マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ロマンス

炎の一夜が授けた命 ホテル・チャッツフィールド IV

炎の一夜が授けた命 ホテル・チャッツフィールド IV


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンスホテル・チャッツフィールド
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 未評価
◆レビューを書く

¥0サンプル
XMDFのファイルをご覧になるにはブンコビューア最新版(無料)をインストールしてください。

「書籍ファイルが壊れています」と表示される場合は、ブンコビューアを最新版にアップデートしてください。
購入する


著者プロフィール

 シャンテル・ショー(Chantelle Shaw)
 イギリスの作家。ロンドン育ちで、頭の中でおはなしを作るのが大好きな少女だった。二十歳で結婚、第一子の誕生とともにケント州の海辺に移り、現在に至っている。浜を散歩しながら小説の構想を練るという。趣味はガーデニングやハイキング。六人の子供の母親でもある。

解説

 荒れ果てた屋敷に住む億万長者は、訪問者をとりこにする美しき野獣だった。

 ニコロ・チャッツフィールドをホテル経営に協力させろですって? CEOである上司の無謀な命令に、秘書のソフィーは頭を抱えた。隠遁中のニコロを訪ねて説得を試みるが、案の定、追い返されてしまう。だがあるきっかけで彼の信頼を得た彼女は一転、屋敷へ滞在することに。その日の夜遅くだった。恐ろしげなうなり声をソフィーが耳にしたのは。もしかして……ニコロの身に何かあったの? 思わず彼の寝室に飛び込んだ彼女の目に、衝撃的な光景が映った。火傷の痕に覆われた半身を露わにしたニコロが悪夢にうなされている! 彼には何か重大な秘密があるのだろう。ソフィーの胸がなぜか痛んだ。やがてその痛みは、ニコロへの切ない情熱へと変わっていき……。

 ■〈ホテル・チャッツフィールド〉の第4話をお贈りします。チャッツフィールド家の御曹司ニコロと秘書のソフィー。過去の秘密を共有したふたりが一夜をともにしたあと、ソフィーのお腹には奇跡が宿って……。

