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黒色悪夢 下

黒色悪夢 下


発行: キリック
シリーズ: 黒色悪夢
価格:500pt
形式:MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆4
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解説

 ある活火山の麓に位置するM市には、古代より羅刹女を信仰する人々がいた。羅刹女とは、一般的には鬼子母神のような護法善神で、仏教に帰依してその守護者となった十羅刹女のことを指す。だが、その信仰の中心一族であり、代々地元の名士と言われた村雨家は、のちの事件に関わるとんでもない秘密を抱えていた。市内の高校に通う村雨優は、ある日、クラスメイトが惨殺される悪夢を見る。夢の中で死んだのは、優のかわいらしさに嫉妬しているのか、いつもいやがらせをしてくる女子生徒の一人だった。思わず、その夢の内容をクラスメイトたちの前で告げる優。その後、あれはまるで予知夢だといわんばかりに、件のイジメっ子は凄惨な死を遂げる。以来、連続する悪夢と、怪異と、殺人事件。オカルトと現実の狭間で、混迷を極めた一連の騒動は、やがて受け入れがたい真実を、優に突きつけるのだが……。

 悪夢と祟りの世界にようこそ……鬼才・梅津裕一の新たなる挑戦! 複雑怪奇なトリック・ミステリー・ホラー後編!!

目次

 第六部
 第七部
 第八部
 第九部
 第十部
 終章

抄録

 ……夢のなかの神社の前に、優は立っていた。
 いつも禍々しい霊気を放っていた場所だが、今夜は普段よりもいっそう不吉な感じがする。
 まるで瘴気のような黒い霧に、あたりは覆われている。
 普通、霧といえば白いものだというのに。
 よろけるようにして、優は鳥居へと近づいていった。
 血なまぐさい匂いが鼻孔を刺激する。血臭は、以前より濃厚になっていた。
 この先には進みたくない。そう思っているのに、足が勝手に動いてしまう。
 あきらかに、異常だった。
 遠くから、独特の節回しの童歌が聞こえてきた。
 あの忌まわしく、なんともいえず、厭な気分になる歌だ。
(あの子が憎い。あの子が嫌い。あの子はいらない)
(ならば羅刹女様に)
(羅刹女様に)
(喰らってもらお)
(そうしましょ)
 聞いているだけで気分が悪くなってくる。
 男女の童たちがこちらに近寄ってきた。
 その顔を見たとたん、優は絶句した。
 いつも鬼女のような仮面をつけていた二人の顔が、黒い霧のようなもので真っ黒に塗りつぶされていたのである。
 さらに、これまで聞いたことのない歌詞を、二人は歌いつづけた。
(あの御子、憎い。あの御子、穢れ。あの御子、いらない)
(ならば羅刹女様に)
(殺してもらお)
(そうしましょ)
 続いて神社の境内に、黒い影法師のようなものが何体も現れた。
 彼らは男とも女ともつかぬ、奇妙に金属的な、不愉快極まりない声で言った。
(ケガレタ、ミコ、ガ)
(キヨメハ、ムリダナ)
(オロカナ、ミコ)
(シヌシカ、ナイナ)
 死ぬ。
 羅刹女様に祟られ、殺される。
 激甚《げきじん》な恐怖に、全身の血が凍りついたような気がした。
 自分は普通の死に方はできない。やはり羅刹女様のお怒りを買ってしまったのだ。
 いままで福井みずほや島田寧々を、贄として捧げた。
 間接的にではあるが、彼女たちを殺した。
 あの二人の恐怖と絶望を、いまはじめて、優は理解した。
(お助けください)
 震え声が唇からもれた。
(羅刹女様、お願いします。なんでもします。どんなことでもしますから。だから、命だけは……)
 なんと情けないのだろう。
 二人にこの神社であれだけひどいことをしておきながら、いざ自分が殺されるとわかると、惨めに命乞いをしている。
 やがて神社の上に、やはり黒い霧で覆われた姿がぼうっといくつも現れた。
 漆黒の影のようだが、長い黒髪が揺れている。本能的にその正体を、優は理解した。
 あれこそは、羅刹女様だ。
 正確には、羅刹女様「たち」というべきだろうか。
 十人の女性、否、禍々しい女神たちが神社の社殿の上にならんでいる。
 心底、恐怖を覚えた。心臓の鼓動が異常なほどに高まっていく。全身にびっしりと鳥肌が浮かび、いやな汗がだらだらと流れていく。
 羅刹女様は、仏法の守護者だったはずだ。
 しかし、ここにおられる女神たちは「なにかが違う」のである。
 より猛々しい、荒ぶる女神だ。
 神道でいう荒御魂《あらみたま》だけが十柱の女神となって顕現したようにも感じられる。
 背後からは、男女二人組の童たちのあの奇怪な歌が聞こえてくる。
(あの御子、憎い。あの御子、穢れ。あの御子、いらない)
(ならば羅刹女様に)
(殺してもらお)
(そうしましょ)
 どうすればいいのか、わからない。
 優は、全身をがくがくと震わせたまま、土下座をした。
(ど、どうかお許しを……)
 次の瞬間、十柱の女神たちがいっせいに、冷酷きわりない声で答えた。
(汚れた御子よ。我らは、許さぬ)

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