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和書>小説・ノンフィクションハーレクインシルエット・ディザイア

熱い契約

熱い契約


発行: ハーレクイン
シリーズ: シルエット・ディザイア
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★★2
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著者プロフィール

 ナリーニ・シン(Nalini Singh)
 物心ついたときから書きたかったという。英文学と法律の学位を取り、二年間法律事務所に勤めていたが、二十五歳の誕生日を前に執筆に専念することを決意。生地のフィジーがもっともロマンチックな場所だと語る。現在は福岡県在住。

解説

 テーラーは途方に暮れていた。このままでは愛する弟の養育権を継父に取られてしまう。そんなテーラーの事情を知ったかつての上司ジャクソンは、驚くべき提案をした。自分と結婚して、弟を引き取ればいいというのだ。確かに著名な映画プロデューサーである彼と家庭を築けば、弟を手放さずにすむかもしれない。だけど、彼はどうしてそんな申し出をするのだろう? いぶかるテーラーに向かって、ジャクソンは告げた。「僕は子供が欲しい」
 ★2004年「シークにさらわれて」で彗星のごとくデビューしたナリーニ・シンの新作をお届けします。前作に劣らぬ華麗でめくるめくようなラブストーリーです。★

抄録

「まだ同じ派遣会社に登録しているのかい?」
「ええ」
「アルバイトが必要なときは、いつも君を指名したんだけどね」
「まあ」テーラーはジャクソンのほうに少し体を向けた。「知らなかったわ」少し間があく。「もう映画業界を希望していないものだから」
「なぜ?」僕を避けているのだろうか?
「働きたい環境ではないからよ」
 信号が赤になったので、ジャクソンは車をとめてテーラーを見た。「環境?」
 頬をややピンク色に染めて、テーラーは肩をすくめた。「不節制、派手、お金、お金、お金」
 テーラーがジャクソンの住む世界に反発していることは彼も感じていた。「芸術はどうだい?」
「芸術がなんなの?」テーラーが鼻先で笑った。
 信号が青に変わった。ジャクソンは笑顔で、慎重にアクセルを踏んだ。「かわいそうに。若くして、幻滅してしまったんだね」
「私を子供扱いしないで!」鋭い口調だった。
 派遣の契約期間が終了すると、ジャクソンは正社員としての契約を申し出たのだが、テーラーは辞めると言って聞かなかった。彼は引きとめたかったが、彼女の若さと無邪気さの両方を奪わないうちに、心を鬼にして彼女を去らせた。しかし、いつか戻ってくるのではないかとずっと待ちつづけてきたのだ。その思い出がジャクソンの声をそっけなくさせた。「すまない」
「いいえ、すまなくなんかないわ」
 ジャクソンは肩をすくめた。「返す言葉もないよ。子供にしては、皮肉な言いまわしだね」三十二歳のジャクソンはテーラーよりたった八歳年上なだけだったが、心は何十歳も年をとっていた。
 テーラーの心は爆発寸前だった。なぜ彼はいつも私を子供扱いするのだろう?「私は子供じゃないわ!」彼に対する感情は明らかに大人のものなのに。
 ジャクソンの大きな体にすぐ影響を受ける自分がテーラーはこわかった。奔放な熱情をどう扱えばいいのかわからない。男性を愛することを自分に許した覚えは一度もなかったのに、ジャクソン・サントリーニに出会ったとたんに、欲望の火がついた。
 低い笑い声がテーラーの頬と心を熱くさせる。「君は赤ん坊だよ。僕の次にね」
「ひどいわ」怒りのあまり、言葉が出てこない。
「ひどい?」ジャクソンがまた笑う。
「大人になってしまえば、年齢はたいした問題ではないわ」テーラーはジャクソンに一人の女性として認めてもらいたかったが、そう思う深い意味はあえて考えないようにしていた。
「いや、問題だね」彼は憎いばかりに落ち着いている。「生きている時間が長いと、経験も豊かになる」
「必ずしも、そうとは限らないわ!」
 ジャクソンの冷笑的な視線は、証明できるものならしてみろと、けしかけているように思えた。
 憤懣《ふんまん》に耐えかねて、テーラーは言い返した。「私は子供を育てているのよ。それでも、あなたは同じことが言えるの?」
「いや」あまりに冷たいジャクソンの答えに、車内が突然、冷凍庫になったように感じられた。
 不注意な言葉づかいで、ジャクソンをひどく怒らせてしまったようだ。「ごめんなさい」テーラーは静かにあやまった。「言いすぎたわ」
「ほんとうのことだよ」感情のない反応だ。
 テーラーは唇を噛《か》み締め、話を続けようかどうか思案に暮れた。「そうね。でも、ボニーが亡くなって、まだ日も浅いのに……言うべきではなかった」
 ニックの養育権を継父のランスに奪われるのではないかという悩みはテーラー自身の問題だ。そのために、向こう見ずなふるまいをしてしまった。不安をまぎらわすために出かけた数時間のうさ晴らしも、悪夢という結果に終わった。ジャクソンに助けてもらわなかったら、まったく悲惨な一日になっていただろう。それなのに、彼を怒らせるなんて、最悪だ。
「ボニーが薬物の過剰摂取で亡くなって一年になる」声が硬くなるのがジャクソンは自分でもわかった。一年前に失ったものの打撃からようやく立ち直ったばかりだった。「世間で言われていたように、ボニーが亡くなる前から僕たちの結婚生活は終わっていた」
 妻とは心が離れていたが、ジャクソンには仕事があったし、職場には輝くばかりの至福の瞬間――テーラーの笑顔があった。薬物依存症のボニーとは二年以上ベッドをともにしていなかった。もっとも妻の死の四カ月前、運命のあの瞬間を別にしてだが。
 結婚当初はボニーも愛らしく、輝いていた。しかしその後、ボニーの父の訃報《ふほう》が彼女から喜びを奪った。妻はそれ以来、蜃気楼《しんきろう》のような存在になったが、慰めを求めて近寄ってこられると、ジャクソンは拒めなかった。洗練された見かけの仮面が悲しみにはがされたときも、同じだった。
 そして、ボニーは身ごもった。
 しかし、薬物の摂取は、ボニーばかりか、おなかの赤ん坊の命まで奪ってしまった。もしそうでなければ、ジャクソンは今ごろ父親になっていたはずだし、テーラーの言い分に反論することもできただろう。死体解剖の結果、ボニーの妊娠がわかったときの、ずたずたに引き裂かれた心の痛みを、彼は今もまだ覚えている。その後の検査で、胎児の肌の色と血液型はジャクソンと同じだったことも判明した。
 しかし、耐えがたいほどの悲しみも、ボニーの胎内に小さな命が芽生えていた事実を知ったときの怒りにはおよぶべくもなかった。ジャクソンの子供を宿しているのを知っていながら、ボニーは愛人とベッドをともにしたばかりか、命を失う危険性のある薬物を何種類も摂取したのだ。
 すべてがわかった瞬間、憎しみがウイルスのように体中に広がり、ジャクソンから愛情を感じる力を奪ってしまったのだった。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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