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吸血鬼ハンター“D” 〜吸血鬼ハンター1

吸血鬼ハンター“D” 〜吸血鬼ハンター1


発行: 朝日新聞社
レーベル: ソノラマ文庫 シリーズ: 吸血鬼ハンター
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★★2
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著者プロフィール

 菊地 秀行(きくち ひでゆき)
 昭和24年、千葉県銚子市に生まれる。青山学院大学法学部卒業。在学中に推理小説研究会で活躍。卒業後は、フリーライターで雑誌等に寄稿のかたわら、小説を執筆。昭和57年『魔界都市〈新宿〉』で鮮烈なデビューを飾る。60年から『魔界行』『妖魔戦線』『妖獣都市』等、超伝記官能バイオレンスを発表し人気爆発、超売れっ子作家に。少林寺拳法をたしなみ、ホラー映画を愛し、とにかく小説を書くのが好きな好漢。

解説

 辺境の小村ランシルバに通じる街道。吸血鬼から“貴族の口づけ”を受けたドリスは、吸血鬼ハンターを探していた。西暦12090年、長らく人類の上に君臨してきた吸血鬼は、種としての滅びの時を迎えても、なお人類の畏怖の対象であり、それを倒せる吸血鬼〈バンパイア〉ハンターは、最高の技を持つ者に限られていた。
 そしてドリスが、ついに出会ったハンターの名は“D”、旅人帽を目深に被った美貌の青年だった──。
 菊池秀行の大ベストセラー、吸血鬼〈バンパイア〉ハンター“D”が遂に登場!
※こちらの作品にはイラストが収録されています。
 尚、イラストは紙書籍と電子版で異なる場合がございます。ご了承ください。

目次

第一章 呪われた花嫁
第二章 辺境の人々
第三章 吸血鬼リイ伯爵
第四章 妖魔の弱点
第五章 必殺・飛鳥剣
第六章 血闘──ひとり十五秒
第七章 吸血鬼ハンター死す
第八章 剣光、秘儀を斬る

抄録

 少女は一瞬ためらってから、首のスカーフに手をかけた。
「自分で確かめてちょうだい」
 暮れなずむ空に、風に乗って野獣の叫びが遠く尾をひいた。
 陽に灼けた左首筋──頚動脈のあたりに、うじゃじゃけたふたつの傷痕が、生々しい肉の色を見せて盛り上がっていた。
「“貴族のくちづけ”よ」
 馬上から注がれる青年の視線を感じながら少女は低い声で言った。
 青年は顔を覆ったスカーフを引きおろした。
「その傷からすると、かなり大物の吸血鬼だな──よく動けるものだ」
 最後のひと言は少女への賞(ほ)め言葉である。
 血を吸われた人間の反応は、吸血鬼のレベルによって異なるが、ほとんどの場合、魂を吸い取られた腑抜けの人形みたいになる。肌は白蝋(はくろう)のように色を失い、日がな一日、うつろな眼で日陰に横たわっては、吸血鬼の訪れを、新たな口づけを待つのだ。こうならなくて済むには、桁はずれの体力と精神力とを必要とする。この少女は、そんな例外のひとりなのであった。
 けれども、このときの少女は、普通の犠牲者みたいな、夢遊病者みたいな顔つきをしていた。
 マスクをはずした青年の美貌に我を忘れたのである。男らしい濃く太い眉、すらりとした鼻梁、意志の強さを表すきりりと締まった唇。修羅の世界で数多くの戦いをくぐり抜けてきたもの独特の厳しい顔立ちの中に、憂いを秘めた瞳がかがやき、天工の彫り上げた青春の美の結晶を完璧に仕上げていた。そのくせ、少女がふと我に返ったのは、その眼差しの奥に潜んだなにやら禍々(まがまが)しいものが背筋をなでたからである。
 少女は頭をふって言った。
「それで、どうなの?──来てくれる?」
「吸血鬼ハンターにくわしいと言ったな。──報酬の額も承知か?」
 少女の頬に赤味がさした。
「え、ええ……」
「それで?」
 強力な妖怪・妖獣どもを対象にするハンターほど雇用額は高くなる。吸血鬼ハンターの相場は、最低でも一日五千ダラスだ。ちなみに、旅行用の圧縮食が一パック三食分百ダラスである。
 少女は思い決したように言った。
「一日三度の食事」
「………」
「それから──」
「それから?」
「あたし。好きにして」
 青年の口元がかすかにほころびた。からかうように──。
「おれに抱かれるより、貴族の口づけの方がましかもしれないぞ」
「そんなんじゃないわ!」
 突然、少女の眼に涙が光った。
「あたしは吸血鬼になろうが、誰に抱かれようがかまやしないのよ。そんなもの、人間の価値とは関係ないからね。でも……──そんなことどうでもいい。どうなの、来てくれるの?」
 怒りと哀しみが交錯する少女の顔をしばらく見つめて、青年は静かにうなずいた。
「よかろう。そのかわり、ひとつ断っておく」
「なに? なんでも言って」
「おれは、ダンピールだ」
 少女の顔が凍りついた。まさか、こんな美しい男(ひと)が……。そう言えば、美しすぎる……。
「いいのか? もう少し待てば別のハンターが通るかもしれん。無理はしないことだ」
 少女は口中に溢れた苦い唾を飲みこみ、青年に手をさし出した。笑おうとしたが、笑顔はこわばっていた。
「よろしく頼むわ。あたし、ドリス・ラン」
 青年はその手を握らなかった。最初と同じ、無表情、無感情に──
「おれは“D”と呼んでくれ」

本の情報

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