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ファッキンブルーフィルム 新装版

ファッキンブルーフィルム 新装版

著: 藤森直子
発行: ヒヨコ舎
価格:1,050円(税込)
10ポイント還元
形式:bookend形式⇒詳細
対応端末:パソコン 
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著者プロフィール

 藤森 直子(ふじもり なおこ)
 キャバクラ嬢を経て現在はSM嬢。「綾。ホステス、22歳。」(洋泉社 後に新装版が弊社刊)でデビュー。同書はデザート(講談社)にて漫画化されている。

解説

 「あの、僕、家具になりたいんです」。こう言われた時は、心底ぎょっとした。女装プレイ、幼児プレイ、黄金プレイ、これはふつうだ。いや、決してふつうではないがSM的にはふつうなのだ。しかし、家具とはなんだろう。
 ──SMクラブで働く著者のもとに集う風変わりな性癖をもつ男たち。バイセクシュアルである著者が愛する魅力的な彼女たち。会話を拒否する男。公衆便所でしか眠れない女。個性あふれる人間たちが織りなす、可笑しくも切ない日常を、剥き出しのオリジナリティと醒めた人間観察眼で綴った現役SM嬢の日記。

目次

1999年
晴れた日はSM鞄をさげて
ダンゴ虫みたいに丸まって
母乳プレイへの道……他


2000年
残酷な神が支配しない
わたしは犬になりたい
便座で意識は遠のいて
恋は言ってみりゃキャプチュード……他


2001年
二本のアンテナ?? あとがきにかえて

抄録

「あの、僕、家具になりたいんです」
 こう言われた時は、心底ぎょっとした。は? か、家具? 
 女装プレイ、幼児プレイ、黄金プレイ(ウンチ食べたり体に塗ったり)、これはふつうだ。いや、決してふつうではないがSM的にはふつうなのだ。しかし、家具とはなんだろう。家具プレイ? 新人女王様の私にとっては未知なるプレイであることだけは確かだ。彼が言うには、四つんばいの人間イスになって女王様に座られたり、はたまた人間ベッドになって女王様にその上で寝てほしいのだそうだ。鞭も蝋燭も浣腸もアナルバイブも彼には必要ないらしい。
「家具としてがんばらせてください」きちんと正座して、彼は挨拶した。なんて礼儀正しい家具だろう。うちの机なんぞは、私が足の脛をぶつけて「イタタタタ」などと悲鳴を上げても知らんぷりなのに。
 プレイ前の打ち合わせをする。M男は、私の道具鞄に負けず劣らず大きな鞄を開け、私に中身を見せた。お菓子がどっさり入っている。チョコレート、ビスケット、ポテトチップス、おせんべい、昔懐かしいクッピーラムネまで入っている。おいおいピクニックかよ(笑)。用意がいいなあ。ウーロン茶、オレンジジュース。飲み物もばっちりだ。雑誌もある。
「あの、どうぞ、ご自分のお部屋のご自分のイスにお座りになられたつもりでくつろいでくださいませ」
 いやー、カモがネギしょってやって来るとは、こういうことを言うんだろうな。
「あの、ケ、ケータイもご自由にお使いください。どこへでもお好きに電話をかけてくださってかまいませんので」
 ケータイを殿様への献上品のようにうやうやしく両手で持って、M男は私に差し出した。
 本当にカモネギだ。海外にでもかけたろか?
 一点だけ要望があるらしく、テレビはつけないでほしいとM男は言った。せんべいなどをかじる時のボリボリいう音やジュースを飲む音、雑誌をめくる時のかすかな音をよーく聞きたいのだそうだ。ボリボリはともかく、雑誌をめくる音っていうのはマニアックだなあ。新手の音フェチだろうか。
「おまえは準備がいいわねえ」と褒めてやった。
「は、ありがとうございますぅ」M男は心から嬉しそうな表情を見せた。
「でも、ケータイもご自由に使ってくださいって、それじゃ、会話の内容をおまえに聞かれちゃうってことじゃない。私の電話を盗み聞きしたいってことなのかしら?」
 今度は少し怒ってみせる。SMではこの緩急のリズムが大事なのだ。M男は慌ててこう言った。
「めっ、めっそうもございませんっ」
 時代劇のようなセリフに、思わず私は笑いだしそうになった。なんじゃそりゃ。めっそうもございません、ってのは。面白い奴隷だなあ。
 M男が勝手に服を脱ぎだしたので、すかさず叱った。
「誰が服を脱いでいいと言ったの?」
 M男の勝手な行動は許されないことだ。
「も、申し訳ございませーんっ」M男は土下座して額を床にこすりつけた。
 M男としてのやる気が満々だな、おい。いちいち大げさで可笑しい。
「服、脱ぎたいの?」
「は、はいぃ」
「全部?」
「は、はいぃ。全部脱がせてくださいぃ」
「そうやって最初からお願いしないとね。奴隷が勝手に行動するなんてもっての外よ」
「は、はいぃ。すみませんっ」
「わかればいいの。じゃ脱いでもいいわ」
「ありがとうございますぅ」
「でもパンツは脱がせてあげないよ」
 こういう小さな意地悪もSMでは大切だ。
「おまえごときのチンポが私の目に映ったら、私の目が汚れちゃうもの。そうでしょ?」
「ご、ごもっともでございますぅ」M男は再び額を床にこすりつけた。だから、おまえの言葉の使い方、面白すぎるって!
 かくして妙ちくりんな家具プレイがスタートした。四つんばいのM男の上に腰掛けて、私はまずウーロン茶を飲んだ。シーンとした空間にゴクッゴクッゴクッという音が響く。世の中には、女の飲み食いの音で興奮する人がいるものなんだなあ。面白いなあ。私のゴクッゴクッよりM男が生唾を飲み込む音のほうがよっぽど大きい。M男は激しく生唾を飲み込む。
 続いて、せんべいをボリボリ食べる。押し殺した低い声で、M男はハァハァと喘ぐ。ボリボリの合間に「フォーカス」「フライデー」を読む。ページをめくる、かすかな、本当にかすかなパラッという音がする。そのパラッのたびに、M男の背中がぴくっと反応するのがわかる。そのぴくぴくが妙にかわいい。私は腰掛けスタイルをやめ、今度はM男の背中の上に乗っかってあぐらをかいた。私の全体重がM男にかかる。しばらくすると、M男の腕がぶるぶる震えてくるのがわかる。M男の口からはずっと低い喘ぎ声が漏れている。M男のケータイで知人に電話をかけたり、雑誌を読んだりしているうちに三十分が過ぎる。立ち上がってみると、M男の背中には、私が乗ったまあるい赤い跡がくっきりと刻印されていた。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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