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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・クラシックス

熱い敗北

熱い敗北


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・クラシックス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 シャーロット・ラム(Charlotte Lamb)
 第二次大戦中にロンドンで生まれ、結婚後はマン島で暮らす。大の子供好きで、五人の子供を育てた。ジャーナリストだった夫の強いすすめによって執筆活動に入り、百作以上の作品を著す。二〇〇〇年秋、多くのファンに惜しまれつつこの世を去った。

解説

 ゾーイはドキュメンタリー映画監督として忙しい日々を送っていた。彼女にとって仕事は、何にも代えがたいほど大切なもの。どんな男性であっても、それに代わることはできない。恋に溺れたり、愛に生活を支配されるなんて想像もできなかった。降りしきる雨の夜、あの男とかかわりあうまでは。仕事から車で帰る途中のことだった。窓越しに突然現れた、身なりも汚れた大柄の男性は、車が故障したから、近くまで送ってほしいという。だが、夜ひとりきりの車に、見ず知らずの男性を乗せるつもりはない。タクシー会社に連絡するとだけ約束して、彼女は強引に車を出した。この約束を彼女が思い出すのは、家に帰ってしばらくしてからだった。人生が大きく変わり始めることにも、彼女はまだ気づいていなかった。

抄録

「ミスター・ヒリアー、招待した覚えはないけれど、客としてここにいるからには、人の暮らしをとやかく言わないでもらいたいわ!」ついに堪忍袋の緒が切れた。いったい何様のつもりよ。「砂糖は向こうの右側の戸棚」腕時計に目をやった。「いい? わたしはもうくたくたなの。一日中働きづめだったし、明日にそなえて睡眠をとりたいの。さっさと食べて出ていってくださる? タクシーにはどんな格好で乗ったって文句は言われないわ」
 ふと思いついて玄関ホールに急ぎ、家畜追い人が使う長い茶色のレインコートを持ってきた。何年か前にオーストラリアで買ったものだ。
「これを着ればいいわ。下がどんな格好でもわからないでしょう」
 彼はオーブンに皿を入れていた。ゾーイの持ってきたコートを見ると、手にとって自分の体にあてがってからうなずいた。「いいね、助かるよ。どうやらきみには服選びのセンスはあるらしい。これは借りておくが、やっぱり下は自分の服がいい」
「服なら明日郵送するわ」
 彼は首を横に振り、終了の電子音を鳴らしているレンジのほうに向かった。「いや、待つよ」
 ゾーイは彼を追い出そうと半ば必死になっていた。「ここはわたしの家よ! 出ていって!」
 カレーがあけられた。「いいにおいだ」彼は温めた皿をふきんを使ってとり出し、黄金色の中身を皿にあけると、セットになっていたほかほかのライスで囲んだ。そしてテーブルについてフォークで食べ始めた。「コーヒー、いれてもらえるかい」
「一緒にいるとたまらないって言われない?」
「ああ、たまらなくうれしいってね」彼は長いまつげの下からいたずらっぽくゾーイを見やる。
 笑うまいと思いつつも、噴き出してしまった。
 彼がにっこりした。「きみも人間なんだな」
「人間よ……それもぐったり疲れた人間」ゾーイはコーヒーを二つのマグカップについだ。ここはつきあうより仕方なさそうだ。しばらくは出ていきそうにないし、となれば、見ず知らずの男をひとり残して寝るわけにもいかない。
「何時間働いたんだ?」
「五時には起きて、六時には仕事を始めていたわ」話しながら向かいに座った。
 コーネルはゾーイをしげしげと見つめて眉を上げた。「目が赤い。髪の色とつりあってるよ」
 むっとして頬が熱くなった。「そう、ありがとう。そんなに魅力的かしら」
 コーネルはなおも見つめてきた。黒いまつげが下を向いた。「そのジーンズ、かなり古いんじゃないか? なのに、きみが着ていると格好いいよ。よくわからないが、きみ自身が光っているからどんな服でも――目が充血していても――よく見えるってことかな。同じことをもういろんな男に言われたんだろうね? ぼくが百万人目とか。記念品ものだな」身を乗り出したかと思うと、ゾーイがよける間もなく唇にキスをし、また平然とカレーを食べ始めた。
 呼吸が乱れてしまう自分がひどく腹立たしかった。これじゃ、どう見たって初めてキスをされた女の子じゃない。一、二秒の軽いキスだった。想像できていた事態なのに、まさかこんなに息苦しさを覚えるなんて。ゾーイは口を拭って目をつり上げた。「あなたみたいに失礼な人は初めてだわ。仕事は何? マスコミ関係? そんなにあつかましいのはレポーターくらいだと思うけど」
 コーネルは笑った。「ぼくは探検家だ」
「えっ?」きっと聞き間違いだわ。疲れているからぼうっとするのよ。目も耳もうまく働かず、熱に浮かされたみたいに顔が赤くなるんだわ。
「だから、探検家」彼は食べ終えた皿を脇へ押しやった。「南米から戻ったばかりだ。ティエラ・デル・フエゴからベネズエラのメリダ山脈まで、山系をマッピングしていた。あそこの山系は大陸の端から端まで、海岸からわずかに引っこんだところを縦走している。全長六千四百キロ以上。その多くが千二百メートルを超える山々だ。ぼくは一年間そこにいて、地形をスケッチやフィルムに記録していた」
 ゾーイはあんぐりと口をあけた。「ひとりで?」
 彼は笑った。焼けた肌に白い歯が対照的だ。「いや、幸い国際的な調査隊と一緒だった。欧州の人間が数十人、専門家ばかりだ。カメラマン、医者、科学者、地質学者、生物学者――職種はさまざまだが登山経験があることでは共通だった。そこが肝心な点でね。ああいう山では自分の行動の意味を理解し、かつ頼れる人間が近くにいることが重要だ。でないと、命を落としかねない」あくびをし、席を立っていって洗濯機をのぞきこむ。「途中だがこの辺ですすぎに切り替えるか。あとは乾かすだけだ」
「独身、でしょう?」器用に洗濯機をいじっている姿を見て、ゾーイは考え考えきいた。
 コーネルは振り向き、黒い目で非難するように見据えてきた。「そうだが、まさか既婚者相手だと気がとがめるとでも? ハルはそんなことは言わなかったな」
「ハルが何を知っているのよ! 思いこみだけで、何もわかっちゃいないわ! 第一、彼とわたしは、その、友だちだったことさえないんだから!」


 *この続きは製品版でお楽しみください。

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