
 自分の中で膨れ続け、いまにも弾けてしまいそうな感情に対し、孝之はあまりにも無力だった。すぐにでもそれを解放しないと、胸が潰れてしまう。
 ここで怒るのは筋違いだとわかっている。わかっているが、抑えられない。だから、筋が通らないのを知りつつも、叫んだ。
「じゃ、どうすりゃいいんだよ!」
「お前が自分で考えろ!」
 戻ってきたのは、冷たい、しかし、当然のひと言。
 あれほど身を捩らせていた感情が、急速に冷めていく。
 それに続き、もうどうでもいいや、という投げやりな思いが芽生え始めた。
「……。わかったよ」
「わかったって、なにが?」
「そんなに言うんなら慎二……水月《みつき》のこと、頼むよ」
「……!!」
 慎二が、表情を強張らせたのがわかった。それでも孝之は、続けた。自分がとてもひどいことを言っているとわかっているのに、言葉を止めることができない。
「お前、水月《みつき》のこと好きなんだろ?」
 とうとう、口にしてしまった。もう、取り返しがつかない。
 慎二が、拳を握り締める。
「!」
 ――バキッ!
 次の瞬間、その拳が孝之の横面に叩きつけられた。
 衝撃とともに、視界が大きく揺れた。直後、目の前が白くなる。続けて、背中に強い衝撃を感じた。
 地面に仰むけに倒れてしまったのだ。しかし、それだけでは終わらなかった。
 ――ゴキッ!
 駆け寄ってきた慎二が、孝之に馬乗りになり、さらに殴りつけてきた。
 また、頬に鈍い痛みが走る。口の中が切れたのがわかった。痛い。とても痛い。だがその痛みは、殴られたせいだけではない。
「このっ……」慎二が、孝之の胸倉をつかんで上体を引き起こし、「ダメなんだよっ! 俺じゃあ!! お前じゃなきゃ……」
 拳を振りあげ、それを再び孝之の顔に落とした。
 ――バチッ!
「ダメなんだよっ!!」
 慎二の拳が、痛い。
 慎二の叫びが、痛い。
 慎二の想いが、痛い。
 痛い、痛い、痛い。あまりにも痛い。
 慎二の声に涙が混じっている。
 それも痛い。
 情けない自分が、彼の強い想いになにもこたえてやれないでいる。それも痛い。
 なにもかもが、痛かった。
「俺とお前のどこが違うっていうんだよっ!!」
 ――ゴリッ!
 声を震わせる慎二の拳が、孝之の頬を打つ。
 痛い。心が、痛い。心が、とても痛い。
 孝之は、また地面に倒れ込んだ。

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