マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクションホラーホラー小説

僕が考えた最強の神様 下

僕が考えた最強の神様 下


発行: キリック
シリーズ: 僕が考えた最強の神様
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆1
◆レビューを書く

¥0サンプル
XMDFのファイルをご覧になるにはブンコビューア最新版(無料)をインストールしてください。

「書籍ファイルが壊れています」と表示される場合は、ブンコビューアを最新版にアップデートしてください。
購入する


解説

 女子なら誰もが振り返るような美少年の水沢広志は、いわゆる「中二病」真っ盛り。中学二年になってもそれは変わらず、いまだに特撮ヒーローごっこをしている。彼が残念イケメンといわれる所以だ。そんな広志が新たに考案したのが、神様を自作して、信じること。単なるごっこ遊びの延長にすぎないはずだった。だが、あらゆる戦いを司るとして「龍武神」と名付けたその神は、たしかにご利益があると噂になり、いつしか広志の考えた「設定」を超え、多くの生徒たちの信仰対象となっていく。そこに、今度は別の神様から神託を受けたという者が次々と現れだす。そうして気づけば、校内には様々な神と教祖と信者から成る「教団」がいくつも出来上がっていた。しだいに激化していく布教活動と異教徒間の対立。それは、やがて大人たちの手に余る規模になり、最後には「宗教戦争」と呼べる異常事態へと発展する。生徒たちをけしかけ翻弄する神々──その正体とはいったい?

 宗教ごっこをしていた少年少女がいつしか狂信者の群れに……鬼才・梅津裕一が奇想天外な角度から放つ学園バトルロイヤルホラー、下巻!