抄録

 ニコロはシャツをつかむなりボタンを引きちぎって胸をあらわにし、赤く引きつれた火傷の痕をさらした。
「これが火事の力だ。二十年近くたっても、ぼくの体はまだこんなに醜い。火傷をした直後のただれた肌を目にせずにすんで、きみは幸運だ」
 昨夜ソフィーが火傷の痕を見たのは、スタンドのほの暗い明かりの下でだった。いま、窓から差しこむ夕日の光のなかで見ると、火傷の範囲がはっきりとわかった。上半身の右側は黒っぽい胸毛に覆われているが、左側の皮膚は引きつれて色がなくなり、胸毛もない。
 ニコロは歯を食いしばったまま、ソフィーの顔をよぎるさまざまな表情を見守っていた。彼は自分の醜さを恥じ、彼女の目に浮かぶ嫌悪の表情に傷ついた。いったい何を期待していたのだ、と自分に問いかける。彼女が火傷の痕を見てぞっとするのは当然だ。どうでもいいさ、とニコロは胸の内でつぶやいた。どうせ彼女は敵側から送りこまれてきた人間だから。にもかかわらず、いつの間にか彼は願っていた。ソフィーが火傷の痕ではなく、ぼくという人間そのものを見てくれればいいのに、と。
「これで火の威力がわかっただろう」
 彼の声に苦痛の響きを聞きとり、ソフィーは胸が痛くなった。ニコロがじっとこちらの反応をうかがっているのがわかる。
 十年前、髪がほとんどなくなった頭を鏡に映して泣いた日のことが脳裏によみがえった。こんな頭ではデートもできないと、当時は思ったものだった。いまソフィーの髪は元に戻り、再発の兆候もない。一方、ニコロは一生火傷の痕をつけたまま生きていかなくてはならないのだ。強靱な見せかけの下に、ニコロもまたかつてのソフィーと同じように、外見に対するコンプレックスを隠しているのだろうか。
 あなたは怪物なんかじゃない――ソフィーはもう一度ニコロにそう言いたかったが、たとえわずかでも同情の気配のあるものは彼に拒絶されるだろうと本能的に感じとっていた。それでも、彼の葛藤が理解できることをなんとかして伝えたくて、ソフィーは彼に近づき、かすかな躊躇のあとで片手を彼の火傷の痕に置いた。
 ニコロの体がびくっと震えたが、それは痛みのせいではなく驚きのせいだとわかった。
「蝋燭を飾ったこと、本当にすみませんでした。あなたが火事で恐ろしい目に遭ったことに思いを馳せるべきでした」ソフィーは指先で軽く火傷の痕を撫でた。「これがあるかぎり、火事のことを忘れるなんてできないでしょうね。でも、この火傷があなたのすべてではないわ」
 ニコロはじっとソフィーを見つめた。彼の黒い瞳は魂まで見通せそうなほど底知れぬ深さをたたえていた。
 彼は胸に置かれたソフィーの手に視線を落とした。「気味が悪いとは思わないのか?」
「もちろん思いません」ソフィーの表情は率直で誠実だった。
 柔らかなそよ風に乗って、フレンチドアからスイカズラとオレンジの花の香りが運ばれてくる。静寂のなかで、ソフィーは自分の呼吸がわずかに乱れるのを感じた。二人のあいだの空気がかすかに変化し、手のひらにニコロの力強い鼓動を感じる。
 ふいに、彼に触れていることがひどく親密な行為のように思われた。手を離さなければいけないと思うのに、何か見えない力が働いて手を動かすことができない。同じ力を感じたかのように、ニコロの目が細くなった。彼は片方の手をソフィーの肩に添えて、彼女の髪を指に巻きつけた。
「きれいな髪だ」ニコロがつぶやく。
 その言葉がソフィーの心を激しく揺さぶった。再び髪が生えたことをいまほど感謝したことはなかった。十年たったいまも、彼女の心の奥には、髪を失ったせいで一生恋人ができないかもしれないと不安でたまらなかった十六歳の少女が住みついているのだ。
 ニコロの片手が彼女の顎を包みこんだ。ゆっくりと彼の顔が近づいてくる。キスをしようとしているのだと気づいて、ソフィーの下腹部がきゅっと引きしまった。キスをしてほしい。それは否定のしようがなかった。初めて会ったときから、ニコロとのキスを夢想していた。そしていま、唇に彼の温かな息を感じて、彼女の心臓は飛びだしそうなほど大きく打っていた。
 ソフィーへの怒りがいつ欲望に変わったのか、ニコロは自分でもわからなかった。きのう彼女を肩にかつぎあげて家の外に運びだしたときから、二人のあいだに官能の気配が漂いはじめたことは、心の奥で意識していた。あのときからニコロはなんとかして彼女を無視しようと努めてきた。ところが、ソフィー・アッシュダウンを無視するのは簡単ではなかった。キスをしたいというこれほど激しい衝動を感じるのはずいぶん久しぶりだった。ソフィーの体の震えが、彼女もニコロと同じくらい混乱していることを教えていた。
 シルクのような蜂蜜色の髪に指を入れる。ソフィーがはっと息をのむのがわかった。彼を止めようとしているのかもしれないが、彼女が声を出す前に、ニコロは激しく唇を押しつけていた。
 抵抗の声はソフィーの喉の奥で消え、ニコロの唇が触れたとたんに彼女の体は柔らかく溶けだした。心のどこかで自分の降伏の早さにショックを受けながらも、キスが深められ、力強い腕に抱き寄せられると、もはやほかのことはどうでもいいような気がしてきた。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

この本を読んだ人は、こんな本も読んでいます

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアは【ここ】から無料でダウンロードできます。
詳しくはXMDF形式の詳細説明をご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。

【MEDUSA形式】
MEDUSA形式の作品はブラウザですぐに開いて読むことができます。パソコン、スマートフォン、タブレット端末などで読むことができます。作品はクラウド上に保存されているためファイル管理の手間は必要ありません。閲覧開始時はネットに接続している必要があります。

詳細はMEDUSA形式の詳細説明をご覧下さい。