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和書>小説・ノンフィクションハーレクインシルエット・ロマンス

ドクターはお断り

ドクターはお断り

著: ジャックリーン・ダイアモンド 翻訳: 渡辺千穂子
発行: ハーレクイン
シリーズ: シルエット・ロマンス
価格:525円(税込)
10ポイント還元
形式:XMDF形式⇒詳細 
対応端末:パソコン ソニー“Reader”
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著者プロフィール

 ジャックリーン・ダイアモンド(Jacqueline Diamond)
 テキサス生まれ。結婚して三十年以上になる。その間に二人の息子をもうけ、五十を超える小説を書いた。作家生活に入る以前は、通信社のリポーターやテレビコラムニストとして活躍。現在はカリフォルニア南部に住み、ガーデニングを楽しんでいる。

解説

 クリニックの受付係として忙しい毎日を送るチェルシーは、ある晩ナイトクラブに遊びに行き、見知らぬ男性が薬物入りの飲み物を飲まされそうになっているのを目撃する。彼を助け出して家に連れて帰り、言葉を交わすうちに、いつしか一夜を共にしていた。しかし彼が名前を名乗った瞬間、甘い時間は終わりを告げた。ドクター・バリー・キャントレル。クリニックに着任する予定の、チェルシーの新しいボスだったのだ。仕事を問題なく進めるため、二人は互いにこの一夜を忘れようと決めた。
 ★2005年12月のシルエット・ロマンスはクリスマス特集『聖夜はあなたと』。自分とは全然違う性格を持つ医師バリーに恋してしまったチェルシー。互いに素直になれない男女を描いた、クリスマスにふさわしい心温まる恋物語です。★

抄録

 薄闇《うすやみ》の中でチェルシーの目が大きく見開かれる。「ちょっと待って。私たちはオムレツを食べて、それから……どうしてこんな体勢になったの?」
「僕もよく覚えていないよ」バリーは正直に白状して、ブラをはずした。張りつめた小さな胸のふくらみがあらわになる。
 手のひらで硬くなった胸の先端を愛撫《あいぶ》されて、チェルシーはうめいた。「引き出しの中に……あるわ。安全のためのものが」
 バリーは身をかがめて彼女にキスし、密着した二人の体が震えるのを感じた。「わかった」片手で引き出しの中を探る。
 頭がぼうっとしていても、彼は安全なセックスを忘れなかった。島では村の広場で、島民たちにバナナを使って何度も実演してみせたものだった。
 彼女の巻きスカートはいつの間にかほどけ、小さなシルクのパンティも瞬く間に姿を消した。世界はななめに傾いている。たった一つの行為だけが傾きを正してくれそうだ。バリーは世界を救おうと決意すると、故郷に帰るような思いに駆られてチェルシーの中に進んだ。
 ここ一年半、チェルシーはフィアンセとうまくいかなかったのは自分にも責任があると思い込んで自信をなくし、再び男性とベッドをともにする瞬間を恐れてきた。
 だが、目の前にいるのは体のあらゆる部分が男らしいハンクだ。彼に満たされると、チェルシーの体は喜びで震えた。今までこれほど女らしい気分になったことも、降伏したいと願ったこともなかった。すべての良識に逆らって、チェルシーは彼を信じた。ハンクはチェルシーの中で長い間刺激的に動いた。その間、片時も彼女の目から目を離さず、彼女を堪能《たんのう》するのをやめなかった。
 もしもこれがテキサス育ちの男だというなら、テキサスに引っ越すべきかもしれないわ。チェルシーはぼんやりと思った。だがその一方で、ロサンゼルスにとどまりたいとも思った。
 ハンクは彼女の上で身をかがめて、胸の先端をなめ、彼女の喉に鼻をすり寄せてから再びキスした。もっと、かぎりなく、彼がほしい。そうチェルシーは欲したが、彼の動きが速まっていくにつれ、解き放たれたいと願った。
 ついに最後の砦《とりで》も崩れた。チェルシーは彼の腰をつかみ、せき立てた。そして二人はクライマックスを迎えた。荒々しくすばらしい恍惚《こうこつ》感……。叫び声が自分のものか、彼のものか、チェルシーにはわからなかった。二人の声は一つのうめきとなり、もだえる光のかたまりとなって砕け、輝かしいさまざまな色の洪水と化した。そしてともに、きらめき移ろう満ち足りた流れに身を投じた。
 チェルシーはハンクの体に両腕を巻きつけ、彼の胸に寄り添った。そのほんの数分後、彼が避妊具を着けていないのに気づいた。喉がぎゅっと締めつけられる。こんな危険を冒したことは今までなかった。たしかに彼が着けるのを見たはずなのに。
「ハンク」チェルシーの声は震えた。
「ううん?」くつろいだ様子で眠そうに、ハンクは彼女のほうに体を向けた。
「安全策はどうなったの?」
 手で下腹を探ったハンクはあるべきものがないのに気づいてチェルシーの頬のそばで目をしばたたいた。「わからない。ちゃんと着けていなかったのかもしれない」
 何か妙な病気を移されていませんようにと、チェルシーは切に願った。「私は大丈夫だとわかっているの。一年半も男性とベッドをともにしていないし、毎年健康診断を受けているから。あなたは……その、何か病気になっていないわよね?」
「一度マラリアだと思ったことがあるけど、インフルエンザだった」
「マラリアですって?」チェルシーは片肘を立てて身を起こした。「いつからテキサスではマラリアがはやってるの?」
 窓から差し込む明かりの中で、彼の歯が白く光るのをチェルシーは見た。「もう何年もテキサスには行ったことがないよ」
 チェルシーの胃が重く沈んだ。この人は私をずっとだましていたんだわ。「あなたったら、嘘《うそ》をついたのね!うぶで途方に暮れて、世の中にうといふりをして」
「僕はうぶで、途方に暮れているよ」もしもこんな気まずい状況でなかったら、彼のおかしそうな声にチェルシーは安心したかもしれない。「僕は二年間、南太平洋の島で暮らしていたんだ」
 チェルシーの不安はそう簡単にはやわらがなかった。「島で何をしていたの?」
「平和部隊で働いていた。僕は医者なんだ。帰国する前に義務づけられた医療検査はすべてしたよ。だから何も心配することはないさ」
 二年間の島の生活。それなのに、帰国してすぐに地元の情報通の人間しか知らない最新のクラブにやってきたですって?
 そういえば、私の雇用主にもあのクラブを教えたわ。新しくやってくるパートナーにお勧めのナイトクラブはどこかと、きかれたのだ。「ねえ、ハンク」
「うん?」ハンクはチェルシーの体の下に腕を差し入れて、たくましい肩に彼女の頭をのせた。
「あなたの名前はハンコックを縮めたものじゃないの?」
 その問いは、彼に大きなショックを与えたらしい。がばと起きあがって、危うくチェルシーをベッドから落としそうになった。「いったいどうして、それを知ってるんだ?」
「はじめまして」チェルシーは起きあがって、握手の手を差し伸べた。「私はチェルシー・バイアズ。あなたの新しい受付係です」


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