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著者プロフィール
萩谷 あんじ(はぎたに あんじ)
1966〜
福島県生まれ、在住。著書に、電子書籍『くちびるはキミだけに優しい』(スイーツ文庫)、共著『ムーンライトセックス』(アーティストハウス)がある。
1966〜
福島県生まれ、在住。著書に、電子書籍『くちびるはキミだけに優しい』(スイーツ文庫)、共著『ムーンライトセックス』(アーティストハウス)がある。
解説
高校を中退し、高認予備校に通うわたしは、かわいくもないし積極的でもない。でもひそかに、女友達のなかで自分がいちばん上だと思ってる。エッチ経験があるのは、わたしだけだから。いくら先生にウケがよくても、かわいくても、みんなはまだ未経験なのだ。だけど、どんなにエッチしたって、ホントは自信がないから、すぐにヘコんだり、自分がイヤになったりする。あるとき、友達のことがきっかけで落ち込んでいると、知らないオジサンに声をかけられた。「さわらせてくれたらおカネ払うよ」……。誘われるまま援助交際を体験する18歳の女のコ。エッチで、不安で、ちょっぴり意地悪。そんな少女の「ナマ」なHストーリー。
抄録
エッチのさいちゅうって、わたしの脳ミソはとけちゃってると思う。
夜、親のことで頭にきたり、勉強のこととか友だちのこととか考えて、眠れなくなることがしょっちゅうだっていうのに、エッチしてるときだけは、そんなわずらわしいこと、いっさい浮かんでこないから。
わたしの耳には、「入れてぇよ」とか、「おまえ、すっげえ濡れてる」って言う、真斗《まさと》の声しか聞こえない。
「尚美《なおみ》、オレのいい? なあ、オレの、感じる?」
冷静になってみれば、そんなふうに毎回おんなじことを訊《き》かれたら、いい加減うっとーしくなるのがフツウだけど、入れられてるときは、「いいよ。真斗の、すっごく感じる」と、とても素直に肯定してしまう。強く抱きしめられれば、「わたしは真斗のものなんだ」と思えて、いつどんなときよりも、こころがほぐれてくる。安心できるのだ。
しているときはそんなふうだからもちろんだけど、終わったあとも、わたしは好きだ。
彼のモノが、ずるっ、と抜きとられるときなんか、ちょっとさびしくて、残念で……。それでいてやっと自由に息ができる、みたいなかんじがする。
でも、でも、やっぱりさびしくなんかない。残念なんかでもない。終わったあと、真斗はわたしを胸に抱いて、髪をなでてくれるから。いつだって、いい子いい子するみたいに、やさしく髪をなでてくれるから。
真斗とのエッチを思えば、授業なんてものすごくたいくつだ。教科書のはしっこに、真斗と書いて何回もなぞっている。となりの徳川なんとかの写真より、シャーペンで書いた「真斗」のほうが、くらべようもなく意味があった。
18のわたしは、高校に通っていたら高3ということになるけど、1年で中退して、いまはこの予備校に通っている。高校を中退したコが、高卒と同等と認めてもらうために受けるのが高卒認定試験。その試験に合格するための予備校だ。
親もそうだけど(とくに母親)、「自分のやりたいことを見つけなさい」「好きなことをしごとにするのよ」なんて、疑いのかけらもなく口にしていた教師たちのことは、いまでもときどき思いだす。
やりたいことがないひとは、どうすればいいんですか?
それでもムキになって探さないといけないんですか?
好きなことがないひとは、どうすればいいんですか?
世のなかのひとが、みんな好きなことばっかりやりだしたら、嫌われるしごとは、だれがするんですか?
外国人労働者ですか?
