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電撃・大和艦隊2

電撃・大和艦隊2

著: 稲葉稔
発行: 学研
シリーズ: 電撃・大和艦隊
価格:840円(税込)
10ポイント還元
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対応端末:パソコン ソニー“Reader”
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著者プロフィール

 稲葉 稔(いなば みのる)
 1955〜
 熊本県生まれ。放送作家を経て、1994年、小説家デビュー。『電撃・大和艦隊』シリーズ、『蒼海の盾』シリーズなど。

解説

 昭和十七年六月。真珠湾奇襲から珊瑚海海戦を経て、日・米の艦隊が太平洋の覇権をかけたミッドウェイ大決戦の幕が開いた。連合艦隊は、ミッドウェイとアリューシャン作戦を一体化して、一部隊がアッツ、キスカを制圧。主隊がミッドウェイを目指した。最前線には、南雲座乗の空母『赤城』率いる第一機動部隊が展開していた。超能力を発揮する鳴海大輔は「特命参謀」として赤城に乗り込むが、ハワイを発ち、西進する米太平洋艦隊の攻撃機の前に沈没の剣が峰に立つ。鳴海のテレパシーで危機を察知した片山丈は、高速戦艦に改造した『大和』で救援と、敵艦隊撃滅に大海原を驀進する!!

目次

あらすじ
第一章 索 敵
第二章 陥 穽
第三章 激 闘
第四章 反 撃
第五章 猛 攻

抄録

 細萱の指令を受けた第一水雷戦隊は、アダック攻略を保留にしてアッツ島をめざしていた。目標の島が近づくにつれ霧が濃くなり、視界は悪くなっていった。
 旗艦「阿武隈」に座乗する大森少将は、部下の士気を高めるために艦内の各部署を歩き、檄《げき》を飛ばしていた。
「我々は力が余っている。気を抜かず一気にアッツを落とすぞ!」
 彼はキビキビとした足取りで通路を歩くと、艦橋に駆け上がった。後続部隊が霧の漂う海を驀進《ばくしん》していた。駆逐艦「若葉」「子ノ日」「初春」「初霜」に、運送艦と輸送艦がつづいている。
 同部隊は艦砲でアッツ島を叩き、一二〇〇名の歩兵部隊を上陸させる予定だ。
 午前七時半、同部隊はアッツ島の島影を霧の向こうに確認した。
「砲撃用意!」
 砲手の声が高らかに冷たい海の上に響き渡った。
「距離六五〇〇!」
「撃てッ!」
 ドドーン! と、重々しい砲声が広がっていった。アッツ島への艦砲射撃は数百発に及んだ。間断なく発射される砲弾が、冷え切った空気を切り裂いて、島に黒煙と土煙を立ち上らせた。砲煙が緩やかな風に押し流され、霧に呑《の》み込まれていった。
「おかしいな」
 大森司令は首を傾《かし》げた。敵の反撃がいっこうにない。
「前進! 前進せよ! 距離を詰める」
 大森はアッツ島に各艦艇を静かに接近させた。敵を牽制《けんせい》するために、散発的な砲撃を行ったが、それでも反撃はない。さらに彼は島に近づいた。
 双眼鏡にしがみついていた彼は、前方の島をよくよく観察した。敵の動きはまったく見られない。敵はいないのか?
「見張員、敵は見えるか!」
 大森は艦橋を出て声をかけた。
「まったく見えません!」
 まるで肩すかしを食ったみたいだった。何の反応もないと不気味でもあるが、ここは一気呵成《いつきかせい》に上陸させるか。大森は決断した。牽制砲撃を実施しながら、上陸部隊を乗せた輸送船を前方に出した。
「用心しろ! 敵の罠《わな》かもしれない」
 各艦艇は砲撃態勢をとりながら前進する輸送船を見守った。やがて、輸送船から上陸用舟艇が下ろされ、海岸にぞくぞくと送り込まれた。陸軍歩兵部隊は敵の反撃や抵抗にあうこともなく、上陸に成功した。
「何だ、この島に敵はいなかったのか……」
 作戦は終了した。日本軍は同島に敵守備隊が居座っていると思い込んでいたが、実際は三九名の原住民と牧師夫妻がいるだけだった。
 
 これより少し遅れて大野《 》竹二《たけじ》大佐を指揮官とする攻略部隊が、キスカ島に殺到していた。
 旗艦軽巡「木曽」、同じく「多摩」、駆逐艦「響」「暁」「帆風」から一斉砲撃が行われたが、ここも同じく反撃はなかった。
 大野は敵は微力で、砲撃によって壊滅させたと思い込むと、そのまま陸軍部隊六〇〇名を難なく上陸させた。実にあっけなく作戦は完了した。
 この島もアッツと同じく、守備隊といえる敵兵力はなく、観測所にわずか一〇名の勤務員がいるだけだった。
 
「我が隊は予定通りアッツ、キスカを占領。上陸作戦に成功しました」
 報告を受けた細萱は心なし安堵《あんど》はしたものの、満足はしていなかった。無血上陸は喜ぶべきことではあるが、当初予定のダッチハーバーとアダックへの作戦は保留のままである。
 心残りがあった。しかし、北方作戦はこれで終了し、一応成功したと見なさなければならなかった。彼の心は北方のどんより曇った空と同じだったが、死傷者をひとりも出すことなく帰還できることを喜ぶべきだと自分に言い聞かせた。
「しかし、我々の作戦は茶番だったのではないかな」
 帰投を始めた艦の艦橋で細萱は、熱いお茶を飲んでいた。
「長官、そうおっしゃらないでください。我々の作戦は成功したのです」
 艦長は茶柱が立ったと、茶碗《ちやわん》を見つめ、頬《ほお》をほころばせた。
「しかし、誇れるような凱旋《がいせん》帰国とはならない」
「勝利は勝利です」
「……そうなるのだろうが、敵兵力に打撃を与えることはできなかった。気休めで思うのもいいが、しっくりこない」
「長官、本作戦の目的は、ミッドウェイ作戦を成功させるものですから、敵兵力がこちらに割かれただけでも十分とすべきじゃないでしょうか」
 艦長は人のいい男で、慰めてくれる。しかし、細萱は何度も不満のため息を漏らした。
 ――ミッドウェイも北方作戦と同じで、茶番になったらどうなる?
 細萱は波を砕く艦首付近に目を注ぎながら、そんなことを思った。
 まさか、そんなことはあるまいが――。
 細萱はそこに南洋の海が見えたように、目を細めた。
 それにしても、俺もミッドウェイに行きたかった。彼は心中でつぶやいた。この戦いの本舞台はこんな北ではないのだ。
 細萱が思うように、本作戦の舞台の幕は、ようやく開けられたばかりだった。


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