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黒色悪夢 上

黒色悪夢 上


発行: キリック
シリーズ: 黒色悪夢
価格:500pt
形式:MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆3
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解説

 ある活火山の麓に位置するM市には、古代より羅刹女を信仰する人々がいた。羅刹女とは、一般的には鬼子母神のような護法善神で、仏教に帰依してその守護者となった十羅刹女のことを指す。だが、その信仰の中心一族であり、代々地元の名士と言われた村雨家は、のちの事件に関わるとんでもない秘密を抱えていた。市内の高校に通う村雨優は、ある日、クラスメイトが惨殺される悪夢を見る。夢の中で死んだのは、優のかわいらしさに嫉妬しているのか、いつもいやがらせをしてくる女子生徒の一人だった。思わず、その夢の内容をクラスメイトたちの前で告げる優。その後、あれはまるで予知夢だといわんばかりに、件のイジメっ子は凄惨な死を遂げる。以来、連続する悪夢と、怪異と、殺人事件。オカルトと現実の狭間で、混迷を極めた一連の騒動は、やがて受け入れがたい真実を、優に突きつけるのだが……。

 悪夢と祟りの世界にようこそ……鬼才・梅津裕一の新たなる挑戦! 複雑怪奇なトリック・ミステリー・ホラー前編!!

目次

 第一部
 第二部
 第三部
 第四部
 第五部

抄録

 また、夢だ。
 前回の悪夢と同様、自分がちゃんと夢を見ていることを認識している。
 もう、勘弁してほしい。
 まさか、新たな犠牲者が出るとでもいうのだろうか。
 こんな夢は見たくない。これでは、拷問と変わりない。
 よくよく周囲を見れば、ひどく奇妙な場所だった。神社のようだ。
 しかしこんな神社があっただろうか。
(御子様が)
(御子様がおいでじゃ)
 目の前には、鳥居が立っている。なぜか入らなくては、という気がした。
 朱塗りの鳥居のようだが、まるで血でも塗りつけたような、くすんだ色合いをしている。こころなしか、鳥居は本当に血臭を放っているようにも感じられた。
(御子様)
(御子様)
 いつのまにか、すぐそばに子供たちがいた。
 男の子と女の子のようだが、二人とも仮面をかぶっている。
 仮面を見て、ぞっとした。
 凄まじい憤怒の形相をたたえた、鬼女のような顔が彫り込まれていたのだ。
 子供たちが踊りながら、わらべ歌を歌っている。これがまた、うす気味悪いものだった。
(あの子が憎い。あの子が嫌い。あの子はいらない)
(ならば羅刹女さまに)
(羅刹女さまに)
(喰らってもらお)
(そうしましょ)
 単調な音程で、えんえんと同じ歌詞を子供たちは繰り返している。
 神域に入ると、さらに血の匂いが濃くなっていくような気がした。
 なんなのだ、この神社は。
 目の前には、かなり大きな拝殿が建っていた。
 優は、神社の建築様式などよく知らない。それでも、これが神道だけでなく、仏教建築の影響をうけたものであることがなんとなくわかった。
 ここは、なにか「ひどくよくないところ」だ。それなのに懐かしい気がするのが不思議だった。
 いつしか黒い影がいくつも周囲にわだかまっている。
 夢だから、なにが起きても不思議ではない。それでも黒い何者かが、ひどく不気味で、厭《いと》わしいものに感じられてならない。
(来ないで!)
 思わず、優は悲鳴をあげた。
(これは異なことを)
(御子様は気が触れたか)
(いや、気触れでなければ御子様にはなれぬであろう)
(これはしたり)
 こいつらは、こちらの頭がおかしいと言いたいのだろうか。
(もう……なんなのよ!)
 その絶叫で、目が覚めたりはしないだろうか。
 唐突に、目の前に人が現れた。
 目隠しをされているが、優の高校の制服を着ている。女子のようだ。
(さあ、御子様、御役目を)
(羅刹女さまに捧げねば)
 いつのまにか、手には日本刀のようなものを握らされていた。
 これは所詮は夢だ。いくらでも理不尽なことは起こりうる。
(やめて……もうやめて……)
 よく見ると、目の前の生徒は体に荒縄が巻かれ、抵抗できないようになっていた。しかも、その声には聞き覚えがある。
 福井みずほだ。
(みずほ……さん……?)
(もう、私、殺されたんだよ、これで充分でしょう!)
 なんという悪夢だ。みずほは、自分が殺害されたことを理解している。
(充分ではない)
(羅刹女様にお捧げせねば)
(さあ、御子様、ご存分に)
 存分に、なにをすればいいというのか。
(できうる限りむごたらしく)
(この者は羅刹女様への捧げものなれば)
 その瞬間だった。
 いままで、みずほにイジメられてきたという憎悪が、凄まじい勢いで心の奥底から噴き上がってきた。
 まるで、自分が自分でなくなってしまったかのようだ。
(福井さん……あなた、私のノート破いたり、死ねとか落書きしたり、いろいろしてくれたわよね)
(だって……それは、あなたが普通じゃないからっ)
(普通じゃないってどういうこと)
(あなたは……)
 それからみずほがなにか言ったが、聞こえなかった。
(まあ、いいわ)
 優は、笑った。
 まず、刀でみずほの手の指を、一つずつ切断していった。
(痛いいいいいいいいいいいいい)
 むこうは絶叫しているが、それすらも快い音楽のように聞こえる。
 日本刀の切れ味は素晴らしかった。
 みずほの耳を切り落とし、鼻を削ぎ、両眼をえぐった。ぶざまな蛙のような声をあげる、みずほの醜態が愉快だった。
 さらに制服を切って左右の乳房をそぎ落とし、腹部にゆっくりと日本刀を差し込んでいく。
(ひぎっ)
 みずほがまた、泣いた。
 不思議と、どうすれば簡単に死なないか、優は知っていた。
 さらに腕を切り、膝も切る。苦痛の集中する点を、日本刀の切っ先でえぐっていく。
(あば……ば……)
 みずほは、あきらかに死にかけていた。
 いや、本物のみずほはもうとっくに死んでいるのだ。これはただの夢にすぎない。
 それにしても、愉しい。人に苦痛を与えるのが、こんなに愉快だとは思わなかった。
(さすが御子様)
(ひさびさの贄で、羅刹女様もさぞお喜びのことでしょう)
 最後のとどめに、優は哄笑しながらみずほの頭を斬り飛ばした。

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