くだらない。
「やりたいことを見つけなさい」なんて口で言うのは簡単だろうけど、そういうきれいごとに追い込まれるにんげんだっているっていうのに。
そんなこと、言ってもわかってもらえないだろうし、どっちみち何も変わらないのだから、教師にも親にも、中退の本当の理由は告げなかった。
結局、ひとに話すことや実際に口にだして言うことなんて、教科書の徳川なんとかとおなじだ。意味がない。ことばにできないことに「わたし」は根づいているわけだし、ことばにできないことにこそ、リアルがある。
でもまあ、やりたいことを見つけろだなんて、教育くさいことをいう教師もいないから、ここの予備校はラク。塾みたいな雰囲気だし、休み時間だって、独特の、息苦しい、ピリピリざわざわした空気も、ない。それだけでも高校を中退してよかったと思う。
でも……。
ほんとうのところは、どうなんだろう。じぶんでも、よくわからない。中退してよかったと思っているのはほんとうだけど、でも、それも含めて、ほんとうはなにもわかっていないのかもしれないのだ。
*この続きは製品版でお楽しみください。
夜、親のことで頭にきたり、勉強のこととか友だちのこととか考えて、眠れなくなることがしょっちゅうだっていうのに、エッチしてるときだけは、そんなわずらわしいこと、いっさい浮かんでこないから。
わたしの耳には、「入れてぇよ」とか、「おまえ、すっげえ濡れてる」って言う、真斗《まさと》の声しか聞こえない。
「尚美《なおみ》、オレのいい? なあ、オレの、感じる?」
冷静になってみれば、そんなふうに毎回おんなじことを訊《き》かれたら、いい加減うっとーしくなるのがフツウだけど、入れられてるときは、「いいよ。真斗の、すっごく感じる」と、とても素直に肯定してしまう。強く抱きしめられれば、「わたしは真斗のものなんだ」と思えて、いつどんなときよりも、こころがほぐれてくる。安心できるのだ。
しているときはそんなふうだからもちろんだけど、終わったあとも、わたしは好きだ。
彼のモノが、ずるっ、と抜きとられるときなんか、ちょっとさびしくて、残念で……。それでいてやっと自由に息ができる、みたいなかんじがする。
でも、でも、やっぱりさびしくなんかない。残念なんかでもない。終わったあと、真斗はわたしを胸に抱いて、髪をなでてくれるから。いつだって、いい子いい子するみたいに、やさしく髪をなでてくれるから。
真斗とのエッチを思えば、授業なんてものすごくたいくつだ。教科書のはしっこに、真斗と書いて何回もなぞっている。となりの徳川なんとかの写真より、シャーペンで書いた「真斗」のほうが、くらべようもなく意味があった。
18のわたしは、高校に通っていたら高3ということになるけど、1年で中退して、いまはこの予備校に通っている。高校を中退したコが、高卒と同等と認めてもらうために受けるのが高卒認定試験。その試験に合格するための予備校だ。
親もそうだけど(とくに母親)、「自分のやりたいことを見つけなさい」「好きなことをしごとにするのよ」なんて、疑いのかけらもなく口にしていた教師たちのことは、いまでもときどき思いだす。
やりたいことがないひとは、どうすればいいんですか?
それでもムキになって探さないといけないんですか?
好きなことがないひとは、どうすればいいんですか?
世のなかのひとが、みんな好きなことばっかりやりだしたら、嫌われるしごとは、だれがするんですか?
外国人労働者ですか?
くだらない。
「やりたいことを見つけなさい」なんて口で言うのは簡単だろうけど、そういうきれいごとに追い込まれるにんげんだっているっていうのに。
そんなこと、言ってもわかってもらえないだろうし、どっちみち何も変わらないのだから、教師にも親にも、中退の本当の理由は告げなかった。
結局、ひとに話すことや実際に口にだして言うことなんて、教科書の徳川なんとかとおなじだ。意味がない。ことばにできないことに「わたし」は根づいているわけだし、ことばにできないことにこそ、リアルがある。
でもまあ、やりたいことを見つけろだなんて、教育くさいことをいう教師もいないから、ここの予備校はラク。塾みたいな雰囲気だし、休み時間だって、独特の、息苦しい、ピリピリざわざわした空気も、ない。それだけでも高校を中退してよかったと思う。
でも……。
ほんとうのところは、どうなんだろう。じぶんでも、よくわからない。中退してよかったと思っているのはほんとうだけど、でも、それも含めて、ほんとうはなにもわかっていないのかもしれないのだ。
*この続きは製品版でお楽しみください。
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