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和書>小説・ノンフィクションハーレクインシルエット・ラブ ストリーム

笑顔の行方

笑顔の行方


発行: ハーレクイン
シリーズ: シルエット・ラブ ストリーム
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 シャロン・サラ(Sharon Sala)
 強く気高い正義のヒーローを好んで描き、業界のみならず読者からも絶大な賞賛を得る実力派作家。息子と娘、それに孫が四人いる。“愛も含め、持つ者は与えねばならない。与えれば百倍になって返ってくる”が信条。ダイナ・マコール名義の著書も出版されている。

解説

 旅の途中で立ち寄った町には、難解な事件と激しい恋が待ち受けていた。

 ■自分の身代わりになって撃たれた相棒の死が、敏腕刑事ジャド・ハンナを腑抜けにしてしまった。悪夢にうなされ、何にも集中できない。とうとう休暇を命じられ、彼は放浪の旅に出た。心は空っぽだったが、通りがかりの町で幼い少女が牛に踏み倒されそうなのを目にすると、車ごと突進して命を救った。刑事の勘は染みついていた。少女の母親チャーリーにすすめられて、しばらく農場の一部屋に滞在することになったけれど、未婚の母チャーリーと、よそ者ジャドは、人目を引いた。そんなとき、町に不可解な事件が起きた……。

抄録

 翌朝、空はどんよりした灰色の雲に覆われていた。チャーリーはベッドから足をおろし、おそるおそる体重をかけてみた。明らかによくなっている。これならひと安心だ。ジャド・ハンナを客として扱うのは兄がそばにいて緩衝役になってくれるときでも難しい。ふたりきりだとなお大変だった。どういうわけかジャドのことを意識してしまうからだ。はじめは命を救ってくれたことへの感謝の気持だと思った。けれども、ジャドにキスする場面をはじめて想像したときから、その理屈は通らなくなった。これまで彼女は多くの人々に感謝してきた。だが、その人たちにジャド・ハンナにしたいと思っているようなキスをしたくなった経験は一度もない。
 ひと晩じゅう、チャーリーは自分の良心と闘った。そして明け方近くに、男性に夢中になるべきではないと結論を出した。男性に気を許したあげく未婚の母となった。あんなことは二度とあってはならない。
 レイチェルが起きる前にキッチンへ行って朝食をとろうと思い、静かに服を着替えた。天気を考慮してショートパンツの代わりにブルージーンズを選び、Tシャツの裾をジーンズに押しこんで鏡に目を走らせた。髪はきれいな三つ編みになっている。服は古びてはいるものの清潔だ。はれた足を履き古したサンダルに突っこんだときもさほど違和感はなかった。なのに、ベッドルームを出たとたん、なにかやり残したような気がして仕方がなかった。そのとき、ジャドが彼の部屋から出てきた。ふたりは互いに驚いて、ほかには誰もいない廊下に立ちすくんだ。
 ジャドがなにか言いかけたので、チャーリーは指を唇にあてて黙らせ、キッチンへ導いた。
「レイチェルが起きるわ」廊下の奥の部屋を示しながら説明する。「あの子、眠りが浅いの」
 ジャドはうなずいた。だが心は、彼女のきっちりした三つ編みからところどころはみでている巻き毛や、額にかかる羽毛のような髪に奪われていた。
 チャーリーはコーヒーポットを手にとり、水を満たした。ジャドがそばにいると落ちつかない。
「よく眠れた?」彼女は尋ねた。
「ああ」
 ふたりのあいだに沈黙が流れた。
「足の具合はどうだい?」今度はジャドが尋ねた。
 チャーリーはつくり笑いを浮かべて振り向いた。「よくなったわ。ありがとう」
 会話がとぎれ、気まずい雰囲気になった。
 とうとうふたりは同時に向きなおって口を開こうとし、決まり悪そうな笑い声をあげた。
「あなたからどうぞ」チャーリーが言った。
 ジャドは首を振った。「レディファーストだ」
 彼女はフライパンを火にかけ、冷蔵庫から卵の入ったボウルをとりだした。
「卵はスクランブルでいいかしら?」
 彼は苦笑した。「かまわないよ。ぐちゃぐちゃに混乱したぼくの頭の中身に、まさにぴったりだ」
 チャーリーは手をとめた。ジャドが仕事からの逃避について軽口をたたくのは今がはじめてではない。本当は、口で言うほどのんきに構えているわけではないんじゃないかしら。
 彼女は卵を置いた。「ねえ、質問してもいい?」
 ジャドは肩をすくめた。「どうぞ」
「あなた、なにがあったの?」
 彼の笑みがすっと消えた。「知るもんか」それだけ言って顔をそむける。
「ごめんなさい。わたしには関係ないことよね」
 ジャドはため息をつき、再び彼女に向きなおった。「ぼくのパートナーは退職の前日に死んだんだ。ぼくをねらった弾を代わりに受けてね。彼の奥さんの顔が今でも頭から離れない」
「まあ、ジャド……」
 彼はしかめっ面になった。「ダンは殉職したとぼくが告げたとき、彼の奥さんもそう言ったよ」
「警官は危険を伴う職業だわ。彼はそのリスクがわかっていたはずよ。奥さんもね」
 ジャドはその言葉をかみしめた。理屈では、チャーリーが正しいとわかっていた。しかし、理屈と感情はめったに意見が合わないものだ。
「シャーロット?」
 チャーリーは顔をあげた。名前で呼ばれたことなど久しくなかった。ジャドの口から出たやさしい響きを耳にして、彼女は身を震わせた。
「なに?」
「ぼくもひとつきいていいかい?」
 チャーリーはとまどった。だが、なんとかほほえんでうなずいた。「ええ、いいわよ」
「レイチェルの父親を愛していたのかい?」
 彼女の笑顔が苦々しげにゆがんだ。「昔はね。わたしがまだ純粋にも、人は思ったままを口にすると信じていたころは」
 ジャドはたじろいだ。チャーリーの怒りは理解できる。驚いたのは、彼女の答えが胸に響いたからだ。誰かに欺かれて捨てられる痛みは、彼自身よく知っている。とっさにジャドは彼女の頬に手をふれた。
「悪かった」
 チャーリーは凍りついた。そして頬にあてられたてのひらのぬくもりや彼の声のやさしさを無視しなさいと懸命に自分に言い聞かせた。
「謝ることなんてないわ」彼女はそっけなく言い、おかしなまねをしてしまわないうちに顔をそむけた。
 ジャドは悲しみと憤りを感じた。チャーリーが人に弱みを見せたがらないのはわかる。昔一度そういう部分をさらけだし、つらい目に遭ったのだから。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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