目次

 第六部
 第七部
 第八部
 第九部
 第十部
 終章

抄録

 なにか夢を見た気がするが、内容は覚えていなかった。
 ただ悲しく、そして絶望に塗り込められた悪夢だったことはぼんやりと覚えている。
 鈴谷は死んだ。自殺ということになっているが、実質的には自分が殺したようなものだ。
 最愛の人を、殺してしまった。罰せられるべきだ。苦しむべきだ。呪われるべきだ。
 ここは地獄だ。なぜもっと早く、気づかなかったのだろう。
 いや、自分の愚かしさで地獄にしてしまったのか。もう、それすらよくわからなかった。
 なにもかもが呪わしい。すべて滅びてしまえばいい。暗鬱な気分で、学校にむかった。
 どうやらまだ噂は広まってはいないらしい。
 ときおり、こちらに冗談めかした口調で「お前、まさかホモなのか」と話しかけてくる者はいたが、あれは能代の告白のせいだろう。そうした連中はすべて無視した。
 まわりの人間がヒトではなく、虫や人形のように見える。たぶん、心が壊れはじめているのだ。教室にむかうと、光一郎が深刻な顔をしていた。
「どうした、そんな顔して」
 なぜこんな明るい声が出せるのが、自分でも不思議だった。
「まあ……いろいろだ。お前も、元超越者だったらわかるだろう」
 わかるが、なんと言っていいかわからない。光一郎は親友だったはずだ。それでも特に心配だとは思えなくなっていた。
「水沢……なんか、ちょっとおかしくないか……?」
 さっそくこちらの異常に気づく光一郎が、かえって鬱陶しいと感じられるほどだ。
「おかしいって?」
「いや……元気そうに見えるけど、なんていうか……」
「俺は特に、なにも問題ないけどな」
 広志は笑った。
「そうか……それならいいんだが……」
 こちらの心境の変化を、光一郎も完全には見抜けなかったらしい。
 いや、そんな生やさしいものではない。世界がこれまでとはまるで違って見える。ここはもう、以前とは異世界だ。愛や夢や希望といったものは、存在しない。
 もしそんなものがあれば、破壊したい。
 ブラックファイアに憑かれたから、というのもむろんあるだろうが、それだけではない。
 自らの愚行により、この世界に飛び込んでしまったのだ。もう鈴谷はいない。
 警察の発表によると、鈴谷はすでに犯人だと断定された、らしい。細かいことはよくわからないが、被疑者死亡により不起訴処分というのになるとのことだった。死の性質上、葬儀はたぶん身内だけの密葬になるだろう。
 いま、結衣はいない。たぶん、廃教室で他のシャイニングラヴ信者と今後の方針について話し合ってでもいるのだろう。この教室には、強力なライバルである龍武神の超越者、北光一郎がいるのだから。
 ふたりとも気づいていないが、実はもう一人、神が降りている者がいる。いうまでもなく、この自分だ。つまり、この教室には教祖が三人もいることになる。
 滑稽だと思ったが、笑いはもれなかった。
 あらゆる感情が、すでに失われたようにすら感じられる。実際、そのとおりなのかもしれない。
 ただひとつ、呪わしい、という思いだけは強烈に残っている。他のすべての感情がその感情にのみ込まれてしまったような感じだ。まわりで平和そうに談笑している生徒たちを見ていると、彼らをみな呪いたくなった。
 いっそのこと、この学校、この街、この国──否、全世界を呪いつくしてやりたい。
(不可能ではないぞ)
 ブラックファイアの声が聞こえた。
(まあ、全世界を呪うのはさすがに無理だが……この学校くらいなら、な)
(どうすればいいんだ?)
(互いに互いを憎しみ合わせればいい)
 なるほど、と思った。
(たとえば龍武神はもともと血を好む。シャイニングラヴは平和主義ではあるが、恋愛を成就させるためにならどんなことでもする……他の神々もおおむね、似たようなものだ)
 やはりここは、シャイニングラヴと、龍武神の信者たちをさらに対立させ、宗教戦争を起こすくらいにまで追い込んだほうがいいのかもしれない。
 戦争だ。殺し合いだ。
(そうだ……その調子だ)
 ブラックファイアが笑った。
(汝を選んで正解だった。この若さで、これほどの絶望を抱え込んでいる者はいない……その力で、怠惰な日常にひたっている連中を地獄にひきずり込んでやれ)
 校内を血の海に変えてやろう。別にこれは、ブラックファイアに憑かれたせいではない。そんな言い訳はしない。
 水沢広志が、自分の意志で決めたことだ。
 このことを知ったら、一種の八つ当たりだ、と言う者もいるだろう。実際、他の生徒たちはなにも悪いことはしていない。すべて自らの愚かしさが招いたことだ。
 それでも「平和な日常」を完全に、打ち砕いてやりたかった。
 どうせまわりにいる奴らのことは、もはや人間だとは思えない。人形か虫けらだ。
 だから、それを壊したり、潰したりしても、罪悪感は覚えないだろう。
 これは狂気なのだろうか。医学的にみて、自分はおかしいのか。
 そんなことは、どうでもよかった。
 皮肉な話だが「目標」が出来たとたん、この地獄で生きていく活力がわいてきた。
「なあ……光一郎。この間の能代の案、試しにやってみるのはどうだ?」
 それを聞いて、光一郎が驚いたように言った。
「正気か?」
 たぶん正気ではない。
「あれはどうみても……まずいだろう」
「俺も最初はそう思った。でも、たしかに信者を結束させるには、それくらいのほうがいいかもしれない。それとな……」
 周囲に聞こえないよう、小声で光一郎にささやいた。
「お前にはきついかもしれないが、シャイニングラヴ信者を徹底的に憎むような、そういう儀式みたいなのを取り入れたほうがいいかもしれない」
 光一郎は沈黙した。

本の情報

この本を読んだ人は、こんな本も読んでいます

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアは【ここ】から無料でダウンロードできます。
詳しくはXMDF形式の詳細説明をご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。

【MEDUSA形式】
MEDUSA形式の作品はブラウザですぐに開いて読むことができます。パソコン、スマートフォン、タブレット端末などで読むことができます。作品はクラウド上に保存されているためファイル管理の手間は必要ありません。閲覧開始時はネットに接続している必要があります。

詳細はMEDUSA形式の詳細説明をご覧下さい。