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和書>小説・ノンフィクションハーレクインシルエット・コルトンズ

長すぎた別離

長すぎた別離


発行: ハーレクイン
シリーズ: シルエット・コルトンズ
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 キャロリン・ゼイン(Carolyn Zane)
 デビュー以来、シルエットシリーズに三十作以上の作品を執筆し、全世界で百万冊以上を売り上げた実績を誇る。現在、夫のマット、まだ幼い二人の娘マデリンとオリビアとともに、オレゴン州ポートランドのウィラメット川のそばにある風光明媚な土地に住んでいる。ローカルTVのコマーシャル制作に携わっていた十年間の都会生活のあと、一大決心をして田園生活を選び、作家となった。

解説

 細々と営むアンティークショップに入ってきた男性を見て、アニーは凍りついた。ワイアット・ラッセル! 彼がなぜこんな田舎町に? ワイアットは大学時代の恋人だった。ところがアニーが父の病気で帰省を余儀なくされたとたん、彼はあっさり別れを告げた。以来彼女は傷心を抱え、故郷の町で質素な暮らしをしてきた。やっと乗り越えたかと思ったのにまた現れるなんて。身をこわばらせたアニーに、ワイアットはよりセクシーさを増した微笑を向けた。

抄録

 彼女はおかしそうな顔をした。「あなたはたいした弁護士ね。どっちにしても、いつかはここに戻ってこなくてはならなかった。あの“混乱”はきっかけにすぎないわ。ひとかどの画家になるというばかげた夢をあきらめたのも――」
「ばかげてなどいない!」
「父の命のほうがよほど大事だわ」
 ワイアットはため息をついた。「そうだね。ただ、あのころのぼくには理解できなかった。最近になって、家族の大切さがわかりかけてきたんだ。これまで何年もわかっていなかった」彼の視線が眠っている子供たちに戻った。「アニー、ぼくはきみを失った痛手から立ちなおれないだろう」
 アニーは目を閉じた。わたしも、と言いたいけれど、それは愚かな行為だ。ふたりはそれぞれの人生を歩んでいるのだ。かけ離れた人生を。「今さらどうにもならないわ。終わったことよ」
「謝ることはできる。許しを請うこともできる。ふたりのあいだのわだかまりが解ければ、ぼくはよく眠れるようになるだろう。将来――」
 アニーはいらいらして背筋をのばし、カールした髪に手を入れた。手を腰にあてて肘を張り、ワイアットを見つめる。「将来ですって?」声を張りあげて前に身を乗りだしたあと、再び小声で言った。「あなたはここから遠く離れたところで暮らしている。立派な人生だわ。でも、わたしも同じなの。わたしはここでの暮らしが気に入っているし、家族が必要だわ。特に子供たちはね。遠くに住む人と友達でいるなんて、無意味なの」
 ふたりは遠く離れて住むようになったせいで別れたのだと、アニーにはわかっていた。今さら友達になったところでどうなるというのだろう。
 しばらく黙りこんでいたワイアットが口を開いた。「きみはここにいて本当に幸せなのかい?」
「もちろんよ。どうしてそんなことをきくの?」
「以前のきみは画家かイラストレーターになることばかり考えていたからだ」
「今では母親になり、片田舎で年をとっていくばかりというわけね?」
「そうは言っていない」
「そういうことでしょう」
 アニーは立ちあがり、紙皿などを片づけ始めた。これ以上話すことはないわ。腕いっぱいにごみを抱えてレジカウンターまで行き、その下のごみ箱に捨てる。両手を払って体の向きを変えると、ワイアットにぶつかりそうになった。
 ワイアットは彼女の腕をつかみ、放そうとしなかった。「きみの生き方についてとやかく言うために来たんじゃない。正直に言うと、ぼくはきみの生き方が少しうらやましいんだ」
 アニーは頭をそらしてあざけるようにほほえむと、目を閉じた。「無難な生き方を選んでいることはわかっているわ」彼女はワイアットの目を見た。「若いころは立派なことを言っていたけれど、都会や競争の激しい画家の世界にうんざりしていたでしょうね。わたしはここで快適に暮らしているの。ここにいたいのよ」
「ほかのことに挑戦してもいないじゃないか」
「挑戦して惨めになる必要はないわ」
「きみは家族を言い訳にしているだけだ」
「違うわ! ワイアット、あなたは危険を冒してもなにかに挑戦するけれど、わたしは違う。あなたはやりがいのある新しいことが好きなのよ。もしあのときにあなたと結婚していたら、わたしは――」
 彼は腕に力をこめてアニーを引き寄せた。「なんだい?」
 彼女は涙をのみこんだ。何年も前に、そのことを考えて泣くのはやめたはずなのに。「わたしはあなたの足枷になっていたわ」
「そう思うのか?」
「わかっているのよ」アニーは顔を背けた。双子は眠っていて、聞こえるのはときどき鳴るアンティーク時計のチャイムや郭公の鳴き声、そしてヒーターの音だけだ。
「きみがぼくの足枷になったはずがない。ぼくにとってはきみがすべてだったんだから。アニー、きみのためなら、ぼくはなんだってした」
「弁護士になるのをあきらめること以外はね」
「あのころは、だ」
「今ならすべてをあきらめられるの? わたしのために?」アニーはワイアットの顔に目をやり、かたく結ばれている口もとを見つめた。
「そうしてほしいのかい?」
「いいえ」なにを望んでいるのかわからない。一週間前には、将来をはっきり思い描いていた。店を経営し、子供たちを大学へ入れ、孫をかわいがり、庭を散歩し、絵を描く。でも今では確信が持てない。
 ワイアットがアニーの顔を両手で包み、目を見つめてささやいた。「ぼくがきみとの未来をあきらめたのは、それがきみの望みだと思ったからだ。きみを幸せにするためなら、ぼくはなんだってする」彼は目を輝かせながら、アニーの鼻に自分の鼻をこすりつけた。「きみのためなら死んでもかまわない」
 アニーの鼓動が速くなった。キスしようとするワイアットの腕を、彼女はつかんだ。
「わたしも、あなたのためなら死んでもいいわ」
 ワイアットに唇をふさがれたとたん、アニーは現実をすべて忘れ、今ほどしがらみのなかった過去に引き戻された。あのころは未来は自分のものだと思っていた。なににでもなれるし、どこででも暮らせるし、望む相手と人生を送ることもできると。
 そして今また――ずっとそうだったように――アニーが望む相手はワイアットだった。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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