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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・クラシックス

秘密に満ちた恋

秘密に満ちた恋


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・クラシックス
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 キャサリン・ジョージ(Catherine George)
 ウェールズ生まれ。早くから熱心な読書家で、その情熱はやがて書くことへと向いた。エンジニアと結婚し、九年間ブラジルに暮らす。その後、息子と娘の教育のためにイギリスに滞在することがふえ、一人で過ごす夜に小説を書くようになる。執筆や読書の合間に料理やオペラ、骨董品を見て歩くことを楽しんでいる。

解説

 クロエは暗闇の中に抜け出し、月桂樹の生け垣に向かって走った。家では兄と姉の合同婚約披露パーティがにぎやかに続いている。思わず鳴咽がもれ、涙があとからあとからわいてきた。「どうしました?」突然、生け垣の向こうで男性の声がした。彼はあれこれたずね、クロエの涙の理由を容赦なく言い当てた―今日婚約した男性をひそかに愛しているのですね、と。しばらくのち、化粧を直して再びパーティーに現れたクロエに、母が嬉々として一人の男性を紹介した。著名な法廷弁護士らしい。「ピアズ・オードリーです」彼の声を聞いて、クロエの心は沈んだ。この声、間違いなくさっきの人だ。ピアズは彼女をダンスに誘った。「嘆きの女神さん、君は実に僕の興味を引く……」。

抄録

「よし。今日と同じ時間に迎えに来るよ。さて、こいつたちの夜の散歩は僕が引き受けよう。それがすんだらすぐ帰る」
 裏口を開けると、霧はさっきよりいくらかましになっていた。クロエは身震いしながらピアズに懐中電灯を二つ渡した。「私も行くわ」
 クロエは足元をゴム長で固め、ピアズと犬たちを連れて庭に回った。芝生の斜面を下まで下りきると月桂樹の生け垣の間のゲートを開けてボニーとデュークを濡れた草むらに放した。犬たちは大喜びで走り回った。ピアズとクロエはそれぞれの懐中電灯で犬の周りを照らしてやった。
「最高の気分らしいな」ピアズは犬たちのはしゃぎように笑いながら言った。「幸せな犬たちだ。僕は君たち親子に借りができてしまったよ」
「よしてよ。幸せなのは私たちだわ。バーニーが老衰で亡くなるまで、うちではずっと犬を飼ってたの。ろばやポニーがいたこともあるわ」クロエはため息をついてコートの前を合わせた。「楽しいことずくめの子供時代でもなかったのに、今になってみると思い出すのは楽しかったことばかり。人間って、そういうものなのかしら」
「うらやましいよ。仲のいい家族だったんだね」
「だいたいはね。ジェシカとはほとんどけんかしなかったけど、マーカスとの大げんかは、しょっちゅうだったわ。モデルになってからは、特に」クロエは二本の指を口に当ててぴいっと口笛を吹いた。ボニーとデュークが駆け戻ってきた。「寒いわ。中に入りましょうよ。もう一度コーヒーをいれるわ」
「小さな妹が家族のために犠牲になったことが、新しい家長のお気に召さなかったのかい?」ピアズがたずねたのは、家の中に戻ってからだった。
 クロエは黙ってコーヒーをいれ、ピアズの向かいに腰を下ろしてから、ようやく口を開いた。
「私、あなたに誤解させてしまったみたいね。私は殉教者じゃないのよ、ピアズ。ある意味では、友達みんなにうらやましがられるような生活をしてたんだもの。もっとも、みんなが知ってたのはきらびやかな面だけ。内実はジェシカしか知らないわ。歩き方やダンスの特訓。朝の四時に鳴るモーニングコール。凍てつくような日に一日中、水着の撮影をしたこともあったわ。ろくに食事もとらずに……」クロエは弱々しくほほ笑んだ。「滑稽ね。私はこの家で家族一緒に暮らしたい一心でがんばり通したのに、念願かなって帰ってみたら、マーカスとジェシカは家を出てロンドンで仕事をしてたんですもの」
「しかし、あの二人にとっても、本当の家はここしかないだろう」
「今のところはね。でも、結婚すれば変わるわ。リーザは今のマーカスのアパートでは狭すぎると思っているみたいだし、ジェシカとデイヴィッドはイーリングで一戸建てを改装中なの」
「だから、せめて君だけでも家に残らないと、お母さんがかわいそう?」
「とんでもない。ジェシカとマーカスの結婚が決まったから、次は私の番だって、グエンは張りきっているわ。結婚こそが女の幸せだと信じているの」
「そのとおりかもしれないよ」ピアズはコーヒーカップから顔を上げ、驚いているクロエと目を合わせた。そして、唐突に立ち上がった。「君の不幸を追い払う最善の方策は、誰か好感が持てて気の合う男を見つけ、堅実な関係を築くことだと思う」
「ずいぶん簡単そうな話ね」
「そう聞こえたのなら謝るよ。生きるということは決して簡単じゃない。そう思うのは極端な楽天主義者か完全な愚か者だけだ。とにかく、せっかくの人生を無駄にしてはいけないし……そんな顔をするのもやめろ!」ピアズはつかつかとクロエの前にやって来て彼女を椅子から立たせ、しっかりと抱き締めた。「だめだ。放すものか」ピアズはもがくクロエのあごに指をかけて上を向かせた。そして一瞬彼女の目を見つめたあと、顔を近づけ、激しくキスをした。クロエはもがき続けたが、ピアズは優しく執拗にキスを続けた。やがて、クロエはそっと唇を開いてキスを受け入れた。体がとろけるような興奮が巻き起こり、突然、彼女は後ろから銃弾を受けたようにがっくりとピアズの体にもたれかかった。閉じた目から涙があふれ、ピアズの頬にまで伝わった。ピアズは抱擁をゆるめて顔を上げた。「なぜ泣くんだい?」
 クロエは目を開けた。その目には強い自己嫌悪が浮かんでいた。「こんなこと、できっこないと思ってたのに」
「こんなこと?」
「わかっているはずよ! ほかに愛する人がいながら、あなたとこんなこと……」
「ささやかな心の安らぎを見つけることは罪にはあたらないよ、クロエ」
「うまい言い訳を見つけてくれるのね」クロエは目に涙をためたまま無理にほほ笑んだ。「新年の誓いもこれで水の泡だわ。泣かないって決めたのに」
「無理な誓いを立てても守れるわけがない」
 クロエは音高く鼻をすすった。「あなたにはみっともないところを見られてばっかりだわ。いつもはもっと分別があるのに。本当よ」
「信じるよ。恋は人を無分別にするそうだ。幸か不幸か、僕は恋の病を患った経験がないが」ピアズはにっこりした。「とにかく、病気には治療が必要だ。結婚は最高の治療薬かもしれない」

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